<COP26>中米印露日は人類共通の敵「温暖化」阻止へ英知結集を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年10月31日(日) 8時10分

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第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議「COP26」が10月31日から英国で始まる。世界の平均気温の上昇を、21世紀末時点で産業革命前に比べ1.5度以内に抑える目標を掲げ、各国に決意と行動を迫る。

今年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏は50年以上前に「二酸化炭素が増えれば地球の気温が上昇し、地球温暖化につながる」という理論を世界に先駆けて発表。こうした成果がもとになり、地球温暖化や気候変動の研究が進んだ。

折しも、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議「COP26」が10月31日から英グラスゴーで始まる。世界の平均気温の上昇を、21世紀末時点で産業革命前に比べ1.5度以内に抑える目標を掲げ、その達成へ各国に決意と行動を迫るという。

温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」が掲げるこの目標について、国内ではエネルギーの安定供給を妨げ産業競争力を低下させると懸念する声が多くハードルは高いと聞く。しかし議長国の英国はCOP26で達成への道筋をつけようと懸命のようだ。日本は再生可能エネルギーの導入拡大など国内対策に加え、途上国への技術、資金面での支援を通して積極的に貢献する姿勢を鮮明にすべきである。

政府は条約事務局に「2030年度の温暖化ガス排出を13年度比で46%減らし、さらに50%減の高みに向けて挑戦を続けていく」とする目標を提出した。日本にとって46%減は高い目標だが、政府は具体的なシナリオを早急に策定する必要があろう。

開発途上国への支援強化も急務だ。先進国は2009年に、途上国に対する気候対策支援を20年までに毎年1000億ドル(約11兆3000億円)に到達させると約束したが、達成できなかった。国際金融機関を通した支援拡大や、民間資金の投入などの対策が必要だと思う。

日本の太陽電池材料や蓄電池、水素エネルギー技術には定評がある。研究開発に力を入れ、低コスト化と普及に官民あげて取り組まねばならない。

今年8月には、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、温暖化は人間の影響だと「疑う余地がない」と断言する科学的根拠を示した報告書を公表。気温上昇は2040年までに「1.5度」に達する見通しを示し、熱波や干ばつ、豪雨など気象への影響も強調した。

国連環境計画(UNEP)は、現状の各国の2030年の削減目標を達成しても今世紀末に「2.7度上昇」と予測している。「COP26」は温室効果ガスの排出削減に向けた対策強化で、どこまで合意できるかが焦点だ。途上国への省エネ支援による排出削減分を自国の削減分として算入できるようにするなどの「市場メカニズム」と呼ばれる仕組みの具体化もテーマとなるという。

議長国・英国は石炭火力発電の利用停止で強い姿勢を示している。日本はエネルギー基本計画で、2030年の電源構成で石炭火力を19%に抑える目標を掲げた。しかし欧州では廃止の時期を打ち出す国が相次いでおり、日本も廃止の方向性とその時期、そこへの道筋を示さねばならない。

自動車分野の脱炭素化も議論されるという。欧州や中国では電気自動車(EV)への移行を急ぐ。市場の覇権争いの要素もあるとはいえ、技術開発や販売競争も考え、世界の潮流を見定める必要がある。

地球規模では排出量が1位中国、2位米国、3位インド、4位ロシア、5位日本の順。これら5大国の大幅削減が欠かせない。地球全体の危機が迫る中、主要国は米中対立をはじめとする諍い(いさかい)に終止符を打ち、「人類の共通の敵」に英知を結集すべきである。日本は世界の温暖化ガス排出に占める日本の比率は約3%。世界の動きに足並みを揃えるべきだろう。

<直言篇179>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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