Record China 2020年8月28日(金) 17時10分
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安倍晋三首相が辞意を表明。中国では安倍首相は第1次、第2次政権時代を通じて、中国との関係改善に尽力したと評価されており、後継首相にも安倍首相の対中路線を堅持するよう希望する声が多い。写真は安倍首相。
安倍晋三首相が辞意を表明した。中国では安倍首相は第1次、第2次政権時代を通じて、中国との関係改善に尽力したと評価されており、後継首相にも安倍首相の対中路線を堅持するよう希望する声が多い。
安倍首相は昨年12月下旬に中国・成都で開かれた日中韓首脳会議に出席した際、成都が「三国演義」における蜀の都だったことにちなみ「3カ国は三国志時代の魏・呉・蜀のような互いに争う関係ではない。ともに手を携えて『新たな三国時代』を築くことを望む」と呼びかけた。
小泉政権を第1次政権で引き継いだ安倍首相は、小泉首相時代に冷え込んだ日中関係の「氷を溶かす旅」として2006年10月、初外遊先として中国を訪問。胡錦涛国家主席と8年ぶりの日中首脳共同文書「戦略的互恵関係」を締結した。
民主党政権時代の2012年9月、尖閣諸島国有化で日中関係は極度に悪化したが、同年12月に発足した第2次安倍政権は日中関係改善に向け尽力。安倍首相は度々訪中し、習近平国家主席と会談した。
日本と中国との間には国交正常化以来の緊密な相互経済関係がある。浙江省や上海市など経済発展が目覚ましい地方政府のトップを経験し、日本企業関係者との親交が深い習主席の本音は日本との共存共栄に持ち込むこと。「対日関係は改善すべきだ。日中の経済交流と民間交流を強化せよ」と発言している。安倍首相は粘り強く習主席との会談を重ねた。最初の会談での表情は堅かったが、次第にほぐれ、微笑もみられた。
◆安倍首相、「習主席国賓訪日」を重視
安倍首相は昨年12月に訪中した際、北京で習近平国家主席とも会談、20年春に予定されていた習氏の国賓来日について「極めて重視している」と伝えた。習氏は「新時代」という言葉を使い、協力に強い意欲をみせた。
習氏の国賓での訪日をめぐって、安倍首相は成都で開いた記者会見で「中国との間には様々な懸案が存在していることも事実であり、習氏との日中首脳会談でも直接提起をした」と言明。習氏の国賓訪日で加速する友好的な関係を通じて毅然と対応していく方針を示した。
結局、新型コロナウイルス感染を理由に習氏の訪日は延期されたが、中国政府は安倍氏の対中姿勢に期待。二階俊博幹事長や中西宏明経団連会長らも安倍首相の対中政策を支持している。
◆ガス田共同開発など課題山積
日本が目指すべきは、外交的な手段で東アジアの安定につながる成果をあげることだ。日中は2008年、東シナ海の紛争を防ぐため、ガス田共同開発の合意を交わしたが、実現されておらず、具体化は最優先課題である。日中防衛首脳のホットライン設置も合意したまま最終的に実現していない。
「アメリカ第一」を標榜するトランプ大統領は場当たり的な言動や行動を繰り返すことが多い。北朝鮮による核・弾道ミサイル開発や、中国の海洋進出、経済相互発展などに対しては、「日米同盟」、「中国との互恵関係の重視」、「アジア諸国との連携」の3本柱を中心にバランスよく展開していくことが現実的であろう。日本は政治と軍事では米国と連携し、経済では中国と戦略的な互恵関係を深めるという複数の軸足をもつことを確認する必要があろう。
日本は日米同盟を基軸としながら、中国とも協調する従来方針を維持する「両にらみ」の戦略を描いてきたが、米中対立が激化する中、米国からは米寄りの立場を取るよう圧力をかけられている。中国は米中対立を和らげるため日本との協力強化を模索している。
王毅国務委員兼外相は7月末、茂木敏充外相との電話協議で「日中関係は改善の勢いを維持し着実に発展する。意見の相違を処理し、主要な力を相互利益の協力に集中すべきだ」と呼びかけ、茂木氏も「日本は両国の協力関係を進めたい」と応じた。日本も中国との関係悪化につながらないよう腐心。悪化が止まらない日本経済の立て直しに中国との協調は欠かせないためだ。
19年の日本の対中輸出入額は33兆1357億円で、全体の21.3%を占め最大だ。帝国データバンクによると中国進出企業は約1万3600社超、中国関連ビジネス企業は3万社以上。日本にとって、有力な成長戦略であるインバウンド中国人訪日客へのコロナ後の期待も大きい。
◆TPPとRCEPを繋ぐ橋渡しを
7月の貿易統計(財務省発表)によると、日本全体の輸出額が前年同月比19.2%減と落ち込んだ中で、中国向け輸出は同8.2%増の1兆3290億円と7カ月ぶりにプラスに転じた。半導体製造装置のほか、精製銅や自動車が増えた。対米国の輸出額は19.5%減の1兆914億円と、12カ月連続で減少した。経団連幹部は「日本経済は人口14億人の中国市場なしで成り立たない」と話す。
アジア太平洋の経済相互依存で、日本は絶好のポジションに位置する。米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)と中国、韓国、東南アジア、インドなどが加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)をともに推進し結合させればこの地域の繁栄と安全に繋げられる。
日本は日米同盟を基軸としながら、中国とも経済を中心に協調する方針を維持する戦略を描いてきた。日本は国益最優先を貫き、安全保障を依存する同盟国・米国と最大の経済貿易相手国である中国との狭間で、激動の国際情勢を冷静に見据え、したたかな戦略を描くべきであろう。(八牧浩行)
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