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<コラム>起業家養成のレジェンド・段永平とは?OPPO、VIVO、網易、拼多多の創業に関与

高野悠介    2021年1月7日(木) 17時10分

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中国の代表的経営者といえば、馬雲(アリババ)、馬化騰(テンセント)、李彦宏(百度)、任正非(ファーウエイ)、雷軍(シャオミ)だろう。しかし、今回は段永平氏を取り上げたい。写真は歩歩高の製品。

中国の代表的経営者といえば、馬雲アリババ)、馬化騰(テンセント)、李彦宏(百度)、任正非(ファーウエイ)、雷軍シャオミ)らだろう。いずれも新市場を開拓した非凡な人物だ。しかし、今回は彼らではなく、段永平氏を取り上げたい。日本ではあまり知られていないが、多くの創業者を養成し、中国では“神秘的富豪”と呼ばれる人物である。

■「小覇王」と「歩歩高」

段永平は1961年、江西省・南昌に生まれた。1982年、浙江大学を卒業、北京電子管廠へ配属された。“鉄板晼”と呼ばれる安定した国有企業だったが3年で退職し、中国人民大学計量経済学の院生となった。

その後、経済成長の著しい南方を視察して回る。そして広東省のゲーム機メーカー「日華電子廠」に入社した。すぐ工場長に抜擢され、「小覇王」というブランドのゲーム機を開発した。職業人生最初のヒットを飛ばし、赤字企業を再生させた。小覇王は、今も有名な教育系電子機器ブランドである。

1995年に同社を飛び出し、新会社を設立する。社名は公募し「歩歩高」に決まった。1997年には、200社が競う激戦のVCD市場へ進出し、トップの地位を獲得した。TV広告にアーノルド・シュワルツェネッガーを起用するなど、斬新な広告戦略を採用し、賛否両論を巻き起こす。

■網易(ネットイース)・丁磊

段永平は2001年、米国の永住権を取得、2002年に移住した。以後、中国へ帰国するのは、年2~3回となる。米国でウォーレン・バフェットの本を読み、投資に目覚める。

最初の大型案件は、網易(ネットイース)だった。ちょうどITバブル崩壊直後であり、同社は苦境に陥っていた。株価は最高値の9.38ドルから0.64ドルにまで下落、上場廃止もうわさされた。段永平は、慎重に同社の財務と株式市況を見極め、創業者・丁磊のゲーム産業にかける想いを直接確認した。その上で投資を決断、網易第2位の大株主となった。

すると翌年、新作ゲーム『大活西遊2』が、起死回生の大ヒットを飛ばす。段永平の投じた200万ドルは、1億ドル以上に化けた。丁磊は2003年、中国最大の富豪となり、段永平も83位にランクされた。

■拼多多・黄崢

段永平は2006年、62万ドルで投資家ウォーレン・バフェットとのランチ権を落札する。このとき、網易・丁磊に紹介された若者を同伴した。1980年生まれの黄崢といい、段永平にとって、浙江大学の後輩にあたる。大学卒業後、ウィスコンシン大学マディソン校の大学院へ留学した。このとき彼は、丁磊の技術的な課題を解決している。その後、マイクロソフト、グーグルの双方からオファーを受けた。段永平は、当時まだ新興企業だったグーグルを薦めた。これは大正解だった。グーグルは2004年に上場し、急成長を続けていく。

黄崢は2006年帰国し、翌年グーグル(中国)を退社した。そしてネット通販運営代行会社や、ゲーム会社を起業する。その後2015年になり、共同購入型ネット通販「拼多多」をスタートさせた。段永平は、エンジェルラウンドで資金を提供した。「拼多多」は、設立後3年で米国ナスダック上場を果たす。地方の通販市場開拓に成功し、驚きの急成長を遂げた。

OPPO・陳明永とVIVO・瀋煒

中国のスマホ市場は、ファーウエイ、OPPO、VIVO、シャオミ(小米)、アップルの5社で覇を競っている。そのうちの2つが歩歩高系である。

OPPOの創業者・陳明永は、1969年生まれ、やはり浙江大学の出身だ。1992年、小覇王に入社、その後、段永平とともに、歩歩高へ移った。段永平は1999年、会社を互いに従属関係にない3つに分割した。陳明永はVCD、DVDを担当したがVCDの没落とともに、モデルチェンジを決意。2004年にOPPOを設立する。OPPOという名は、世界の主要言語で、発音しやすいことを考慮した。2008年、携帯電話市場へ進出する。

VIVOの創業者・瀋煒は、ネット辞書に生年、学歴は記されていない。スタートは小覇王の生産部従業員だった。1995年、段永平、陳名永とともに歩歩高に移る。1999年の分社化に伴い、通信系の責任者となった。2009年、VIVOブランドを全世界で登録した。2011年、スマホに進出する。

陳明永、瀋煒とも、段永平の小覇王時代からの直弟子だ。それぞれ1999年の歩歩高の分社化に伴い、部門の責任者となっている。彼らは最初から世界展開を見据え、見事に実現させた。

■目もくらむ大成功

段永平は、今も歩歩高の董事長の座にある。同社は教育系電子産品メーカーとして健在だ。

拼多多の2019年GMV(成約総額)は、1兆66億元(16兆円)、アクティブユーザー

数は5億8520億人に達した。今年も絶好調で、2020年第3四半期の売り上げは前年比89%増となった。株価は暴騰、黄崢の個人資産は、中国IT界の象徴、ダブル・マー(馬雲、馬化騰)を上回った。

OPPO、VIVOは、スマホ世界市場で5~6位、中国市場では2位争いをしている。網易もゲーム市場で、首位テンセントには後れをとっているものの、2019年には156億6000万元(2475億円)の利益を挙げている。

みな、目もくらむような大成功を収めた。段永平ほど、大実業家を育てた人はいない。その秘訣は何か。初期に見られた商品と宣伝のバランスはその1つだが、ますます注目が集まるだろう。伝説は巨大となる一方である。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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