Record China 2021年6月10日(木) 19時0分
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中国でここ数日、日本に関する書籍を出版した中国人作家の蒋方舟氏が一部のネットユーザーらから非難されている。写真は蒋方舟氏。
中国でここ数日、日本に関する書籍を出版した中国人作家の蒋方舟(ジアン・ファンジョウ)氏が一部のネットユーザーらから非難されている。この問題は中国だけでなく、独ドイチェ・ヴェレが「蒋方舟事件」として取り上げるなど海外のメディアも報じているが、この現象は中国当局すら歯止めをかけられない極端な愛国主義の出現を意味するとの見方も出ている。
事の発端は、蒋氏が国際交流プログラムで日本に招かれ、帰国後に「東京一年」という日本を紹介する書籍を出版していたことに、愛国心の強いネットユーザーが「日本から金を受け取って日本を宣伝した」とかみついたこと。
蒋氏は7日に中国版ツイッター・微博(ウェイボー)を更新。事実関係は認めたものの、「この交流はオープンで正常な文化交流であり、日中友好交流の推進が趣旨」と説明し、書籍「東京一年」の内容についても「記した内容のほとんどは私個人の心理と文学についてだ」とした。しかし、蒋氏に対して厳しいコメントが相次ぎ、またそうしたコメントは他のユーザーから多くの賛同を獲得した。
翌8日には、蒋氏が過去に出演したNHKの番組での発言がネットユーザーによって蒸し返されやり玉に。昨年7月23日にNHKで放送された番組の中で、司会者から「中国のように強制力の高い措置を取ることが有利という意見もあるが……」と話を向けられた際に、蒋氏は「非常時の一時的な結果だけで判断するのはとても危険な考え方」「(コロナのような)非常事態で(制度について)どれが良くてどれが悪いかを判断するというのは危険」と語ったが、これに対して一部のネットユーザーから「中国人民は完璧な答えを出したのに、彼女は無理やり中国の体制に問題があるという視点を探そうとしている」などと批判の声が上がった。
これを受け、蒋氏は中国メディアの取材に対し、「(NHKの番組では)発言が切り取られた」「インタビューは40分から1時間ほど行われ、コロナ流行期間中の生活や創作、故郷への寄付、中国の防疫過程での効果的なコントロールなどについて話したが、番組が使用したのはわずかな部分だけだった」と釈明。8日に再び微博を更新し、「日本はこれまで第2次世界大戦で犯した罪を謝罪していない」と“愛国”を強調した上で、改めて日本の交流事業について説明した。
この騒動には著名人も論戦に参加した。中国官製メディア「環球時報」の胡錫進(フー・シージン)編集長は「日本のお金で日本を旅した人がネット上で攻撃されていることについてどう考えるか」と題する文章を発表。「ある国が他国の人物を自国での旅行、学習に招待するというのは国際交流における一般的な方法であり、中国人が西側諸国の出資する交流活動に参加したからといって非難したり、イデオロギー的なレッテルを張ったりしてはならない」と主張した。
胡氏は「ネットユーザーの怒りを買ったのは日本側の招待を受けたからではなく、招待を受けた人物が訪日前と訪日後に発表した創作物について、日本側の事業の狙いにあまりにも合致しすぎていることなのだろう」とする一方、「彼ら自身が個人として自らの行動を省みるべきであって、決して国として対外開放の扉を閉ざすべきではない」とし、冷静な対応を求めた。
ところが、対外的に強硬な物言いで知られる胡氏の発言に不満を覚えたのか、胡氏の投稿に対して「皇軍の肩を持つのか」「二度と(日本の)汚名をそそぐことをするな」など極端な愛国主義者から批判の声が上がった。胡氏はこれに対し、「私は『偽愛国』と非難された。非難した者は大体が同じグループ、私や環球時報の愛国的な立場と一致している。しかし、彼らは私よりも感情的に激しい。私は彼らを理解している。私と彼らでは確かに、いくつかのことに対する認識に隔たりがある。しかし同時に、愛国者陣営はこのような差を受け入れることができるはずである。もし彼らが私のような人物と共闘したくないと思っているなら、彼らは愛国の概念を縮小しすぎてしまっている」と訴えた。
仏国際放送局RFI中国語版サイトの記事はこれについて、「(胡氏は)自分よりも愛国主義的なものが存在するとは思わなかったかもしれない」「長年の(強硬な発言の)結果、彼よりも激しいグループを作り出し、自分までもが愛国者陣営から排除されそうになるなど想像できただろうか」と伝えている。
また、中国外交部の汪文斌(ワン・ウェンビン)報道官は9日の定例会見で蒋氏の問題に言及し、「国と国との間でさまざまな形で人的相互訪問・交流を展開する方法は、国際関係の実践の中で普遍的に存在している」「中日は重要な隣国として、人員の往来は緊密に行われている。国交正常化以来半世紀近く、双方の政府による支持の元で推進された人的交流は枚挙にいとまがなく、両国関係の発展にポジティブな貢献をしている。われわれは中日間の持続的で健全で安定した人的交流を通じて理解を増進し、信頼を築いて友情を深めるという目標の実現を望んでいる」と述べた。
中国外交部が「火消し」を図った形で、ネット上では「これが正しい答え」「正常な交流は問題ない」「騒動が好きでたまらない連中は横っ面をひっぱたかれた」といった声も上がっているが、一部の愛国主義的なユーザーからはなおも「健全な交流とは都合の良い言葉だ」「“不健全な交流”はたたくべきだということだな」「日本側の動機は非常に不純」「日本は常に悪どくて善意などない」など、厳しい声が相次いでいる。(翻訳・編集/北田)
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