ガンジーの非暴力運動が超暴力的政治活動に発展、バングラデシュ名物「ホルタル」

Record China    2013年11月29日(金) 15時3分

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4年に1度の総選挙が間近に迫っているバングラデシュでは、ホルタルが続いている。ホルタルとはゼネストの意味で、もともとはインド独立の父ガンジーの非暴力運動がルーツだ。ところが今では非暴力どころか、極めて暴力的。資料写真。

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4年に1度の総選挙が間近に迫っているバングラデシュでは、ホルタルが続いている。ホルタルとはゼネストの意味で、もともとはインド独立の父ガンジーの非暴力運動がルーツだ。ところが今では非暴力どころか、極めて暴力的。抗議集会やデモ行進が暴徒化し警官と乱闘になることもしばしば。警察に捕まった参加者の顔面が倍の大きさになるほど殴られることもあるし、逆に警官がリンチを受けることもある。火炎瓶やレンガを投げる参加者に警官が発砲し死人が出ることもある。この一カ月は手製爆弾まで飛び出すなどエスカレートしている。(文:田中秀喜)

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▼仁義なき「抗争」としてのホルタル

最近行われているホルタルは与党の選挙運営案政権に最大野党BNP率いる野党連合が反対してのものだが、もはや抗議活動というより「抗争」に近い。そのイメージをつかむには映画「仁義なき戦い」シリーズを見てもらうのが一番だろう。

戦後まもなくのヤクザ同士の抗争と構造は非常に似ている。バングラデシュでは国(=警察)もヤクザなら野党もヤクザ。選挙後の利権をめぐって政権側は警察を動かし、野党は一般庶民を動員して「抗争」しているのである。

▼ルールを守った暴力、ホルタルの秩序

「仁義なき戦い」時代の日本とバングラデシュは、エネルギッシュな一方で暴力的な場面も多いところでも共通している。一度血が流れると、血で血を洗う抗争になる。やるかやられるかの世界というわけだ。

手製爆弾まで飛び出すこの「抗争」、一見まったくの無法状態のように見えるのだが、彼らには彼らなりの秩序がある。日本のヤクザにも仁義やオトシマエがあったように、である。

ホルタルの始まりを告げるのはバスの放火だ。開始前日、首都ダッカの記者クラブ付近で燃やされることが決まっている。翌日の新聞には燃え上がるバスの写真が掲載され、国民皆がホルタルの始まりを知るという寸法だ。なおこの燃やされるバスだが、ホルタル側が補償金を支払っているとうわさされる。事実、バスの放火絡みの死傷者はいないようだ。

そして参加者が逮捕された場合、野党側は参加者の身分次第では必要に応じて保釈金を支払ってくれる。ちなみにこの保釈金は大半が警官のポケットに入るらしい。抗議者を捕まえれば捕まえるだけ身代金が入るというわけで、まるで中世ヨーロッパの戦争だ。また選挙が終わってホルタル側が政権を取れば、犯罪行為がうやむやにされて釈放されることもある。「お勤めを果たしたら幹部にしてやる」と言われて鉄砲玉になるヤクザのようでもある。ホルタルの終わりも外野で見ている方はどこで決着が付くのか全くわからないが、いつの間にか決着が付いている事が多い。

ただ選挙が近づきヒートアップする現在、こうした予定調和は失われつつある。通行している車に無差別に放火する事件もあり、一般市民にまで死傷者が出ている。

選挙前の一大イベントとなっているホルタルだが、この抗争に全国民が参加しているかというとそうではない。むしろ参加者はごく一部で、ヤクザ同士の「抗争」をややあきれながら冷ややかに見ている一般庶民は数多くいる。

▼選挙のたび政権は変わる

さて選挙の行方だが、現在の政権与党アワミリーグと最大野党BNPのどちらかが政権を担うことになる。地元の新聞の統計調査発表では人口の55%が野党側を支持している。ただし現政権の満足度は55%。それほど現政権がやってきたことに不満があるわけでもない。実はこの20年ほど、バングラデシュでは総選挙のたびに政権が交代している。たとえ現状にさほど不満がないにしても、現政権不利がバングラデシュのパターンなのだ。

順当に行けば次の政権は1月中頃、BNPが取ることになるだろう。ただし選挙の運営案をめぐるホルタルは激しさを増すばかり。総選挙が実際にいつ行われるか、その日程さえも具体的にはまだ決まっていない…。

■執筆者プロフィール:田中秀喜

1975年生まれ。メーカー勤務、青年海外協力隊、JICA専門家を経てバングラデシュでコンサル業を起業。チャイナプラスワンとして注目されながら情報の少なさから敬遠されがちなバングラデシュの情報源となるべく奮闘中。

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