<中国はいま!>デフォルト一歩手前の地方政府も―シャドーバンキングの実態を探る

Record China    2013年12月11日(水) 6時10分

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先日、北京に行ったついでに、河北省の唐山市まで足を伸ばした。約150km離れているが、高速道路を使うと、1時間半ほどで唐山市中心部に到着する。写真は2003年に完成したばかりの曹妃甸のコンテナヤード。

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先日、北京に行ったついでに、河北省の唐山市まで足を伸ばした。約150km離れているが、高速道路を使うと、1時間半ほどで唐山市中心部に到着する。(文:相馬勝)

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唐山市は河北省最大の重工業都市であり、中国近代工業発祥の地の一つで、中国における機械化炭田、広軌鉄道敷設、蒸気機関車製造、セメント製造、近代製陶業の発祥地であり「中国近代工業の揺籃地」及び「北方の陶都」と称されている。

取材の目的は香港が2つ、シンガポールが3つ入る広大な曹妃甸新区だった。計画面積は1943平方キロメートル。2003年から、もともと地盤の弱い海岸沿いの砂地を埋め立てて開発された。曹妃甸新区のなかに「曹妃甸工業区」「南堡開発区」「唐山曹妃甸国際生態城」の開発が進められている。

唐山市から海岸線に向かって70kmほど南下すると、マンションやオフィスビル群が見える。しかし、様子が変だ。見渡す限り人はおらず、ビル周辺は荒れ地のままで、道路は整備されず、大きな水たまりがいくつもできている。鉄筋がむき出しになって、工事が中断されたマンションやオフィスビル群が不気味に建っていた。

2010年には大規模なエコシティや工業園区、20万から30万トン級の大型船舶が停泊できる30カ所ものエネルギー専用運搬埠頭など超大型プロジェクト「曹妃甸(そうひでん)新区」が完成しているはずだった。

このうち、エコシティー「唐山曹妃甸国際生態城」の開発計画によると、08〜10年に12平方キロメートルの基礎インフラを整備し、人口6万人前後にする。11〜20年には人口を80万人規模まで拡大し、将来的には面積150万平方キロメートル、人口200万人の都市を形成するとしている。

しかし現在の唐山曹妃甸国際生態城の一部は、人影のない豪華別荘などが建ち並び、周辺には荒れ地が広がるのみで、人や車の数もまばら。地元の人々は、開発が停められた「廃墟」と呼ぶようになっているという。

だが、当時は北京、天津、大連そして唐山を結ぶ環渤海湾経済圏を拡大し、上海を中心とする長江デルタ経済圏、広東省を中心とする珠江デルタ経済圏と匹敵する大経済圏を建設するという極めて野心的な巨大プロジェクトだった。

北京を中心とする環渤海湾経済圏は珠江デルタ経済圏に次いで、生産額で中国3番目に甘んじているからだ。北京や周辺の都市では、これについて「共産党のお膝元で、首都・北京を擁する環渤海経済圏の経済開発が広東や上海より遅れているのはおかしい」との声が強い。

開発は10年前の03年から始まった。全国人民代表大会で認められた国家プロジェクトで、胡錦濤主席や温家宝首相ら最高指導部が視察に訪れたほどだ。これまでつぎ込んだ総建設額は4000億元(約6兆2000億円)は下らないとみられる。

筆者はこの巨大プロジェクトが動き出したばかりの8年前の05年10月、現地を取材した。海岸線はいたるところが埋め立てられ、新たな道路を建設。将来の工業区の完成予想図やパネルを前に、唐山市幹部が熱っぽく構想を語っていた。計画では2010年までに京唐港、曹妃甸港で構成する大水深の専用鉄鉱石積み下ろしヤードや1000万トン級の製鉄所、石油精製基地やLNG基地なども建設するという大規模なものだった。

中国ではこれほど大きな国家プロジェクトが停滞するのはまれだが、いまマンション建設などの不動産建設が中止に追い込まれるケースが目立つ。いわゆるシャドーバンキングによる不動産開発資金が停滞し、理財商品が不良債権化するケースだ。

中国国営新華社通信が発行する「経済参考報」などによると、理財商品の残高だけで9兆800億元(約145兆円)、不動産開発の主体である地方政府の債務が急増し、GDPの約39%に相当する20兆元(約320兆円)に達している。

とくに、曹妃甸を抱える河北省の主要都市は厳しい状況だ。中国財政省(財務省に相当)の河北省出張所の調査によると、12年6月末現在で、河北省の11市のうち、6市の債務比率が100%を超過。省都の石家庄市は241%で中国全体でもワースト1位、続いて188%の唐山市、153%の�癆台市、147%の秦皇島市、135%の衡水市、129%の張家口市と続く。

日本の会計検査院に相当する中国の国家審計署は今年6月、15の省を含め全国36の地方政府の負債状況の監査結果を公表。それによると、昨年、9省の省都が返済責任を負う債務の債務比率が100を超えている。国家審計署は、この9都市を公表していないが、民間の証券会社「宏源証券」は、広州や南京、西安、成都などの主要都市を推定している。

この監査結果について、中央政府は「全体のリスクはコントロール可能。しかし、一部の地区と業界の返済能力は弱く、潜在リスクはある」と甘めの判断を示しているが、野村ホールディングスの香港法人、野村国際は「地方政府のなかでデフォールトを宣言する都市も出てくるのでは」と予想しているほどで、中国経済は徐々に厳しい局面にさしかかっている。

◆筆者プロフィール:相馬勝

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。

著書に「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)など多数。

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