中国新聞社 2022年4月6日(水) 21時50分
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アニメなどを含めて、日本の文芸作品を愛する中国人は多い。日本では中国の小説などへの注目度が高まった。写真は湖南省長沙市内で2019年に開催された鉄腕アトムと手塚治虫の特別展。
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中国では現代日本の文学作品が多く読まれるようになった。一方の日本では中国人作家の莫言氏がノーベル文学賞を受賞したこともあり、中国の現代文学作品が注目されるようになった。日中で互いに相手国の文学作品に親しむこと、いわば「文学交流」がもたらすことは何なのか。大連外国語学院報道・伝播学院院長の張恒軍教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、日中の「文学交流」の状況を説明した。以下は張院長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
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■日本でも中国でも、相手国の文学への関心が高まっている
文学とは人の感情を最も豊かに生々しく表現し、心に感動もたらすものだ。文学を通じて異なる文明を鑑賞することもできる。中国と日本は共に、「文芸を通じて人と人が交流する」という長い歴史を持つ社会だ。
古い文学を通じての交流も可能だが、現代文学はさらに「黄金の懸け橋」になる。なぜなら現代文学は、今に生きる人の感情と状況を表し、現代的な価値観を示し、さらに開放されて多元的、包容力があるという「人類が共に生きていくべき状態」を示すことができるからだ。
中国との日本は地理的にも近く、人もなじみやすい。文学における交流の歴史も長い。中華人民共和国が成立して以来、中国の現代文学は日本の学界や読者からますます注目されるようになった。特に莫言氏がノーベル文学賞を受賞してから、中国の現代文学が日本人に紹介されることも増えた。
一方で、ノーベル文学賞を受賞した日本の川端康成氏や大江健三郎氏の作品は中国人の日本に対する理解を深めた。
過去40年にわたり中国と日本の文学交流は強まり続け、交流のメカニズムも健全化された。交流方式も刷新され続けている。大きな変化の一つに、中国ではかつて、日本の一部の「聖典」とも言える作品しか紹介されなかったのが、現在では多くの大衆作品が翻訳されていることがある。青春小説の「恋空」や「ひとり日和」、さらに「盲導犬クイールの一生」、映画の黒沢明監督の回想録の「蝦蟇の油」もある。アニメなども文学の一種と考えてよい。「鉄腕アトム」、「一休さん」、「花の子ルンルン」は中国人を魅了した。森村誠一や松本清張など、日本の推理小説のファンもいる。
一方の日本ではこの40年間で、「近代中国文学全集」(全15巻)、「近代中国文学集成」(全20巻)、「近代中国文学」(全12巻)、「中国革命文学選」(全15巻)などの全集や選集が次々に出版された。過去10年間では莫言、鉄寧、余華、顔連科、残雪などの作家の作品が、日本でも好評だった。
■中国人の対日観を変化させた「トットちゃん効果」
人類史の早い時期、情報の伝達と記録の手段には口述と記憶しかなかった。文字の登場は大革命だった。さらに大量印刷により文字情報を多くの人に伝えることが可能になった。現在はデジタル化の進行で、情報の伝達がさらに飛躍的に容易になった。文明の衝突と文明の融合は共に加速している。
そんな中で、現在も文学の重要性は変わらない。文学はこれまでと同様に人類文明、あるいは人々の考え方に大きな影響を与え続けるだろう。
黒柳徹子氏の「窓際のトットちゃん」は、中国での販売が110万部を突破した。愛情深く開放的な小林校長と、無邪気で優しく活発なトットちゃんは、中国人読者の日本に対するイメージを多少なりとも変化させる効果をもたらした。村上春樹氏の「ノルウェイの森」は中国で最も多く読まれている日本の作品だ。村上作品を読むことは、中国の中産階級の特徴の一つにすらなっている。
一方で、日本には中国文化の影響を強く受けた作家がいる。平野啓一郎氏の「一月物語」は、中国で8世紀後半に書かれた「枕中記」(邯鄲の夢)や、荘子にある胡蝶の夢を扱い、さらに唐代の詩人の李賀の作品の引用がある。平野氏は、日本語は中国の影響から切り離すことはできないと語っている。
■日中間の「壁」を突き破り、文学交流をさらに活性化させる
日中の文学交流は活性化しているが、「壁」の存在も認識せねばならない。最大の壁は言語だ。翻訳の質も量も不十分だ。互いに相手国の文学の全容を知るために、文学作品の翻訳を強化せねばならない。もう一つは政治の壁だ。歴史問題が絡むなどするからだ。日本の政府と社会は、自国の過去に対する批判的理解を受け入れねばならない。中国人は文化における優越感を克服し、偏見を取り除かねばならない。
日本と中国における美的価値観と美的理想の共通部分を見出し、文明間の対話を行うことで寛容さと相互理解を進め、現代の両国文学の伝統の中から、人類の発展と進歩に貢献する共通の理念と共通の目標を発掘せねばならない。
人類文明の長い歴史を考えれば、文学交流の蓄積は必然的に自国の文学の質を最適化し、世界文学の軌道を変え、ひいては人類レベルで文化文明の質を高めることができる。
中国と日本の伝統的文明は調和と共生を達成した。現代の中国文明と日本文明は未来を見据え、「現代における中国と日本の文学交流の世界的意義」を積極的に考え、人類運命共同体の「最大公約数」を見出さねばならない。両国の文明の新たな発展に積極的に寄与せねばならない。それは、両国の文明の新たな発展に活力を与えるだけでなく、アジアと人類の文明共同体の構築に貢献するものだ。(構成 / 如月隼人)
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