Record China 2021年1月26日(火) 15時20分
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米ボイス・オブ・アメリカ中国語版サイトは25日、中国と韓国がまた「キムチ(漬物)」をめぐって仲たがいをしているとの記事を掲載した。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語版サイトは25日、中国と韓国がまた「キムチ(漬物)」をめぐって仲たがいをしているとの記事を掲載した。
記事は、「最近下火になってきた中韓による『キムチ論争』が再び戦火を巻き起こしている。中国のネットユーザーが、中国を侮辱するような投稿に“いいね”をつけた韓国のネット有名人に謝罪を求めたからだ」とし、「この騒動は中韓の間の長年にわたる文化紛争やナショナリズムを浮き彫りにした」と評した。
■キムチ論争の経緯
中国でも活動していた韓国のYouTuber、Hamzyさんは「中国人が韓国のキムチや韓国風のり巻きを中国のグルメとして奪った」などとするコメントに“いいね”を付けたことで、一部の中国ネットユーザーから「中国を侮辱した」などと非難された。中国のネットユーザーはこのほかにも、Hamzyさんが「中国の食文化を尊重しない書き込み」に何度も“いいね”を付けているとし、謝罪を求めた。
Hamzyさんは1月16日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で謝罪し、「中国の食文化を尊重している」と述べた。しかし、この謝罪が今度は韓国のファンの怒りを買い、「金のために国を捨てた」などと批判を受けることに。Hamzyさんはその後、YouTubeのライブ配信で韓国のファンに、「(謝罪は)中国のファンからの批判を受けて、芸能事務所から求められてしたこと」と説明。自身はキムチやのり巻きは当然、韓国文化だと思っているとした。
すると、この発言のスクリーンショットが中国のネット上で転載され、再び火に油を注ぐ結果になった。これを受け、中国の芸能事務所は1月17日にHamzyさんとの契約解除を発表した。Hamzyさんは20日にYouTubeチャンネルに長文を投稿、経緯を説明した上で中国のネットユーザーに不快感を与えたことを「礼儀」として謝罪した。一方で、「中国で活動するために『キムチは中国のものだ』と言わなければならないなら、中国では活動しない」と強調。同様に、「中国人も韓国で活動するために、中国の食べ物を『韓国の食べ物だ』と言う必要はない」とした。Hamzyさんの中国のSNSでのフォロワー数は激減しているが、YouTubeフォロワー数は急増したという。
■ナショナリズムをあおる中国の報道
VOAの記事は今回の論争は昨年の「中韓キムチ争い」の延長だと指摘。昨年11月24日に、国際標準化機構(ISO)で中国が主導して進めていた「泡菜」(パオツァイ。「韓国泡菜」でキムチを指す)の国際標準の最終案が批准されたことがきっかけだったと説明した。
また、この件について「中国メディアがナショナリズムをあおり立てた」とも指摘した。中国メディアは「キムチ宗主国の恥」などセンセーショナルな見出しを使い、「今回の国際標準制定は中国の泡菜(キムチ)産業が国際的な市場のベンチマークとなり、その技術規格が世界的に認められたことを意味する」と報じた。また、2017年には韓国のキムチ貿易赤字が記録的な4728万ドル(約52億円)に達したこと、キムチの輸入量が輸出量の10倍以上に達したこと、韓国のキムチ消費量のうち輸入が占める割合は約35%で、このうち99%が中国で生産されていることなどを挙げ、「キムチ宗主国の地位はすでに名ばかり」などと報じていた。
記事は、「中国の国際標準化機構のリストには、この文書は韓国式キムチには適用されないと明記されているが、中国メディアの主張は、中国の『泡菜』と韓国のキムチを意図的にあいまいにしているようだ。これにより、韓国人の不満を招き、キムチの標準をめぐる中韓ネットユーザーのマスコミの論争を引き起こしている」と分析した。
実際、韓国の農林畜産食品部は昨年11月30日、「韓国のキムチに関する食品規格は01年にすでに国際連合食糧農業機関(FAO)傘下の国際食品規格員会で国際標準となった」とし、「国際標準化機構(ISO)で制定される内容は『泡菜』に関する事項であり、これは四川省の塩漬け野菜のこと」と説明している。
■韓国教授、米紙にキムチ広告
一方で、民間の論争は過熱していった。記事は、「韓国のある有名な大学教授はこの争いに異なる方法で介入した」とし、韓国誠信女子大学の徐敬徳(ソ・ギョンドク)教授が1月18日に米紙ニューヨーク・タイムズの米国版と国際版にキムチを宣伝する広告を掲載したことを伝えた。同広告では、韓国のキムチ漬け文化が13年にユネスコの無形文化遺産に登録されたことや、キムチが数千年にわたり韓国を代表する発酵食品であることが紹介されている。
同教授はインタビューで、「キムチが韓国人のものであることを全世界に知らせるため」とその意図を説明。また、「中国の根拠のないキムチプロジェクトにいちいち応戦するよりも、世界の人たちにより正確な情報を伝えようと思った」とし、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSにも広告を掲載したほか、今後は韓国語、英語、中国語の宣伝動画も作ると明かした。
ただ、韓国外国語大学グローバル安全保障協力研究センター所長のファン・ジェホ教授はVOAの取材に対し、「個人的にも多くの韓国人にとっても、キムチをめぐる争いは重要な問題ではなく、中韓関係に影響を及ぼすものではない」「一部のネットユーザーはああだこうだと言っているが、大部分の庶民はそういう話をしない。何度かニュースに取り上げられているのを目にしたが、今はこの問題はもうない。両国関係を害する問題ではない」と話しているという。
■キムチ論争は無意味な「茶番劇」
また、中国の著名な学者である栄剣(ロン・ジエン)氏はVOAの取材に対し、「中韓の『キムチ論争』には多くのネットユーザーのナショナリズムが反映されているが、近年の中国の国力増大に伴い、中国におけるナショナリズムの台頭がより顕著になっている」と指摘した。
同氏は「ここ数年、(中国では)ナショナリズムがはびこっている。国力が高まり、豊かになったため、それが一層顕著に見える。このようなナショナリズムは全方位的に現れている。これは私たちの文化においていくつかの欠点、深いレベルのいくつかの問題を反映している。中国にとってはもちろん極端なことだが、中国と韓国の関係で見ても、ナショナリズム的な緊張、他者への対抗といった感情が双方にあると個人的には見ている」と話したという。
記事は、「中韓のネットユーザーはここ数年来、ネット上で互いに相手の文化的なパクリを非難し、攻撃してきたが、その中にはデマや民族主義的な感情が混じっている」と指摘。栄剣氏は、中国におけるナショナリズムの高まりはメディアの報道による影響もあるとし、「もし中国政府がこのようなナショナリズムの氾濫を抑制しなければ、中国のオープンさとイメージに深刻な影響を与えることになる」と指摘した。
米国在住の社会学者・周孝正(ジョウ・シアオジョン)氏は、「いわゆる『キムチ論争』は実際には一面的で偏狭なナショナリズム的感情を帯びた茶番劇である。双方のネットユーザーは、長い文化の発展の過程では『お前の中にはおれがある、おれの中にはお前がある』といった偏狭な論争は意味がないことを認識すべきだ」と指摘した。(翻訳・編集/北田)
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