Record China 2013年12月20日(金) 1時32分
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今月13日に報じられた、かつての北朝鮮ナンバー2・張成沢氏の失脚と処刑。この事件はもちろん、中国国内でも報じられている。写真は北朝鮮。
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今月13日に報じられた、かつての北朝鮮ナンバー2・張成沢(チャン・ソンテク)の失脚と処刑。北の国家安全保衛部からは「犬にも劣る見下げ果てた人間のクズの張は、党と指導者から受けた温かな父性愛と深い信頼に対し、背信行為で報いるという非常に忌むべき罪を犯した」云々と、字面を追うだけでちびりたくなるような文書が発表されている。(文:安田峰俊)
【その他の写真】
この事件はもちろん、中国国内でも報じられている。同じ社会主義国で一応は軍事同盟もまだ生きているとはいえ、中国と北朝鮮の関係は2000年代の核実験問題以来なかなか微妙。中国のメディアは、日本ほどは露骨な北朝鮮たたき報道はさすがにできないものの、かなり冷やかな姿勢で報じていることには変わりない。
ネット上の反応も同様だ。「朝鮮戦争の血の絆」だの同盟関係だのの政治的ドグマに縛られないぶんだけ、より直截的な批判や風刺がウェイボーにはあふれる。以下でじっくりご紹介しよう。
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高会民 河南省鄭州♂(12月15日 08:55)
【北朝鮮建国後に粛清された高官まとめ】
張成沢の逮捕と処刑によって、北朝鮮政治が再び衆目を集めつつある。
実のところ、北朝鮮における絶え間ない粛清は、金日成から金正日に至る数十年間で、権力の奪取・権力基盤の確立・内部矛盾をそらすといった目的で常用される手法である。
北朝鮮の建国から金正日の死まで、一人また一人と犠牲者が権力の祭壇上に送られ、粛清という名の供物となった。
張成沢にしても、北朝鮮の権力の祭壇の供物としては決して最初の一人でも最後の一人でもないのである。
※その後、北朝鮮建国前後の曹晩植失脚から2010年の朴南基の処刑まで17件の粛清事件が紹介されているが、こちらの情報は日本でも得られるものなので割愛する。
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その他♂(12月15日 09:05)
張成沢だって独裁者の悪行の片棒を担いだ男だし、
文化大革命のときの四人組みたいなもんだろ?
狡兎死して走狗煮らる。同情には値しないね。
浙江省金華♂(12月15日 09:12)
叔父を殺して世間の目を引きつける手法ってやつか。
キムさんの大発明ときたもんだ。
北京♂(12月15日 09:20)
一代の英雄出て万骨枯る。
政治家なんて殺し屋みたいなもの。
政治家にだけはなっちゃいけない。
広東省潮州♂(12月15日 09:21)
単なる専制統治体制が社会主義の皮をかぶる、と。
まったく笑うべし、悲しむべし。
山東省♂(12月15日 09:24)
文革のときは中国でもこの手の粛清は横行していた。
我々は他者の現在の状況を眺めるだけではなく、
自分たちの過去も忘れるべきではないさ。
四川省♀(12月15日 09:42)
独裁政治のブレない手法だね。
湖南省♀(12月15日 09:43)
ぶっちゃけ、うちの国も大して変わらない件について。
広東省広州♀(12月15日 09:44)
中国の文革は10年で終わったけど、
あっちは100年以上ずっと文革やり続けていくんじゃないの?
北京♀(12月15日 09:45)
一族統治の政権は怖いよ。庶民の安全が保たれないからねえ…。
あっ、私が言ってるのは北朝鮮の話ですよ。
広西チワン族自治区柳州♂(12月15日 09:51)
北朝鮮の大粛清を笑う中国人ってのは、五十歩が百歩を笑う(五十歩百歩)ってレベルじゃねえ。
むしろ一千歩の人間が五十歩を笑ってるといえよう。
河北省張家口♂(12月15日 10:57)
独裁君主に仕えるのは虎に仕えるが如し。
一切の権利が制約されない人間というのはまったく恐ろしいね!
将来、金正恩がサダムよりもひどい終幕を迎えることを望むよ。
アメリカ在住華僑♀(12月15日 11:09)
現在の私たちが北朝鮮を見る目線についてだけど、
以前の時代に外国人がどんな目で中国を見ていたかも考えた方がいいよ。
劉少奇や彭徳懐の死はむごたらしいものだったもの。
四川省成都♂(12月15日 11:34)
外国人は中国のことをどんなふうに見ているんだろうなあ…。
江蘇省徐州♂(12月15日 11:41)
独裁国家の記念写真で、指導者のすぐ近くの位置に収まっているヤツで寿命を全うする例は少ないものな。
北京♂(12月15日 11:51)
現代の世界で中世の宮廷劇が見られるとは。
こんな政権、さっさと潰れちまえよ!
外部からでも内部からでもいいから、こんな政権は潰してしまうのが社会の進歩のためになる。
福建省厦門♂(12月15日 12:04)
うちの国の偉い人がこの件を反面教師にして、憲政と民主化を進めてくれないかなあ…。
上海♂(12月15日 12:19)
高官が出世するか左遷されるかってのは大した問題じゃない。
そもそもの問題は、議会制度や民主的な選挙での組閣や政権交代が存在しないことにある。
だから、暴力的な手段での権力の交代や政策変更が常態化するんだ。
これは共産党(体制)の最大のアキレス腱でもある。
海南省海口♂(12月15日 12:26)
もしも、強大なアメリカが自由と民主主義のベンチマークになってくれていなかったら、きっと世界の多くの国はソ連に改造されて北朝鮮みたいになっていたはずだ。
幸いにして現在の世界には2つの「朝鮮」しかない。
すなわち、北朝鮮と西朝鮮。
被害をこれだけにとどめてくれたアメリカ帝国主義様には感謝だぜ!
※「西朝鮮」…中国のこと。北朝鮮と対置させて、同じような独裁体制が敷かれていることを揶揄するネットスラングである。
日本人が北朝鮮を批判する場合、国家体制が根本的に異なる相手なのでボロカスに言うことができる(反面、北朝鮮の社会に存在する問題を自国の問題に当てはめて想像する視点は極めて希薄な) わけなのだが、中国と北朝鮮となると、両者の違いは結局のところ程度問題でしかない。国家体制がver1.0だった頃は両者とも似たようなフォーマットだったこともあり、中国人は北朝鮮について、バカにしながらも彼らの社会問題をどこかで自国の問題を連想させるものとして捉えているようなのだ。
北朝鮮問題という、現代の世界で繰り広げられる宮廷闘争。金正恩を殷の紂王にたとえたり、状況を説明するのに「狡兎死して走狗煮らる」「五十歩、百歩を笑う」「君主に仕えるのは虎に仕えるが如し」と故事成語が多用したりする中国のネットの言語感覚がすいぶんしっくりくる。
文化的にも社会体制的にも中国との共通点が少なくない北朝鮮。かの国の情勢を中国からの視点で見るのも、なかなか興味深いことだなあと改めて思う次第である。
◆筆者プロフィール:安田峰俊(やすだみねとし)
1982年滋賀県生まれ。ノンフィクション作家。多摩大学経営情報学部講師。2008年〜2012年まで「迷路人」のハンドルネームで中国のネット掲示板翻訳ブログ『大陸浪人のススメ』を運営、2010年に中国のネット事情に取材した『中国人の本音』(講談社)で書籍デビュー。ほか『独裁者の教養』(星海社新書)、『中国・電脳大国の嘘』(文藝春秋)など。近著に『和僑』(角川書店)。
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