日本で広がる「脱中国」論 どのように考えるべきか

人民網日本語版    2020年6月12日(金) 21時30分

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日本では新型コロナウイルス感染症がほぼ抑制され、経済活動が続々と再開している。

日本では新型コロナウイルス感染症がほぼ抑制され、経済活動が続々と再開している。日本のキヤノングローバル戦略研究所(CIGS)の瀬口清之研究主幹はこのほど取材に答える中で、「『ポスト感染症時代』には中日間の経済協力が『より緊密に』なるだろう。両国はグローバル化プロセスの中で巨大な使命をともに担うことになる」との見方を示した。同研究所は日本の有名な「回転扉式のシンクタンク」と呼ばれる研究機関で、所属研究員は日本政府の機関で働いた経験がある人がほとんどで、日本政府の政策決定者と良好な双方向の関係を維持している。

感染症の流行中に、中国人観光客が激減して日本の観光産業は非常に大きな打撃を被り、中国の工場が生産を停止したことも日本製品のサプライチェーンに供給がストップするという直接的な打撃を与えた。日本国内では問題の責任は「中国への過度の依存」にあるとの声が上がり、突如として「脱中国」の論調が広がっていた。中国に進出した日本企業の中には、「中国から撤退」して日本に回帰すると発表したところもあった。

「『脱中国』を主張するのは経済がわかっていない人であり、『中国から撤退する』というのは競争力のない企業だ」。瀬口氏はこのように率直に指摘した上で、「こうした人々は中日間の経済交流の重要性を十分に理解しておらず、自分たちの中国での発展状況が順調でないので、日本に帰らざるを得なくなった。本当に優れた企業はどこも中日間の緊密な貿易関係から利益を得ており、『脱中国』を考えないばかりか、対中投資を拡大しようとしている」と述べた。

事実は確かにそうだ。「日本経済新聞」の報道によると、日本電産株式会社の遼寧省大連市での新工場プロジェクトは3月に着工し、来年には完成して操業を開始する予定で、電気自動車(EV)用の駆動モーターを毎年最大で360万台生産できるようになるという。着工したのはちょうど感染症対策が最も差し迫った時期で、日本電産は500億円だった投資額を1千億元に増やして、中国市場に対する信頼感を表した。このほか、トヨタ自動車も1億3千万円を投入して天津市に新エネルギー自動車の工場を建設する計画だ。

「ポスト感染症時代」の中で、中日経済協力に新たな変化が訪れるだろうか。

瀬口氏は筆者からの質問に対し、「緊密に、より緊密になる」というシンプルでポジティブな答えを出した。

瀬口氏によると、「日本企業はこれまでリスクを回避するため、分散投資を行うのが一般的で、中国だけでなく、ASEANなどの国にも工場を建設した。技術の流出を恐れて、重要な部品はとりわけ中国で製造しようとしなかった。中国で感染症が発生すると、日本企業を含む多くの在中国の外資系企業が経営困難に陥った。意外だったのは、中国の各地方政府が3月上旬から経済回復に向けて動き出し、外資系企業を積極的に支援したことだ。感染症が世界中に拡散すると、米国などでも日本企業は同じような問題にぶつかったが、支援は受けられなかった。そのため、各国企業は中国の支援システムを高く評価し、中国で集中的に製品を生産するのが最も安全なやり方かもしれないと考えるようになった。さらに今年施行された『中華人民共和国外商投資法』は知的財産権に対する保護を強化しており、ここから中国の投資環境が徐々に改善されていることがわかる」という。

また一方で、感染症流行中に日本はEC、遠隔医療、オンライン教育、人工知能(AI)、モバイル決済などのハイテクの重要性を認識し、こうした分野で中国がはるかに先行していること、インフラ建設のレベルも日本を上回ることを認識した。瀬口氏は、「未来に着目する日本企業はどこも手を尽くしてこうした分野で中国とリンクしようとし、中国に研究開発センターを設立することを考えるところも多く、以前にも増して中国市場を重視するようになった」と述べた。

瀬口氏には「チャイナノミクス」というオリジナルの理論があり、「中国との経済協力を強化することが、日本が経済復興を実現するための最良の方法」と主張する。瀬口氏は、「中国の経済規模は2009年に日本に追いつき、2010年に日本を追い越して世界2位のエコノミーになった。中国の現在の経済規模は日本の3倍で、将来はさらに差が拡大するだろう。日本にとってみれば、機会がこれまでよりも多くなる。また中国企業はここ数年は製品の品質をより重視するようになり、品質こそまさに日本企業の十八番であり、両国経済の双方向の動きを持続的に推進すればウィンウィンの局面をもたらすことに疑問の余地はない」と述べた。

瀬口氏は、今年の中国の政府活動報告で国内総生産(GDP)成長率の数値目標が提示されず、中国経済が高速発展ばかりを強調しなくなったことについて、「今年はGDP成長率の数値目標を設定しなかったのはごく当たり前のことだ。中国とグローバル経済との関係はますます緊密になり、海外で感染症がまだ抑制されていないこと、経済活動が制限されていること、輸出をめぐる状況が不透明なことなどによりGDP成長率の予測が難しいからだ。今は中国経済は確かに感染症の影響を受けているが、今年下半期から徐々に正常な軌道に戻るはずで、中国経済は全体として安定した状況を維持するとみられ、GDP数値目標を発表しなかったことは問題にはならない」と分析した。

このたびの感染症の破壊力は「世界大戦」にも引けを取らず、「反グローバリゼーション」のプロセスを加速させるとみる学者がいる。瀬口氏は、「このたびの世界的な感染症で深刻なのは『経済グローバル化への副作用』だ」として「反グローバリゼーション」の見方には賛同せず、「グローバル化が引き続きポスト感染症時代の主流だ」と述べた。

瀬口氏は、「情報の交流、人の往来、金融投資などの分野での双方向の動きがますます密接になるにつれ、多くの人がそこから利益を得て、グローバル化が大きな流れになり、誰にもこの流れを阻止することはできない。しかし人類が直面する共通の課題は今後ますます多くなり、新たな矛盾点を生み出すこともあるだろう。一部の国が引き続き『自国ファースト』を強調したり、自国の利益のためにいくつかの問題を『政治問題化』しようと画策したりするなら、時代の流れに順応することはできない」と述べた。

瀬口氏は取材に答える中で、「未来のグローバル化は国の枠を超え、全ての人類と社会の持続的な安定を重視しなければならない。この目標を実現するために、『規則』に完全に頼ることはおそらく不可能で、『道徳』にも頼ることが必要になる。その時には『仁義礼智信』という東洋思想が重要な役割を果たすだろう。これは西側の強権政治にはできないことだ。この思想は中国の古典思想を源流とし、日本で発展し継承されてきた。よって中国と日本は未来のグローバル化プロセスにおいて非常に大きな使命を共同で担うことになるだろう」と述べた。(編集KS)

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