19日付の上海メディアの上観新聞の記事によると、18日午後から同時点までに、多くの上海人がネット上で、一人の男性の写真をシェアした。周囲の人よりかなり長身の男性が屋外でマスクを着用して列に並んでいる。男性は、髪をポニーテール式にまとめており、服装はかなりラフだ。手には赤ワインが入ったグラスがある。

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■「予定と違うなあ。ま、いっか」と思った

写真の男性は上海市内のマンションに住む梁紅竜さんと分かった。現在は45歳でテニスのコーチの仕事をしている。教え子にはプロの選手もいる。梁さんの住むマンションは、新型コロナウイルス感染者が発生したため、敷地全体が封鎖されていた。住人全員が1日に1回、PCR検査を受けねばならない。梁さんが住むマンションには複数の棟があり計4000－5000人の住人がいる。そのためマンションの棟ごとに検査を受ける時間の予告があり、時間になるとボランティアスタッフが各世帯を回って検査場所に来るように促す。

梁さんがいる棟の住人の18日の検査開始は午後2時半のはずだった。梁さんはそれより早い時間帯にペットの犬を散歩に連れて行った。そして家に戻って昼食を食べ始めた。梁さんはワイン好きだ。家にはワインを70－80本常備しており、昼食の時にも飲む。

すると、ボランティアスタッフがやって来て、並んでいる人が少なくなったからすぐに検査を受けてほしいと求めた。まだ午後2時ごろで、予定より30分ほど早かった。梁さんは食事を終えていなかったが応じることにした。その時に、ワインを飲みかけのグラスが目に入った。梁さんは、検査のための行列に並びながら飲んでしまおうと思った。

■分かる人は少ないと思ったけど「バレバレ」だった

列にならんだ梁さんは、ときおりマスクをずらしてワインを口にした。ワインを飲む梁さんを見て笑うマンション住人もいた。梁さんはマスク越しに笑顔で応対した。並び始めてから検査終了まで10分程度しかかからなかった。写真を撮られていたことには気づかなかった。

自宅に戻ってしばらくすると、テニスの生徒の母親がワイングラスを手にして並ぶ梁さんの姿を送って来て、梁さんではないかと言った。しばらくすると、SNS仲間が次々に写真を送ってきて梁さんかどうかを尋ねた。

梁さんは最初、マスクをしているから自分と分かる人は少ないと思っていた。しかし梁さんのワイン好きは周囲の人に知れ渡っていて、すぐに自分と露呈してしまったという。また梁さんは身長が195センチもあり、かなり目立つ。

■縄跳びを「毎日100回ずつ追加」で体力を維持

梁さんによると、マンションが閉鎖されたことに特に異議はない。いつもはとても忙しいので、今は自宅でゆっくり休息しているという。また、上海では現在、感染拡大がかなり深刻なので、皆で感染抑止に協力した方が、みんながより早く通常の生活に戻れると考えているという。

ただし、スポーツのコーチをしていることで、体力維持には気を使っている。そのためにやっているのが縄跳びだ。18日の目標回数は3200回で、実際には3580回を跳んだ。毎日100回ずつ増やしているので、取材を受けた19日は3300回が目標だ。梁さんによると、2018年には体重が95キロになってしまったので減量のために縄跳びを始めた。3カ月で15キロ減らすことができ、それ以来やみつきになってしまったという。

■好かれる人柄、「ミスター5分」、「上海オヤジの鑑」と言われる

梁さんはおおらかな性格で、仕事でも細かいことで焦ったりせず、周囲を楽しませている。梁さんの逸話として語られているのが「5分間登山事件」だ。生徒らを率いてテニスの試合に出場するために杭州に行った際、梁さんは皆を率いて近くにあった山に登った。梁さんは「頂上まで5分で着ける」と言ったが、10分登っても山頂は見えない。

生徒らが「先生は5分と言ったじゃないですか」と言うと、梁さんはにっこりと笑って「あと5分だよ」と言った。そんなことで「あと5分」を繰り返しながら、一同は1時間をかけてやっと山頂に着いた。生徒らは山頂で、顔を見合わせながら笑ってしまった。梁さんはそれ以来「ミスター5分」と呼ばれるようになった。

梁さんは家族思いで親孝行であることでも知られている。テニスコーチの仕事は忙しいが、仕事の合間には妻や姉、母親を旅行に連れて行くなどしてきた。親の面倒もよくみており、義母が病気になった時にはマンション１室を手放して治療費に充てた。

周囲の人は梁さんを「上海オヤジの鑑」と考えているという。（翻訳・編集/如月隼人）