<コラム>天台山に学んだ栄西、臨済宗を隆盛に導いた北條一門終焉の鎌倉「東勝寺跡」を訪ねて

工藤 和直    2020年7月6日(月) 23時40分

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天台山「国清寺」は、浙江省台州市天台県にある天台宗の古寺である。

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天台山「国清寺」は、浙江省台州市天台県にある天台宗の古寺である(写真1)。浙江省都杭州市から東へ新幹線を使い1時間余りで寧波市に着く。その南西150km、寧波→天台山長距離バスを使い2時間程度で到着する。寧波は遣唐使の時代から日本や海外との窓口であり、宋代以降は多くの僧侶が留学に訪れた都市。京都府長岡京市が友好都市だ。現在、杭州湾海上大橋が完成し、上海から寧波まで車で2時間程度となっている。

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日本の天台宗の開祖である最澄(西暦766~822年)は平安時代の僧で、近江国滋賀郡生源寺(現在の大津市坂本)の地に生まれた。延暦23年(西暦804年)中国浙江天台山「国清寺」に渡って仏教を学び、帰国して比叡山延暦寺を建て天台宗の開祖となった。延暦寺で学んだ栄西(西暦1141 ~1215年)は、同じく南宋仁安3年(西暦1168年)中国天台山万年寺に留学し、禅宗である臨済宗を日本に伝えた。禅宗の一つで“自らの力で禅に取り込むことで心を浄化する”自力本願をコンセプトとする。鎌倉武士が一番信仰したのは、この臨済宗である。特に北條得宗家で保護され、多くの寺院が日本各地に創建された。

鎌倉幕府の5代執権「北條時頼」の頃、中国の五山の制に倣って日本にも導入した。最終的には京都と鎌倉にそれぞれ五山、その上に「五山之上」という最高寺格として「南禅寺」が置かれた。現在の五山の順位が決まったのは至徳3年(西暦1386年)室町幕府3代将軍「足利義満」の時で、建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺の順になる。

第一位の建長寺は神奈川県鎌倉市山ノ内にある寺院で、臨済宗建長寺派の大本山である。鎌倉時代の建長5年(西暦1253年)の創建で、本尊は地蔵菩薩、開基(創立者)は第5代執権「北條時頼」、開山(初代住職)は南宋の禅僧「蘭渓道隆」である。第二位の円覚寺(えんがくじ)は神奈川県鎌倉市山ノ内にある寺院、臨済宗円覚寺派の大本山である。開基は第8代執権「北條時宗」、開山は無学祖元(仏光国師)である。鎌倉時代の弘安5年(1282年)に北條時宗が元寇の戦没者追悼のため中国僧の無学祖元を招いて創建した。鎌倉時代を通じて北条得宗家に保護された。JR北鎌倉駅の駅前に総門がある。

北條得宗家の菩提寺は臨済宗「東勝寺」であった(写真2)。鎌倉駅から東に1kmほど行った滑川を渡った小高い丘陵にあった。菩提寺であると同時に有事に備えた城塞の意味をもった寺院であったことが、滑川を渡る東勝寺橋から見るとすぐに分かる(写真2左下)。

西暦1333年(元弘3年)、後醍醐天皇に呼応して鎌倉に攻め寄せた新田義貞の軍勢を迎え撃つべく、第14代執権「北條高時」ら北條氏一門が当寺に篭もったが、成すすべもなく自ら火を放って自刃した(東勝寺合戦)。『太平記』によると、自害した者は一族・家臣283人、あとに続いた兵も合わせて870人余であったという。この時、寺院建造物は焼失した。現在の東勝寺旧跡の北方に北條高時「腹切りやぐら」と呼ばれるやぐらが存在している(写真2右上)。腹切りやぐらは、その名称から東勝寺での戦死者と何らかの関係があるとされ、洞窟内に墓石と多くの卒塔婆が見られた(写真2右下)。140年続いた鎌倉北條氏は5月22日(新暦7月4日)、ここで絶えた。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。

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