ジェトロ上海の責任者「ポストコロナ時代も中国の重要性は不変」―中国メディア

人民網日本語版    2020年5月20日(水) 7時10分

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新型コロナが中国で猛威を振るった時、ジェトロ上海事務所の小栗道明所長は上海にとどまって日系企業がどのように会社を救済したか、中国からどれくらい大きな支援を受けたかをその目で見てきたという。写真は上海。

今年初め、新型コロナウイルスが中国で猛威を振るった時、日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所の小栗道明所長は日本に戻ることを選ばず、上海市にとどまって華東地域の日系企業が感染症の流行中にどのように会社を救済したか、中国からどれくらい大きな支援を受けたかをその目で見てきた。第一財経が伝えた。

■ジェトロ上海事務所の所長「全ての日系企業がいずれも操業を再開した」

同上海事務所は毎月、華東地域の日系企業について調査研究を行っており、上海市、江蘇省、浙江省、安徽省に駐在する日系企業710社が対象だ。

4月の最新の調査研究によると、製造業と非製造業では、ほぼすべての企業が企業活動を再開した。このうち生産能力を半分かそれ以上回復したところが9割に上り、6割を超える企業がほぼ100%の操業再開を実現した。

小栗氏は、「産業の違いによって、在中国日系企業の生産状況や販売状況にも違いがある。たとえばアパレル産業や家電産業は製品の販売率が低く、まだ完全には回復していない。売り上げが順調な食品産業、医療機器産業、半導体産業などは、一部の企業で販売率が100%を超えた」と説明した。

小栗氏は、「日本の3大自動車メーカーは中国市場全体で操業を再開し、欧米自動車メーカーよりも歩みが速い」と指摘した上で、「基本的に言えば、中国にある日系企業はすでに難関を乗り越えた」と指摘した。

小栗氏は感染症流行中のボトルネックについて、「感染症の段階ごとに、日系企業が直面する困難も移り変わった。2月を例にすると、当時の在中国日系企業が直面した主な問題は物流、サプライチェーン、社員の不足などだった。3月になると、こうした問題は徐々に好転した。その後、感染症は世界でますます深刻化し、4月になると、主に中国内外の市場で需要が減少した。日系企業の中国での操業再開は比較的スムーズだったが、経済状態がまだ感染症前の水準に完全には戻っていない。目下の主な問題はやはり中国国内の需要の減少、海外市場の需要の減少、そして国際産業チェーンの断裂だ」と述べた。

■中国市場のサプライチェーンを整備

このたびの感染症がサプライチェーンに与えた打撃に対し、安倍政権は過去最大規模となる約1兆ドル規模の経済救済策を打ち出し、このうち22億ドルを日本企業の製造能力・生産能力の多様化の奨励に充てるとした。

小栗氏はこれについて、「実はこうした政策では具体的な国を指名したり、第三国への移転を具体的に述べたりはしていない。日本政府が感染症を通じてわかったことは、国民生活に関わる主要産業(マスク、医療機器、自動車産業)の中には感染症流行中に中国国内で供給が追いつかなかったため日本国内での生産にも影響が出たところがあったということだ。そこでこうした産業の日本回帰を願うようになった」と述べた。

小栗氏は続けて、「しかし、在中国日系企業との交流の中で、このたびの感染症を通じて、産業を日本国内または第三国に移転する可能性はあまりないということを企業からたびたび聞いた。なぜなら、企業にとってみれば、市場があるところに生産ラインとサプライチェーンがあるからだ。在中国日系企業にとって、中国市場が最も重要だ」と述べた。

小栗氏は、「産業チェーンを日本国内に移転することではなく、投資を拡大することは、圧倒的多数の在中国日系企業が真っ先に考えることだ。感染症の流行中に、資生堂は上海市奉賢区に研究開発機関を設立し、ヤクルトは無錫市の工場の拡張を決めた。自動車メーカーには感染症の後で目に見える投資拡大の動きがあるだろう。特にトヨタは、中国市場への投資に相当な力を入れており、昨年から中国市場との協力が非常に多くなっている」と具体例を挙げて説明した。

小栗氏は続けて、「そのため、日系企業にとって、中国市場の重要性にはいささかの変化もない」との見方を示した。ジェトロの調査では、「グローバルサプライチェーン断裂の影響はなかった」と答えた企業の割合は、中国に生産拠点があるところが36%、ないところが41%だった。小栗氏はこれについて、「華東地域に進出した日系企業は、サプライチェーンが中国国内ですでに整備されている。そのため『影響なし』を選んだ割合が高かった。おそらく地域の間で開きがある。華南地域の日系企業はASEAN諸国との協力が多いため、その一部の日本企業が感染症を受けて、東南アジアによりよいサプライチェーン拠点を探そうとしているということも耳にする」と説明した。

■中国市場に新たな期待

操業を再開した中国市場に対し、日系企業はどのような新たな期待を寄せるのか。小栗氏は、「まず現在、日中両国間は感染症により人の往来がさまざまに制限されているので、企業はできるだけ早く隔離が解除されるよう強く願っている」と述べた。

小栗氏は、「多くの企業は設備の調整コントロールのため日本の専門家に現場に来てもらう必要があるが、目下の往来の制限措置により、こうした企業のニーズは満たせていない。そのため、解除を求める声が少なくない」と説明した。

小栗氏は、「次に、経済回復をどのように実現するかも、日本企業がポストコロナ時代の中国市場に注目するポイントだ。感染症の戦線は伸びる可能性がある。しかし企業にとっては、なんと言っても自分たちの所属する産業がどれくらい回復できるかが焦点であり、特に自動車産業がそうだ。武漢市と広州市には日本の3大完成車メーカーの工場があり、華東地域と華南地域には自動車製造と関連する部品メーカー、化学工業メーカーがたくさんある。そのため中国国内の自動車市場がどれくらい回復するかも、日系企業の注目するポイントだ。ジェトロは中国の『リベンジ的』消費をしっかり感じ取りたいと思っている」と述べた。

小栗氏はこのたびの感染症を通じて、中国国民の健康や安全への意識、高い品質の生活を追い求める意識が高まったことがわかったという。「こうした分野は日系企業の得意分野だ。日中間の協力の方向性には、基本的に変化はない」という。

小栗氏は中国で今盛んに取り上げられている新インフラ整備については、「日本国内ではまだ感染症が緩和されていないため、日本企業の大半はそれほど注目していないが、上海にある日系企業は新インフラ整備の動向に非常に注目している。新インフラ整備は部品、原材料、生産設備に関わる部分が多く、日本企業はここでも重要な役割を発揮することができる。そのためビジネスチャンスは極めて大きいと言える」と述べた。

小栗氏は、「ビジネスパーソンから見ると、中国市場への注目はずっと変わっていない。世界規模で見て、経済回復が最も早く、規模が最も大きいのは、やはり中国だ。このことは在上海日系企業にとって目下、大きなプレッシャーとなっている。日本国内の大企業がどこもポスト感染症時代における中国市場の飛躍的発展に強い期待を寄せ、中国市場によって欧米市場の穴を埋めようとしているからだ」と強調した。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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