亜洲週刊 2021年10月9日(土) 19時30分
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香港誌「亜洲週刊」が、「岸田新政権による対中外交、政治・経済にジレンマ」とする毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。写真は4日に発足した岸田新内閣の顔ぶれ。首相官邸FBより。
香港誌「亜洲週刊」はこのほど、「岸田新政権による対中外交、政治・経済にジレンマ」とする毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。「亜洲週刊」は1987年の創刊で、中華圏をはじめとする世界各地の時事問題を幅広く取り扱っている。大きな関心を集める記事も、これまで数多く発表してきた。
記事は冒頭部分で、岸田首相の対中外交には、「政治ではさらに強硬」、「経済ではさらに親密」というジレンマがあり、「政権は政治と経済(の対中姿勢の違い)で引き裂かれるジレンマに直面することになる」と主張した。
記事は次に、日本で「経済面の内閣」などとも例えられる経団連が、中国との密接な経済関係を維持することを希望したと紹介。新型コロナウイルス感染症に見舞われた2020年にも日中間の貿易は成長し、日本にとって中国は国別で最大の輸出先になり、輸入元としても中国が世界最大の状態が続いていると紹介。両国の貿易総額は32兆円以上に達したとして、「双方の産業チェーンは絡み合い、切り離すことは不能」と論じた。
記事は岸田政権の対中政策を予想する上で、自民党総裁選の「構図」について言及した。まず、自民党の3A(安倍晋三、麻生太郎、甘利明の3氏)は、親中的と見なされている二階俊博氏を「有効的にたたきつぶして影響力を弱める」方策を採用し、強硬的保守である女性の高市早苗氏を前面に出した上で水面下では岸田氏を支持する戦略を採用したと分析。3Aは同戦略により、「小石河(小泉進次郎、石破茂、河野太郎の3氏)」との戦いも制し、「河野を河に落とし、岸田を岸に引き上げる」結果を実現したと論評した。
記事は、岸田氏は総裁選中に、以前の「上品で節度ある中道的な政治の風格」を一転させ、対中関係で強硬な言葉を多く口にするようになったと紹介。その理由とはまさに、自民党総裁選で「自民党3A」の保守勢力の後押しがあったからと分析した。記事はさらに、岸田氏について「自民党の保守派リーダーの代弁人になった」と評した。
記事は、岸田政権の外交や安全保障の政策について、背後に「3A」が存在という構造により、中国に対して強硬姿勢を取ることになり、日本で右翼保守勢力が急速に台頭している情勢もあって、岸田政権は尖閣諸島や台湾海峡問題、人権問題、軍事面の安全保障問題で、場合によっては経済安全保障問題などでも、中国とさらに鮮明に対抗、さらには衝突することになると主張した。
記事は、岸田首相や甘利氏が2020年6月の時点で自民党内に発足させた「新国際秩序創造戦略本部」にも言及。同本部の主要な活動は、「中国への半導体などの先端技術の流失阻止」、「核心的産業チェーンの日本本土化」、「ファーウェイの5G技術の日本進出阻止」などを行政や立法を通じて実現することであり、岸田新内閣では経済安保担当大臣が設けられることになったと紹介した。
記事は、岸田首相は就任翌日の5日午前には米国のバイデン大統領と電話会談を行い、日米豪印戦略対話(Quad)などを含め「自由で開放的なインド・太平洋」を実現するための日米同盟の強化で一致したことや、尖閣諸島は日米安保条約5条の対象になることをバイデン大統領と改めて確認したと紹介。
同日午前にはオーストラリアのモリソン首相ともオンライン会談を行い、「自由で開放的なインド・太平洋」の実現で同意し、米国とインドを含めた4カ国の協力を強化することや、中国が東シナ海や南シナ海で現状を一方的に変更しようとしていることに、日豪が共に強く反対するなどを表明したと紹介した。
記事は、特に警戒せねばならない問題として、「岸田新政権は台湾問題に関連して、中国と直接衝突する危険がある」と指摘。岸田首相が、「台湾は民主主義が専制に対抗する最前線」、「日本は台湾海峡における衝突に対して、転ばぬ先の杖となる対応を取り続けねばならない」といった発言をしていると論じ、日本は台湾有事を念頭に、盟友である米国との連携を強化するとの見方を示した。
なお岸田首相は8日、就任後初めて中国の習近平国家主席と電話会談を行った。日本では、岸田首相が中国公船が尖閣諸島周辺での挑発行為や、香港・新疆ウイグル自治区の人権問題について懸念を伝えたと報じられた。一方、中国メディアは、岸田首相が「来年の日中国交正常化50周年を契機として、新時代の要請に見合う建設的で安定した日中関係の構築に向けて共に努力することを望んでいる」と述べたなどと紹介し、「新しく発足した岸田内閣の政権下で、日中関係は幸先の良いスタートを切った。今後も双方が向き合って歩み寄ることを続け、両国関係が正しい軌道に沿って健全かつ安定的に発展していくことを願う」といった論調で同会談を紹介した。(翻訳・編集/如月隼人)
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