Record China 2021年1月28日(木) 7時50分
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2021年1月26日、藤崎一郎元駐米大使が日本記者クラブで講演し、米バイデン政権の対中政策について「協力する分野は協力し、コペルニクス的転回(大転換)もある」と予想した。写真は講演する藤崎氏。
2021年1月26日、藤崎一郎元駐米大使(中曽根康弘世界平和研究所理事長)が日本記者クラブで講演し、「大統領が変われば米国は変わる」と指摘した。
さらに「冷戦の罠にはまらず 協力する分野は協力し、『是々非々』を貫く」「コペルニクス的転回(大転換)もありうる」と予想。「トランプ政権の4年間が米国の政治史上特異であったのであり、米国のためにならないとの判断が下った」と大統領選結果を分析。「伝統的米国外交への復帰し、振り子は戻る」と強調した。
藤崎氏はブッシュ共和党政権とオバマ民主党政権時代の2008年~12年に駐米大使を務め、副大統領時代のバイデン氏とも度々面談。豊富な米政界人脈があり、米国を熟知している。米政権がたどった道のりを振り返りながら、バイデン政権が直面する喫緊の課題、今後の外交政策などについて話した。
◆大統領が変われば米国は変わる
藤崎氏は歴史的に見れば米国は「大統領が変われば米国は変わる」と強調。その実例として、(1)民主党のジョンソン大統領は北ベトナムを爆撃し国連代表部に台湾を入れた、(2)共和党のニクソン大統領はベトナム和平をまとめ、電撃的に訪中した、(3)民主党のクリントン大統領は北朝鮮に対しKEDO(北朝鮮軽水炉)を供与した、(4)共和党のブッシュ大統領(親子)はKEDOを廃止し、イラク戦争を展開した、(5)民主党のオバマ政権はイラク戦争を否定、TPPを推進し(未加盟)、パリ協定、イラン核合意に参加、さらにキューバと国交を回復した、(6)共和党のトランプ大統領はオバマ政権の成果をほぼ全面否定した――などを列挙した。
その上でバイデン政権の対中政策について、トランプ時代とは異なる対中対応を展開するとの見方を具体的に明示。バイデン政権の外交政策についてオバマ時代に対中関与政策にかかわった幹部がバイデン政権の要職についていることを明らかにした。特にクリントン・オバマ政権下で国務次官補を務めたカート・キャンベル・インド太平洋調整官に着目、2011年の米中共同声明をまとめた実績があるという。
◆「朝海の悪夢」再現も
藤崎氏は、バイデン政権の対中国政策について「冷戦の罠にはまらず 協力する分野は協力し、一言でいえば『是々非々』を貫く。トランプ政権の一本調子の強硬策は大きく転換され、コペルニクス的転回もある」と予想した。さらに「先を見て常に可能性を考えなければならない」と強調。「朝海浩一郎氏がかつて見通したように、ある日、米中が手を結ぶ可能性もある」と述べた。1957年から60年代初頭にかけて駐米大使を務めた朝海浩一郎氏が大使時代、「日本があずかり知らぬ間に、頭越しに(対立中の)米中両国が手を握る状態が訪れるだろう」と予想。この発言が「朝海の悪夢」と話題を呼び、朝海大使退任後のニクソン政権において現実となった。
また「(対中政策は)トランプ路線をそのまま踏襲すると決め付けたり、豊富な外交・議会経験のあるバイデン氏を『スリーピング・バイデン』と揶揄(やゆ)してはならない。思い込みは排さなければならない」とも語り、深く歴史的な考察をせずに方向付けする一部メディアに苦言を呈した。また米国では「昨日(きのう)の政策が今日に続かない。今日の政策が明日に続かない」と指摘。米政策は急激に変貌することを明らかにした。
◆競争的に協調する
藤崎氏はバイデン政権の新しい高官が議会証言で対中政策について「競争的に協調する」(ブリンケン国務長官)、「アジア太平洋で平和的競争的な関係を追求する」(キャンベル・インド太平洋調整官)と語ったことに着目。一方でこれらバイデン政権の幹部は「ロシア、イラン、北朝鮮に対して言及した『脅威』という表現は使っていない」と分析した。
このほか藤崎氏はトランプ政権の施策を覆す事例として、▽北朝鮮=実務者交渉、人道援助▽韓国=在韓米軍駐留経費の劇的増加要求▽NATO(北大西洋条約機構)重視▽イラン=核合意復帰▽環境=パリ協定復帰▽国際機関=WHO(世界保健機構)と協力▽国連・人権理事会など復帰▽核不拡散=新START延長▽キューバ=交流強化に転換――などを列挙した。(八牧浩行)
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八牧浩行
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