中国新聞社 2022年2月25日(金) 22時50分
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北京冬季五輪は新型コロナウイルス感染症、地政学上の対立、気候変動の深刻化に世界が直面している時期に開催された。そんな時期にスポーツの祭典を開催する意義は何だったのだろうか。
北京冬季五輪は新型コロナウイルス感染症、地政学上の対立、気候変動の深刻化などに世界が苦しんでいる時期に開催された。そんな時期にスポーツの祭典を開催する意義は何だったのだろうか。中国政府・発展研究センターの張来明副主任はこのほど中国メディアである中国新聞社の取材に応じて、北京冬季五輪の開催の意義などを説明した。以下は張副主任の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
■暗い世界にあって、人々は五輪のために「団結」した
2008年の北京夏季五輪開催の時も、世界は金融危機により大混乱していた。それから14年後、人類はさらに厳しい試練に直面していた。
新型コロナウイルスは全世界に広がっていた。4億人以上が感染し、600万人近くが命を落とした。国によるワクチンの接種の格差を解消することはてきておらず、対策についての国々の歩調はそろっていない。ポピュリズムが横行し、世界経済は後退している。深刻な気候変動問題では、責任のなすり合いが行われている。緊張が高まる地域は増えこそすれ減りはせず、平和が続く見通しは暗澹(あんたん)たる状態だ。
しかし各方面が努力したことにより、北京冬季五輪は予定通りに開幕した。世界91の国と地域からの選手2892人、さらに多くの監督・コーチや技術要員、また医療チームやメディア関係者らが、この大会に共に参加した。北京冬季五輪は8カ月前の東京夏季五輪と同様に、スポーツを通じて人類が立場を乗り越えて団結し、共に困難を乗り越える可能性を示す、歴史的に特に価値ある大会になった。
■求められるのは「勝利は謙虚に受け止め、敗北は優雅に受け入れる」姿勢
米紙ニューヨーク・タイムズは北京冬季五輪の開催について「どのような背景があっても、五輪は常に共通する人間性とスポーツの盛大な祝祭だ。分極化した世界にあって、世界中からこれほど多くの人が集まる機会はめったにない」と論評した。
もしかしたら、世界が現在のような苦境にあるからこそなおさら、人々に希望を取り戻させ、人類が共に目指す理想を示すために、五輪を成功させねばならなかったのかもしれない。
そして北京冬季五輪はデジタル技術に支えられ、五輪史の中でも「目撃者」が最も多い大会になった。世界の人々がテレビやネットを通じて、世界のどこにいても、「同じ時」を共有することになった。国連のグレーテス事務総長は、「われわれは実に多くのポピュリズム、人種差別主義、外国人を憎悪する精神、反ユダヤ主義、反イスラム教の状況を目にしている。しかしここに来て、文化や国、人種、宗教が異なる選手が共にいる(中略)これは寛容と相互尊重の情報発信だ」と述べた。
五輪では、人の謙虚さも発揮される。例えば「勝利を謙虚に受け止め、敗北を優雅に受け入れる」といった精神だ。スキー・フリースタイルの女子エアリアルに出場した米国のコールドウェル選手は最後の跳躍で失敗してメダルを逃した。しかし彼女は五輪出場4回目で初めて優勝した中国の徐夢桃選手を抱きしめて、「私はあなたを誇りに思う」と言った。
■スポーツは「銃を取り除いた戦争」にすぎないのか
スノーボード男子の蘇翊鳴選手は、男子スロープスタイル決勝での演技に与えられた得点が不公平で、それが優勝を逸した原因になったとする、判定に対する批判が出た。しかし蘇翊鳴選手と日本人の佐藤康弘コーチは不服申し立てを取りやめて、批判を続ける人々に向けて、「限られた時間内に限られた情報で点数を決定することは極めて困難」であり、得点のばらつきも「試合の一部」と説明し、金メダルを獲得したカナダのパロット・マックス選手を祝福するよう呼び掛けた。
「スポーツは銃を取り除いた戦争だ」という人もいるが、それは違う。五輪の表彰台に立った選手は、互いに抱き合い祝福しあう。憎しみや貧困などによってもたらされ、憎しみや貧困を後まで残す戦争とは本質的に違う。北京冬季五輪に際して、従来からの五輪モットーの「より速く、より高く、より強く」に「より団結」が追加された。さまざまな厄災に見舞われている世界において、五輪を通じて団結を呼び掛けることは、実に意義あることだ。
現在の世界は大きな試練のさなかにある。しかし人類は過去に何度も、危機的状況に直面してきた。世界大戦が勃発したこともある。われわれは災難に満ちた過去の歴史を学ぶ際、「なぜ、回避できなかったのか」と先人に問い掛けざるをえない。
ならば今日、われわれは先入観や打算を捨てて、人類共通の未来のために奮闘するのか。それとも己れの一時の損得だけを求めて振る舞うのか。われわれの子孫は彼らの言葉をもって、現在のわれわれがどのような選択をしたのか語ることになる。(構成 / 如月隼人)
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