<直言!日本と世界の未来>「女性差別発言」で浮上、「男社会」の深淵―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年2月7日(日) 5時40分

拡大

現在、衆議院議員の女性比率は9.9%。各国の議会でつくる「列国議会同盟」によると、一院制の議会か下院と比較し、今年8月時点で191カ国中166位と先進国で最下位だ。

国会予算委員会などでの論戦をテレビ中継で観ると、議場はほとんど男性で占められている。見慣れた光景だが、一様に黒づくめの出で立ちで同じパターン。マスクの白さだけが浮かび上がり、改めて女性議員の少なさに気が付く。

こうした中、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性をめぐる発言が波紋を投げかけている。日本オリンピック委員会(JOC)の会合の挨拶で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。女性は競争意識が強い。だれか一人が言うと自分も言わないといけないと思うのだろう」などと発言したという。

「女性は…」と一方的に決めつけることが、偏見・差別であることは、いうまでもない。活発に意見が出た結果、実りある結論が出れば、会議が長引いたとしても、結構なことである。

日本では、重要な会議の場での女性参加の割合が極めて低いのは確かである。

重要会議の最たる場は閣議だが菅義偉内閣の女性閣僚は、21人の全閣僚中わずか2人。幹事長、政調会長など自民党4役も60~80代の男性議員が占めている。

現在、衆議院議員の女性比率は9.9%。各国の議会でつくる「列国議会同盟」によると、一院制の議会か下院と比較し、今年8月時点で191カ国中166位と先進国で最下位だ。

候補者の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の議論も進んでいないようだ。クオータ制は約120カ国以上で導入されており、日本でも「政策決定に女性の視点は重要」だとして改善を求める声も多いと聞くが、否定的な考えが支配的という。

世界各国の男女平等の度合いを示した「ジェンダー・ギャップ指数」(2019年末発表=世界経済フォーラム)によると、日本は調査対象153カ国のうち、121位で過去最低という。106位の中国、108位の韓国の後塵を拝しており、いささかショッキングなランキングである。

この指数は女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析し、ランキング化している。第2次安倍政権2年目の2013年と比較すると、経済は104位から115位へ、政治は118位から144位へと順位を大きく下げた。特にリーダー登用の遅れが目立つ。経済分野の女性管理職比率と、政治分野の閣僚女性比率が特に順位を落とした要因となった。経済は男女の収入格差が大きい上に、専門職や技術職で女性が少ないことも影響したという。

女性が働きやすい環境づくりを企業に求める女性活躍推進法が16年4月に施行され、女性就業者は2019年までの7年間に約330万人増えた。ただ非正規も多く、コロナ禍では逆風にさらされている。

東京五輪の開幕まで、残り170日を切っている。新型コロナの感染状況やワクチン接種の進展もにらみながら、選手・観客の入国、競技の運営をめぐって検討が続き、世界各国も重大な関心をもって動向を注視している。

森喜朗氏は女性に関する問題発言を撤回し、「深く反省しており、不愉快な思いをされたみなさまにはおわびを申し上げたい」と陳謝した。スポーツの振興に多大な功績を残した元首相の失言は残念だった。五輪開催への機運や国際的な理解を損ないかねないが、信頼回復に向け、全力で取り組んでほしい。

<直言篇149>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携