Record China 2020年9月29日(火) 20時0分
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中国のスポーツ大会で新たに導入されている「体力テスト」の結果で成績を決める方式に、各方面から疑問の声が上がっている。
■アジア記録で1位も決勝に進めず?
発端は青島市で開催された全国水泳選手権だ。女子1500メートル自由形予選で、遼寧省の王簡嘉禾(ワン・ジエンジアハー)が15分45秒59をマークし1位になった。これは、中国記録とアジア記録を塗り替えるものだったが、3000メートル走、懸垂、ベンチプレス、スクワット、などの10種目からなる「体力テスト」の成績が振るわなかったため決勝に進出できなかった。
ほかの種目でも同様の現象が見られ、傅園慧(フー・ユエンフイ)、于静瑶(ユー・ジンヤオ)、方[吉吉](ファン・ジャー)らはいずれも予選1位のタイムを出しながら「体力テスト」の成績によって決勝に進めず。男子50メートル自由形で中国記録をマークした余賀新(ユー・ホーシン)も例外ではなかった。この大会では、予選の成績上位16人のうち体力テストの成績上位8人が決勝に進出すると規定されていた。
■各方面から疑問の声
王は予選のレース後、体力テストを重視していないわけではないとしつつも、「体力テストの結果で上位8人を決めるというのは、やはりやや思慮に欠けると思う」と遠回しに不満を表明した。2016年リオデジャネイロ五輪での天然キャラでブレイクし、日本の番組にも取り上げられた傅は、SNSに「私が一生のうちに長距離走を走れる日が来るとは想像できない」と書き込み、くやしさをにじませた。
関係者からは「一番の問題は十把ひとからげにしているところ。科学的な基準を設けるべきだ。どの競技の選手も3000メートルを走らなければならないというのはおかしい。持久力を測るにはさまざまな方法がある」との声も上がった。また、水泳選手からは「私たちにとって大切なのは脚の関節の柔軟性」「水中競技の選手なので陸上競技は得意ではない。マラソン選手が泳げるわけではないのと同じこと」との声も聞かれた。ある専門家は「テストの項目を細分化し、競技に応じたテストにすべき」との見解を示した。
■中国水泳協会は反論
選手らからの不満の声に対し、中国水泳協会の周継紅(ジョウ・ジーホン)会長は「中国水泳界がさらに高いレベルに行くためには、基礎と専門の両方が必要。中国の選手の短所を補い、世界における競争力を高めることが目的で、選手たちに身体能力と専門競技のいずれにおいても世界トップレベルになるよう奨励するものだ。今大会で初めて導入したが、この改革の方向性を堅持する」とした。
また、「多くの選手が体力テストで良い成績を残し、満点を出している選手もいる」と強調し、中国記録をマークした余について「去年の世界のランキングでは11番目の成績。世界大会で準決勝に入る実力があることを示しているが、決勝進出を保証するものではない」と説明した。傅らの記録についても評価する一方、「世界レベルとはまだ開きがある」とした。
■他の競技でも有力選手が次々脱落
「体力テスト」は競泳のほかにも、陸上、バレーボール、バドミントンなどの国内大会で採用されているが、やはり物議を醸している。
全国体操選手権の女子跳馬では、この「体力テスト」で基準をクリアできなかった選手が続出し、決勝に進出できたのはわずか5人。そのうちの1人は、決勝で助走から跳馬に手をつき、前方に一回転する「前転とび」という「最も簡単な技」で全国5位を獲得した。中国メディアの新浪新聞は「体力テストが滑稽な一幕を生み出した。全国大会でアマチュア演技」と痛烈に皮肉った。
また、南京市で行われたフェンシングの全国大会の女子エペでは、2019年の世界選手権団体優勝メンバー2人が「体力テスト」の「前屈」と「縄跳び」の成績が振るわなかったことでベスト8に入れず。同大会ではベスト16のうち体力テストの成績上位8人が競技に臨み、残りの8人は体力テストの成績で順位が決定した。
■ネットでは不満の声が多数
「体力テスト」による順位付けについて、ネットユーザーからは「明らかに問題があるルール」「天下に名をはせる滑稽さ。スポーツ選手が身体能力を競い合う」「こんなおかしな規定で一生を台無しにされる選手がかわいそう」「世界記録を破っても体力テストを通過できなきゃ試合に出られない。中国スポーツ界の謎」「こんなことを続けるようなら中国スポーツ界は終わりだ」など、反発する声が大半を占めている。中には、「お聞きしますが、スポーツ関係の役人は体力テストを受けなくてもその職に就けるのですか?」とやゆするユーザーもいた。
なお、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)のランキングでは29日午前現在、「体力テスト」に関するワードが上位を占めている。(編集/北田)
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