人民網日本語版 2021年6月5日(土) 8時20分
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中国民政部がまとめた統計では、2018年に中国には一人暮らしの成人が7700万人以上いて、そのうちの20%が深セン、北京、広州、上海に分布する。写真は上海のマンション。
現在の部屋に住み始めてほぼ3年になる楊さんは、一人で暮らす感覚がますます気に入っているという。楊さんは一人暮らしの長所を数え上げ、「家中の明かりを付けっぱなしにしておけること、音楽を流しっぱなしにできること、寝たいときに寝られること……」などと話した。人民日報海外版が伝えた。
一人で暮らし、二つの目は眠りたい時に閉じ、三食ともデリバリーで、四季を通じて淘宝(タオバオ)で買い物……これがおそらく一人暮らしの人の生活の様子だろう。
中国民政部がまとめた統計では、2018年に中国には一人暮らしの成人が7700万人以上いて、そのうちの20%が深セン、北京、広州、上海に分布する。この数字は今年、9200万人になる見込みで、その大多数を若者が占める。
多くのSNSやニュースサイトには、「一人暮らしのアドバイス」などの話題がよく登場し、そこではネットユーザーが自分の一人暮らしの経験を他のユーザーと共有している。一人暮らしの若者数人に取材したところ、彼らの暮らしの様子を間近で知ることができた。
■一人暮らしは快適?
前出の楊さんは2017年に大学を卒業して、北京の事業機関に就職した。19年に2年間住んだ寮を出て、一人暮らしを始めた。
現在の住まいは50平方メートル余りあり、完全の自分好みのインテリアにすることができ、共同の台所やトイレで誰かと順番を争うことはない。「一人暮らしは本当にいい」という。
一部のSNSでは、ネットユーザーたちが一人暮らしの体験を次々に発信して共有する。長沙で一人暮らしをして3年半になる「@PopMix」さんは、「週末は自然に目が覚めるまで寝ていられるし、それから外に出てスーパーをぶらぶらして買い物し、帰り道についでに花を摘み、部屋はきれいに掃除する。午後はコーヒーをいれて、好きなテレビドラマやバラエティー番組を選び、ソファーに陣取ってドラマを見ていると、隣に猫が寝転がっている。こんな具合で平凡な1日かもしれないけれど、自分はとても満足している」と発信した。「杏仁」さんは、「1人で自分の部屋で火鍋を食べ、映画を見るのは、非常に快適だ」と述べた。
一人暮らしの人が1000人いれば、暮らしに対して1000通りの感じ方がある。ただ全体として言えるのは、気まま、独立、気楽が、若者の一人暮らしを選択する理由ということだ。
とはいえ大勢の若者の一人暮らしは受け身の選択であり、やむを得なかったからというケースもままある。北京航空航天大学マルクス主義学院の張恒力(ジャン・ヘンリー)教授はかつて発表した論考の中で、「荷物を背負って故郷に別れを告げ、都市で夢を追いかける若者は、『忙しい』や『一生懸命』が以前から彼らの代名詞になっている。朝は目覚まし時計と1分1秒を争うようにして始まり、毎日残業したり徹夜したりして、疲れ切った状態にあるのが、多くの若者のリアルな姿だ」とした。
仕事が忙しいので、多くの若者が自分一人でいることを選ぶようになる。若手作家の馬歓(マー・ホワン)さんは、「北京・上海・広州・深センなどの大都市では、若者は仕事の圧力が大きく、テンポが速く、友達さえ多くない。仕事の後や週末には一人でいたいとより強く願う」と述べた。
■オフラインでは一人、オンラインではみんなとにぎやかに
ますます多くの若者が一人暮らしを選ぶのはなぜだろうか。
自由を愛する、独立した空間が欲しいなどは、一人暮らしを選ぶ積極的な理由で、主体的な一人暮らしと言えるだろう。一方、受け身の一人暮らしをする人の圧倒的多数は「社交恐怖」が原因だと言える。
王さんもそうした傾向があるという。友達を誘って集まりたいとしているが、その日が迫ると、後ろ向きな気持ちになる。「一番最初に感じるのは面倒ということ、そんなにたくさんの人に会いたいと思わないし、何かあれば微信(We Chat)でやりとりすればいい。集まりに参加しても、自分はとても静かにしている。知らない人のいる集まりには抵抗を感じて、うちにいた方がいい」という。
以前の統計では、一人暮らしの若者の「オフラインでは一人、オンラインではみんなとわいわいやるのが常態」という様子が明らかになった。SNSアプリが高度化・バージョンアップすると、それによってもたらされたのは一部の人の「社交レベルの低下」だ。微信で話せることであれば電話をかけない。文字を打てるなら音声を発信しない。集まりではいつも黙々と食べ続ける。
北京大学の靳戈(ジン・ゴー)研究員の分析では、「社交不安がある人は、人とつながりたいとは思うが、結局つながるのが怖くて、一人でいることを選択する。人とつながるのが怖くて後ろ向きになるので、一人でいる状態を長く続けることになり、状況を改善するために努力しようと思わなくなり、さらに後退する可能性がある」と分析した。
インターネット、特にモバイルインターネットが誕生・発展すると、働き方が変わった。仕事の時間と空間が無限に広がり、客観的に見て若者は自分だけの空間を確保したいとより強く願うようになった。前出の張氏は、「一人暮らしの若者にとって、退社とは仕事の終わりを意味しない。ハイテクとSNSの更新・バージョンアップで、生活と仕事との切れ目のない状態がさらに激化した」と説明した。
■社会環境の変化が若者の一人暮らしの選択にも影響を与えている。
これまで、中国人は家族で集まって生活するのを好み、「大家族」をよしとする伝統的な観念が根強かった。しかし社会の発展に伴って、「大家族」の観念はその土台が徐々に失われた。靳氏は、「計画出産政策により中国の家族構成は『3人家族』が現れ、都市化のプロセスで建設された各戸が独立したスタイルのマンションが、『大家族』がそのよりどころとしてきた空間的基礎を消滅させた。また、現代の若者は『共働き家庭』で育ち、家庭での活動時間はかつてより少ない。空間と時間と2つの要因により、『大家族』の生活シーンはますます過去のものになり、一人暮らしが若者の期待するライフスタイルになった」と分析した。
生活の圧力と仕事の圧力が増大し、若者はますます一人暮らしを選択するようになった。取材でわかったのは、回答者が申し合わせたように、仕事と生活のプレッシャーが増大したので、低欲望の特徴がみられるようになった、と答えたことだ。日本の経営コンサルタントの大前研一氏は著書「低欲望社会『大志なき時代』の新・国富論」の中で次のような情景を描いた。社会の競争圧力がますます大きくなると、ますます多くの若者がこのために向上したい、人とつながりたい、恋愛して結婚したいという欲望を失い、自分の小さな部屋に閉じこもって気ままな生活を送りたいと願うようになる」。
靳氏は、「大都市では結婚・出産にコストがかかり、『原子化』(砕片化)された仕事の形態、今や普通になってしまった『966』(毎日朝9時から夕方6時まで週6日間働く)の勤務体系が、若者から人とつながる時間を奪い、若者たちはますます異性と知り合い、異性を理解する機会が減り、晩婚や高齢出産がごく当たり前になり、客観的には若者の一人暮らし現象を突出させている」と述べた。(提供/人民網日本語版・編集/KS)
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