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<日本・インドネシア文化交流>「桜よ~大好きな日本へ~」劇団en塾の縁

大村多聞    2022年3月2日(水) 9時50分

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インドネシアの学生劇団「en塾」の日本語ミュージカル東京公演を2017年3月桜の花咲く江戸川区文化センターで観劇した。写真はジャカルタ。

インドネシアの学生劇団「en塾」の日本語ミュージカル東京公演を2017年3月桜の花咲く江戸川区文化センターで観劇した。「en塾」は「縁」あってインドネシアの異なる大学から集まった日本語を学ぶ学生たちの劇団だ。2009年から2021年の12年間の活動で終了しているが、日本とインドネシアの文化交流・両国の連帯に多くのものを残した。

◆「en塾」学生リーダーの挨拶

演劇当日圧倒的な歌唱力と日本大好きという学生たちの熱演に思わず涙が出た。さらに感動したのは公演終了後の全出演者を代表しての女性リーダーの挨拶だった。「日本とはつらい過去もありました。でも日本がインドネシアにしてくれた多くの良いことを私達はみな知っています」。

学生たちは毎土曜午後稽古を重ね衣装・舞台セットも自ら制作し、年一度ジャカルタ講演を実施してきた。現地在住の甲斐切清子(かいきりすがこ)さんが作詞し学生が作曲した歌「桜よ~大好きな日本へ~」の歌詞は一部省略するが次の通りである。

「桜が心に残るのは 人肌に似ている 桃色のせいだと みんな知っている 桜の命が愛しいのは わずかで散り落ちる はかなさのせいだと みんな知っている 桜を誰かと見たいのは この花のやさしさを 分かち合いたいせいだと みんな知っている~何かを失う寂しさ あきらめる悲しさ でも春は来る来年も その先もずっと先も~桜よ咲き誇れ 日本の真ん中で咲き誇れ」。

「桜よ」が完成し現地録音の当日2011年3月11日東日本大震災のニュースが流れた。「en塾」はこの歌を「日本を応援する歌」とした。多くの企業や個人の支援を得て2012年日本公演(東京・熊本)が実現。観客からのアンケート「感動で涙が止まりませんでした。en塾という素晴らしい桜を見ることができました」に励まされ、2015年から「桜前線プロジェクト」を開始、日本公演は桜の時期に合わせ順次九州から東北まで北上を予定した。新型コロナで2020年からはオンライン活動のみとなり2021年の映像作品「12年目の大団円」をもって活動終了に至った。

途中甲斐切さんは学生たちに彼らの国の歌も歌ってもらいたいと思い始めた。そこでインドネシアをたたえる歌「Merah Putih(赤と白:インドネシア国旗を指す)」を作詞・作曲したゴンブローの許可を得て「en塾」が日本語歌詞をつけ、インドネシア語と日本語を交互に歌えるようにした。

「en塾」は様々なイベントで「桜よ」と「Merah Putih」を交互に歌い多くのインドネシア人に喜ばれてきた。

◆インドネシア高校歴史教科書

インドネシア高校歴史教科書の第7章「インドネシア独立宣言と主権確立への努力」には日本の「前田精海軍少将」の写真が大きく掲載されている。独立後初代大統領となったスカルノと同志たちが日本の敗戦直後1945年8月16日一番安全とみなされた前田少将邸の食堂で夜を徹してインドネシア独立宣言文を起草したいきさつが詳細に記述されている。「前田少将は彼らの安全を図る準備をして自身は当日その「歴史的出来事」が進んでいる間、寝室へ退いていた」と詳しく場面描写もしている。その前年1944年9月7日に日本がインドネシアに独立の約束を与えていた経緯も記述されている。

教科書第6章「日本占領とインドネシア独立準備」では日本の幕末・明治維新・日露戦争・その後の帝国主義化・インドネシア占領に至るまでマイナス面を含め多くの事実を詳述している。教科書は当時の雑誌「新ジャワ」に掲載された日本国旗を振るインドネシア若者たちの写真を転載し注釈に「日本の存在は多くの点で350年間(オランダの)植民地支配下にあったインドネシア人民に新しい希望と楽観主義をもたらした」としている。

「en塾」のリーダーが挨拶で「私達はみな日本が良いことをしてくれたことを知っています」と言っていたのはインドネシアが国として歴史を客観的に公正に記述し高校生に教えていたからだ。

◆大国インドネシアとの交流

現在インドネシアは日本の5倍の面積と2億7千万人の人口を抱えGDPはASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国の4割を占める地域大国である。将来GDPで日本を追い抜くことも予測され世界の大国になろうとしている。日本とインドネシアの間では安保・海洋協力、経済協力を含め官民の交流が幅広く行われているが、日本政府は「歴史的関係とその強化」と「若年層へのアピール」も重点目標として掲げている。

大平正芳首相の環太平洋連帯構想「緩やかな多角的連帯」を文化面で実践し「en塾」を長年指導された民間人の甲斐切清子さんと多くの関係者支援者に敬意を表したい。

■筆者プロフィール:大村多聞

京都大学法学部卒、三菱商事法務部長、帝京大学法学部教授、ケネディクス(株)監査役等を歴任。総合商社法務部門一筋の経歴より「国際法務問題」の経験・知見が豊富。2021年に(株)ぎょうせいから出版された「第3版 契約書式実務全書1~3巻」を編集・執筆した。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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