世界では人工呼吸器がどれくらい不足しているのか?―中国メディア

人民網日本語版    2020年4月2日(木) 7時40分

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世界保健機関(WHO)の説によると、新型コロナウイルスによる肺炎の患者の6人に1人が重症化し、呼吸困難の症状が出るという。写真はイタリア。

世界保健機関(WHO)の説によると、新型コロナウイルスによる肺炎の患者の6人に1人が重症化し、呼吸困難の症状が出るという。感染症が引き続き蔓延する中、中国の外では一体どれほどの人工呼吸器の需要があるのだろうか。環球時報が伝えた。

米国で96万人に人工呼吸器が必要?

米国のトランプ大統領は28日、同国のメーカーに人工呼吸器10万台を「相当速く」生産するよう要請したと明らかにした。その1日前には、ニューヨーク州のクオモ知事からの、感染症のピーク期に同州では3万台から4万台の人工呼吸器が必要になるため同州に優先的に配置してほしいとの要請を拒否した。

実際、他国と比べて、米国は以前から人工呼吸器大国だった。アメリカ集中治療医学会(SCCM)がこのほど発表したデータは2009年の調査に基づくもので、米国には全国で約20万台の人工呼吸器があり、このうち病院には高機能型が約6万2000台と基本的機能を備えた旧型が9万8700台あり、国の緊急医薬品戦略物資貯蔵庫には非高機能型が約1万2700台あるとしている。ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターの18年の報告では、米国にある人工呼吸器は約16万台で、別に8900台のストックがあるということだった。

同報告によると、米保健福祉省(HHS)は以前、中レベルくらいの感染症の場合、米国国民86万5000人が入院し、そのうち約6万5000人に人工呼吸器が必要になる。状況が深刻化すれば、990万人が入院し、74万2500人に人工呼吸器が必要になると試算していた。米メディアの報道によれば、米国病院協会(AHA)は今回の新型肺炎で米国国民96万人に人工呼吸器が必要になると予測する。

医療設備への需要が急速に増加する状況を踏まえ、過去数週間に、米国のゼネラルモーターズ(GM)、フォード、テスラといった自動車メーカーが、「すぐにも必要な医療設備の製造を支援する」と表明。しかしトランプ大統領は27日にGMを名指しして、「動きが遅すぎる上、価格も高すぎる」と批判した。米政府は少し前に朝鮮戦争時の「国防生産法」を発動すると宣言し、GMには米政府の発注を受け入れ優先的に取り組むよう求めた。

■イタリア政府高官「自分はマスクと人工呼吸器の密輸業者」

「我が国の医療物資は極度に不足しており、使い捨ての医療用防護服と人工呼吸器が足りず、中古の人工呼吸器でも必要だ。死亡率が高止まりするイタリアでは、人工呼吸器が非常に不足していることから多くの重症者が生きることをあきらめざるを得ない状況だ」。イタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ州の疾病コントロールセンターの医師はこのほどメディアにこう語った。推計によれば、イタリアでは人工呼吸器が1万台以上不足しているという。

イタリアと同様、スペインも医療資源に限界があり、高齢者が人工呼吸器を外して若い人に譲るよう求められる状況が世界に伝えられる。医療物資不足の問題を解決するため、スペイン保健省はこのほど総額5億7800万ユーロの調達合意を締結し、それには中国からマスク5億5000万枚、簡易検査キット550万個、人工呼吸器950台が含まれていることを明らかにした。

スペイン政府は全国の人工呼吸器の総数について専門的な統計調査を行っていないが、スペイン集中治療協会が全国に250カ所ある集中治療室(ICU)のうち149カ所を対象に行った調査によれば、この149カ所に人工呼吸器が2487台あるという。28日現在、スペインにはICUに入った新型肺炎患者が4575人おり、感染状況の発展にともなってさらに増えることが予想される。

■50数カ国が輸出規制、世界で「増産競争」が展開

目下の感染状況が最も深刻な米国、イタリア、スペインの3カ国以外でも、人工呼吸器には非常に大きな需要がある。英国では、国民保健サービス(NHS)が約8000台を擁するが、総需要は3万台だという。ジョンソン政権は、新たに設計された人工呼吸器を購入する、現行の生産量を拡大する、海外から輸入するという3つのルートで問題を解決しようとしている。英紙フィナンシャル・タイムズによると、英国からの注文で世界中のサプライヤーは手が回らなくなっている。真空掃除機会社のダイソンも英政府から人工呼吸器1万台を受注したが、設計から生産までゼロの状態から始めなければならず、実際にいつ製品を引渡しできるかは、監督管理当局のテストにいつ合格するかによるという。

カタールの衛星テレビ局のアル・ジャジーラは公式サイトで、「英国より医療環境が劣る国はこれから直面する情勢がより厳しいものになるだろう。たとえば西アフリカのマリは、人口が1900万人にも達するが、国内には人工呼吸器が56台しかない」と伝えた。アフリカ疾病コントロールセンターによると、アフリカ諸国は富裕国と接触して、人工呼吸器の供給を要請し、今後の感染状況の悪化に備えようとしている。しかしスイスのザンクトガレン大学が最近発表した報告によれば、今年初めから3月21日までの間に、54カ国が医療物資の輸出規正措置を相次いで打ち出し、対象には人工呼吸器が含まれていた。現在、医療用人工呼吸器を輸出する国は25カ国あり、中南米は1カ国だけ、アフリカ、中央アジア、中東、南アジアには1カ国もないという。

統計によると、欧州連合(EU)では人工呼吸器の不足数が少なくとも2万5000台にも達するという。米経済誌フォーチュンは、「世界規模でみると、人工呼吸器への需要が現在の医療機関が保有する台数の10倍になる。世界の需要はメーカーの限界に達したと同時に、『増産競争』も起きている」と伝えた。

ドイツ紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」の報道では、世界各地のメーカーはどこも生産能力を引き上げており、現在はスイスのハミルトン、ドイツのドレーゲル、スウェーデンのゲティンゲ、中国の北京誼安医療系統股フン有限公司(フンはにんべんに分)などで市場シェアの半分を担う。ハミルトンはさまざまな措置を取り、たとえばマーケティング担当者を生産ラインに配置するなどしており、生産量が昨年の1万5000台から今年は2万1000台に増える見込みだ。ハミルトンによると、「目下の最大の問題は供給チェーンが不安定なことで、当社の原材料ストックは3カ月しかもたない。今後については中国などのメーカーが原材料を迅速に供給できるかどうかにかかっている」という。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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