インド政府、スタートアップ振興に総力=ユニコーンが急拡大、米中に次ぐ―ポスト・コロナ睨む

中村悦二    2022年2月12日(土) 10時40分

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インド政府がスタートアップ振興に一段と力を入れ始めている。写真はインドのムンバイ。

インド政府がスタートアップ振興に一段と力を入れ始めている。インドは、企業評価額が10億ドル(1150億円)以上で設立10年内の非上場企業であるユニコーン数ではすでに、米国、中国に次ぐ。政府としてもスタートアップはポスト・コロナを睨んでの経済成長を加速する上で「バックボーンになりつつある」(モディ首相」)と見ている。同首相は、先月開いたスタートアップのオンライン・イベントで、創業者のピッチ(プレゼンテーション)に熱心に聞き入り、「National Startup Day」の創設を宣言。2月1日発表の来年度予算案にスタートアップ支援策を盛り込んだ。米国などのファンドは、中国政府のハイテク大手に対する規制を警戒する一方、インドのスタートアップへの投資意欲は今のところ衰えていない。

◆「スタートアップ・インディア・イニシアティブ」推進

各国でのスタートアップの勢いを示す指標として注目されるのがユニコーン数。中国の民間シンクタンク胡潤研究院(HURUN Research Institute)が2021年末に発表した「HURUNグローバル・ユニコーン・インデックス」によると、世界のユニコーン総数は、前年からほぼ倍増の1058社。国別のユニコーン数では米国が487社でトップ。次が中国の301社。インドが54社で、英国(39社)を抜き3位に上がった。以下、5位ドイツ(26社)、6位フランス(19社)、7位イスラエル(17社)、8位カナダ(15社)、9位ブラジル(12社)、10位韓国(10社)。ちなみに、日本は13位の7社に過ぎない。1058社の時価総額は3兆7000億ドルとしている。

ユニコーンはIPO(新規株式上場)を果たすとユニコーンから除外される。このため、調査時点などによって数が異なる。米CBインサイツ発表の2022年2月時点の世界のユニコーン・リポートでは、総数は998社。米国企業が500社を上回り、中国が2位の167社、インドが3位の59社、英国は4位の37社となっている。988社の時価総額は3兆2780億ドル。時価総額トップは動画投稿アプリ「TikTok」を運営する中国のバイトダンス(北京節跳動科技)の1400億ドル。同1000億ドルを超えるヘクトコーンはイーロン・マスク氏が率いる米国の航空宇宙メーカー、スペースX(1003億ドル)の2社だけだ。

インド企業では、オンライン動画学習支援のバイジュース(BYJU's)が13位に210億ドルで登場している。インド人に関しては、米国などでスタートアップを設立しているケースが国内と同数程度あるといわれ、中国人設立の海外ユニコーンも多いようだ。

インド政府は2016年1月16日、商工省産業・国内取引促進局を窓口に「スタートアップ・インディア・イニシアティブ」をスタートした。特許申請の迅速処理など法的規制の緩和、一定の条件下での所得税・資本利得税の免除、公的資金の投入、産学連携などスタートアップのエコシステムの利害関係者のネットワーク化といったスタートアップ支援策を打ち出してきている。その成果が、上記のユニコーン数にも反映されていようが、国内のスタートアップ数は現在6万社を超えている(タイムズ・オブ・インディア2022年1月9日電子版)。今年は「スタートアップ・インディア・イノベーション週間」と銘打ち、1月10~16日にオンライン・イベントを開催。その最終日に、モディ首相が1月16日を「National  Startup Day」とすることを宣言。約150人の参加者(招待ベース)から賛辞が寄せられた。

◆「デジタル大学」を設立、「デジタル通貨」導入計画も

インド政府は、2月1日発表の来年度(2022年4月~2023年3月)予算案の中に、(1)スタートアップの資金調達増時での規制見直しへ専門家委員会の設立(2)優遇税制適用が今年度末までに設立のスタートアップだったのを1年間延長―といった支援策を盛り込んだ。また、国防省のドローン調達でスタートアップ活用、若者のスキルアップに向けた「デジタル大学」設立も打ち出した。デジタル通貨の導入計画は、インドのユニコーンにはフィンテック企業が多いだけに順風となりそうだ。

■筆者プロフィール:中村悦二

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)。

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