<羅針盤>コロナ禍が京都の伝統行事を直撃=葵祭、祇園祭の巡行中止は残念―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年5月31日(日) 5時0分

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今年は新型コロナウイルスの直撃により、葵祭、祇園祭など伝統的な行事が影響されている。内外の観光客は激減し、ホテル旅館や土産、飲食店は大きなダメージに見舞われている。写真は祇園祭。

京都で育った私は、京の町並みや風情に温かさを感じる。新幹線が東山トンネルから出た途端に広がる瓦屋根の民家の風景に、いつ行ってもやすらぎを憶える。京都はお寺が多い。そのためか四季を愛でることがたやすくできるのが都会人にとってはうらやましい限りである。

1月は初詣、2月は節分、天神の梅花祭、3月は涅槃会、4月は都をどり、5月は葵祭、7月は祇園祭、8月は大文字、10月は時代祭、12月は顔見世で始まり、最後は大晦日(31日)のお寺参りで新しい年を迎える。まさに文化の凝縮した町なのである。

ところが、今年は新型コロナウイルスの直撃を受けて、伝統的な行事が大きく影響されている。

京都を舞台に繰り広げられる伝統行事の中でも、葵祭りは京都3大祭りの中心的な存在。日本で最古の祭りで、飛鳥時代の舒明天皇の御代に始まった。毎年、都大路を行く牛車の音ものどかに華やかな行列が練る。斎王さまをはじめ女人列の優雅さはまさに王朝絵巻さながらである。

今年の葵祭は5月15日に下鴨神社で関係者だけで神事を行ったものの、コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、最大の見せ場となる行列は中止された。この行列は平安装束をまとったヒロインの「斎王代」ら約500人が都大路を練り歩く行列が見せ場だが、例年多くの見物客が集まることもあり、早々と中止を決定。斎王代も選ばなかった。

7月の祇園祭は平安時代の869年に疫病退散を祈った祇園御霊会が起源とされる。京都三大祭りの一つで、ハイライトとなる山鉾巡行には例年多くの観光客が訪れるが、中止すると発表された。巡行中止は、1962年に阪急電鉄の工事の影響で中止して以来、58年ぶりで、関連の神事も一部中止したり縮小したりするという。

 

京都の伝統行事は8月の大文字焼き、10月の時代祭、12月の顔見世と続く。コロナ禍を受けての緊急事態宣言が全国で解除され、京都でも収束に向けた「出口」見えてきたように思う。慎重に状況を分析し、リスクが少ない形で実現できればと願うが、ウイリス感染の「第二波」が憂慮される中、こればかりは「無理は禁物」なのかもしれない。

有数の観光地を抱える京都には年間約8500万人の観光客が訪れ、日本人を含む観光客が市内で支払った宿泊代や飲食費などの「観光消費額」は2018年には約1兆3000億円以上に達した。コロナ禍で訪日客や県外客は激減し、ホテル旅館や土産、飲食店は大きなダメージに見舞われている。コロナ禍で激減した内外の観光客が戻ることを切望したい。四季折々におりなす文化をいつまでも抱擁する京都であってほしいものである。

(羅針盤篇56)

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

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