高野悠介 2021年2月17日(水) 16時20分
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中国ネットは動画全盛時代である。投稿シェアアプリはもとより、EコマースからSNS、ニュースサイト、どこでも動画が張り付いている。
中国ネットは動画全盛時代である。投稿シェアアプリはもとより、EコマースからSNS、ニュースサイト、どこでも動画が張り付いている。しかも勢いは増す一方だ。その中心は「短視頻」と呼ばれるショートビデオアプリである。抖音(海外名・TikTok)と快手(海外名・Kwai)が2トップだ。2021年2月5日、快手は抖音に先がけ、香港市場へ株式を上場した。その後の競争を展望してみよう。
■ショートビデオ市場…ユーザー数8億超え
・この市場が本格化したのは2017年。以後、ユーザー数と市場規模は次のように拡大した。(データiiMedia)
2017年 2.42億人 55.8億元
2018年 5.01億人 116.9億元
2019年 6.27億人 828.2億元
2020年 7.22億人 1408.3億元
2021年 8.09億人 1944.5億元(予想)
もはや生活インフラといえるだろう。上位プラットフォームの利用率は、1位 抖音70.9%、2位 快手52.3%、3位 bilibili37.6%、4 位 西瓜視頻27.5%、5位 微視24.4%、6位 抖音火山版20.8%となっている。
欧米のようにほぼYouTube1本ではなく、多彩なプラットフォームが存在している。抖音(TikTok)、西瓜視頻、抖音火山版の3つは、いずれも北京字節跳動(バイトダンス)のプラットフォームだ。同社の力は、頭1つ抜けている。
■抖音と快手…2強の出自
・抖音と快手、メディアの比較論は花盛り
バイトダンスの設立は、2012年、創業事業はニュースサイト「今日頭条」だった。抖音(TikTok)の事業は2015年スタートしたが、それには前段の歴史がある。15秒のリップシンク(口ぱく)投稿動画のシェア手法を開発したMusical.lyの存在だ。2014年、陽陸育、朱駿ら中国人グループが立ち上げ、上海とサンフランシスコに拠点を置き、最初から世界展開を目指していた。
抖音はそのパクリだった。その後バイトダンスは2017年11年、多くの会社が手を挙げたMusical.lyの買収合戦に勝利する。以後、両アプリは抖音に統合されていき、翌2018年に大ブレイクを果たす。Musical.lyノウハウ吸収のたまものだろう。
快手…快手は2011年3月に北京で設立、当初の事業はGIF画像のシェアだった。2012年以降、ショート動画のシェアへ方向転換していった。抖音より短い、7秒の動画で投稿の門戸をより広く構えた。2015年、モバイル回線のコストダウンにより軌道に乗り始める。テンセントの創業者、馬化騰は、快手に「温度」を感じ、自ら巨額投資を決断した。今もテンセント系である。その後、積極的にライブコマースへ乗り出す。
■抖音と快手…2強のデータ
・アクティブユーザー数は伸び悩み
2020年のアクティブユーザー数(抖音/快手)は下記の通り。
1月 5.12億人 4.14億人
6月 4.97億人 3.84億人
12月 4.90億人 3.98億人
2019年までの急拡大から、頭打ちが鮮明となってきた。ユーザーの特徴は
抖音…ユーザーのロイヤリティー、SNS的な社交性は高い。一線級都市(北京・上海・深セン・広州)の比率高いものの、全国的に浸透している。ユーザーは低年齢化が進み、性別比率は均衡している。高所得ユーザー多く、商品購買力高い。
快手…ユーザー規模は劣るが、営業、運営力を強化し、ネット上の口コミ評価高い。一線級都市の他、中部、東部地区、地方都市に強みを持つ。抖音より男性比率高く、ユーザーの所得水準は若干低い。
■快手に焦り…差が拡がる
・抖音はスーパーアプリへ発進
快手は資金調達のため、IPOの実現を目指した。目論見書によれば、売り上げは順調に伸びているが、利益は出ていない。快手の急成長は、高コスト体質に依存していた。これは長期的な発展にとって、大きなリスク要因だ。
一方、抖音の動きも急だ。従来のビジネスモデルをブレイクスルーしようとしている。B2Bでは、オフィスツール「飛書」に続き、2020年12月にはドキュメントアプリ「飛書分檔」をリリースした。翌2021年1月には、モバイル決済「抖音支付」をスタート。SNS、オンライン教育、ゲームアプリにも進出している。もはや、動画系アプリは眼中にない。 アリババ、テンセントのスーパーアプリに戦いを挑もうというのだ。
抖音は別ステージへ羽ばたこうとしている。赤字体質を脱却できない快手が焦るのは、当然だろう。
■2021年の市場予測…Eコマースとの関係がカギ
・iiMediaアナリストによる2021年の展望
1.快手の高コストビジネスモデルは、資金調達で解消されるか。
2.抖音のスーパーアプリ化進展、快手と差を拡げるか。
3.ネット通販プラットフォームとの競争圧力さらに強まるか。
とくに3が焦点となるだろう。急発展中のライブコマースは、アリババの淘宝直播、快手、抖音、微信などの“混戦”となっている。2020年は、有名人をにわかライバーに仕立てた、華々しいライブ合戦が繰り広げられた。しかし、ショートビデオアプリには、商品力が不足している。そのため快手は、2020年6月、ネット通販大手・京東と提携した。今後も異種提携は進みそうだ
アナリストは、膨大な投稿を処理するショートビデオアプリは、必然的に大きくならざるを得ないとみている。つまりスーパーアプリを目指すしか途はないのだ。このままでは、抖音の優位は動かなくなってしまう。
快手のIPOは、初日の株価が200%近く上昇、上々のスタートを切った。ひとまず巨額の資金調達には成功した。スーパーアプリ化の第一歩を切ったのだろうか。2021年は抖音と快手を中心に、アリババ、テンセントを巻き込み、大激戦が展開されそうだ。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
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