<コラム>最近の韓国スケッチ

木口 政樹    2020年8月14日(金) 23時20分

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新型コロナで国内の経費がかさんでいる中、文政権は北朝鮮に119億ウォン支援すると言ってひんしゅくを買っている。写真はソウル。

韓国は1週間続く梅雨の雨で、死亡20人、行方不明12人となっており、各地で川が氾濫し、山では土砂崩れが頻繁に起こっている。

新型コロナで国内の経費がかさんでいる中、文政権は北朝鮮に119億ウォン(約12億円)支援すると言ってひんしゅくを買っている。

すでに決定しているからおそらくこの金額は北朝鮮に送金されることになるのだろう。数百億ウォンという費用をかけて作った南北連絡事務所を爆破されていながら、国内が困っているのにもかかわらずまた北のために金を送ると言っている。文在寅という男はいったい何を考えているか皆目見当もつかない。

文在寅氏は8月からの新しい人事で、統一部長官にイ・イニョン、大統領安保補佐官にイム・ジョンソク、昔のKCIA、今の国家情報院の院長に朴智元(パク・チウォン)を任命した。これら3人はお墨付きの従北主義者である。

さらに言うと、イ・イニョンとイム・ジョンソクはチュサパ(主体思想論者)と言われている。言われているだけでなく、実際にその証拠がいろいろとある。主体思想論者というのは、金日成の唱えた主体思想を最高のものとしてこれを研究し実践する者のことを言う。簡単に言えば南の韓国も北朝鮮のように金王朝一家を押し戴いて共産主義でやっていこうよと考える人間である。

朴智元がチュサパかどうかはわからないが、2000年ごろ、金大中(キム・デジュン)大統領のときに北に数百億ウォンという金を不正に送っている(もちろん金大中の指示でやったことだろうけど)。このような人間を8月に新しく大統領の側近として任命したこと自体、今の政権がいかに北に前かがみになっているかがわかろうというものだ。

韓国の最近の問題として、住宅価格の高騰問題がある。アパート(日本式にはマンション)価格が際限もなく高騰している。そんな中、一人2住宅以上保有することを禁止する法律が近々成立する見通しとなり、大統領を補佐する立場にある人間のうち、2つ以上のアパートを持っている連中が電撃辞意を表明している。盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長をはじめ、秘書室所属の首席秘書官(次官級)5人が7日午後、電撃辞意を表明した。政府高官としてとどまっているより、アパートを何戸も持っていたほうがいいという判断からだろう。いくら図々しても、政府が発表する法律に抵触しながら政府内部にはおれないということだろう。

現政府は、左派政権である。左派とは民衆寄りの立場であり金持ちを打倒すべしとする連中のはずだ。しかし現政権の補佐官たちは、民衆などは眼中にない。金だけが見えているのだろう。不動産やアパートで金儲けをしてはならないと筆者は常々考えている。

不動産というのは、神様が人間がちゃんと暮らしていけるようにその人にふさわしい分だけの土地を与えてくれているのだ。これを金儲けの道具に使うというそのマインド自体が、あまりにも自然(神様)をばかにしていることと言えないだろうか。(貧乏人のヒガミかもしれないけれど)。文在寅政権の矛盾がこんなところにもみられるという例で書いた。

一方、8月4日、日本の企業の資産売却がカウントダウンに入り、日韓関係が再び揺れ動く可能性が高まっている。日本製鉄(旧新日鐵住金)がポスコと合弁で作った法人PNRの株式の差し押さえと売却(現金化)が現実のものとなった場合、日本はこれに対する報復措置として、駐韓日本大使の帰国措置、関税引き上げ、第2次対韓国輸出規制、ビザ制限などに乗り出すものとみられている。8月8日現在のところ、韓国は水害の拡大のために、徴用工問題に神経を使う時間がないようにみえる。だからニュースにも徴用工に関する内容はほとんど出てこない状況だ。雨が終わったら、再燃してくるのだろう。非常に憂慮される。

さらには、以前本コラムでも「尹錫悦(ユン・ソンヨル)検事総長」のことを書いたが、正義を旨としてやっている尹錫悦検事総長イジメが現在も進行形でやられているのだ。去年韓国を二分した「チョ・グク」事態。読者のみなさんもご記憶のはずだ。チョ・グク氏は、法務大臣の座に1月ほどあって、世間の風当りに耐えられずに法務大臣を辞退した。

その後釜に据えられたのが秋美愛(チュ・ミエ)という女性。判事出身。同じ民主党系というか、文在寅寄りの人間だ。秋美愛氏が正義の味方の尹錫悦検事総長の手足を切り刻むような人事をまたまた実行してしまった。検察庁には、秋美愛派の検事だけが残り、尹錫悦寄りの検事はほとんどいなくなってしまった。検察の人事を法務長官が行えるからだ。こんな独裁政権がどこにあろう。

ちょっと追加で書いておきたいことがある。6月19日の「北朝鮮の無慈悲な爆破の後でも韓国の日常は続く」と題するコラムで、韓国人でありながら日本が好きと大声で言っている若者らのユーチューブをいくつかご紹介した。今回さらにおもしろいものを見つけたのでご紹介したい。「キムチわさび」というニックネームの人でれっきとした韓国人だ。

殺すぞという脅迫を受けながらも、韓国から「真実を知ろう、反日教育の非を認識しよう」という観点に立って、新聞記事など客観的な資料をもって反日がいかに間違っているかを地道に説いている。彼の願いはただ一つ。日本と韓国が友好関係をもってお互いに切磋琢磨してやっていこうじゃないかというただこの一点。こういう人が韓国に実在するということ自体、奇跡のように筆者には思われる。

日本人がいかに「韓国と仲よくしよう」と韓国人に言ってもなかなか響かない。でも、韓国人が「いや、そうじゃないんだよ、こうなんだよ。真実を知ってもっと日本と仲よくしよう」と言えば、韓国人に響かないわけがない。副作用としては「殺すぞ」といった身の危険さえあるということ。

でも「キムチわさび」さんは、恐れている気配はない。脅迫した人間に「いつでも私のうちに来てください。一緒に話しましょう」と堂々と言っている。こういう人がだんだんこちら韓国国内に増えてきているように思える。

以前だったら絶対に言えないし、言ったらそれこそ「殺される」かもしれなかった。けど今、インターネット、ユーチューブの時代になって、「真実」を言おうと声をあげる人がたくさん出てきている。日本人としてはこれくらいうれしいことはない。

韓国人なんて、つばもひっかけてやらない、なんていう日本の方もたくさんいらっしゃるけど、それじゃ何も進んでいかない。命をかけて真をしゃべろうとしているこちらの人たちのように、引っ越しのできない国と国との関係を一ミリでもよくしてゆこうと考える日本の方が一人でも増えていくことを切に願いながら…。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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