中国新聞社 2022年5月4日(水) 14時30分
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清華大学蘇世民書院院長の薛瀾教授はこのほど、「中国の特色ある経済統治」について解説した。写真は中国でも経済が特に発達している上海市。
中国の名門大学として知られる清華大学には、蘇世民書院(シュワルツマン・スカラーズ)という機構が付設されている。米国に本拠を置く大手投資ファンドのブラックストーン・グループを創立した同グループ最高経営責任者のスティーブン・シュワルツマン氏(中国語名は蘇世民)の資金提供で設立された「未来の世界的指導者」を育成することを目的とする教育機関だ。同書院の院長を務める薛瀾教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材を受け、「中国の特色ある経済統治」について解説した。以下は薛教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
■「経済統治」とは、政府が市場の機能を維持する役割りを果たすこと
国家にとって政府とは「形のある手」で、市場は「形のない手」と言える。経済統治とは、この両者を有機的に結びつけて、経済システムをよりよく機能させることだ。
これまでの経済の歴史を振り返れば、市場が機能不全になった場合、政府は力を発揮すべきであることが分かる。
市場の機能不全にはさまざまなタイプがある。例えば自然発生する可能性がある独占だ。独占がいったん発生すれば競争原理が働くなり、市場は機能不全に陥る。従って、政府は独占の問題を回避する規則あるいは規制を設けねばならない。さらに、情報の非対称、公共財の提供、経済外の要因によるものなど、市場の機能が失われる原因はさまざまだ。
市場の機能が失われれば、経済資源を有効に配置できなくなる。つまり経済は停滞したり衰退したりする。政府は公然たる手段を用いて市場の機能不全を回避あるいは解決せねばならない。
■中国はモデルチェンジを続けている、新たな問題に直面するのは必然
市場経済国はすべて、この考えに基づいて経済政策を実施している。中国の場合に特殊なのは、中国は発展モデルを転換し続けてきた国であることだ。そして中国は今も発展モデルを転換しつつある。モデル転換の過程においては、多くの新しい問題に直面することになる。
例えば、改革開放の過程で財産権がはっきりしない問題が発生した。市場主体の経済運営が発育不全である分野もある。制度の体系は今も構築中だ。政府は計画経済から市場経済への移行を、今後も積極的に推進せねばならない。
中国が社会主義市場経済システムを構築するには、市場の制度を確立しつつ、一方では市場の機能不全を防止あるいは解消せねばならない。これが「改革」ということの本質だ。
中国の発展の過程を理解していない一部の西側の人は、中国の経済体制は国家が過度に介入するものと見なしている。中国政府は他国と比べて経済分野でより多くのことをしているように見えるが、これはモデル転換のために客観的に見て必要なことだ。そして、中国政府は実際には、多くの改革を推進している。
中国政府も過去数年にわたり、行政の簡素化や権限移譲などで努力してきた。また「政府の不要な介入を可能な限り減らしたい」と言ってきた。
一部の地方政府に、経済に干渉しすぎる問題が存在しているのは事実だ。従って、改革をさらに推進し、中国の経済発展モデルが合理的であることを、事実によって証明せねばならない。
■市場に行政による監督管理は必要、ただし過剰であってはならない
市場で行われることは、経済的主体による自由意思による取引だ。しかし、いかなる取引も無条件で認められるというわけでない。例えば、いかに安価であっても、明らかに問題がある商品を仕入れ、それを他者に売るといった行為は認められない。最終的に消費者あるいはエンドユーザーが不良品をつかまされてしまうからだ。そのような取引は社会にとって有害であり、規制や禁止の対象になるのは当然だ。
それ以外にも、先に述べた独占や有価証券についてのインサイダー取引の禁止など、市場や経済の健全さを維持するためには、行政による監督管理がどうしても必要だ。
しかしその一方で、行政による監督管理が過剰だと市場の機能が損なわれる。中国にとっては、この管理監督システムをいかに整備していくかが課題だ。また、マクロコントロールを通じて経済の安定した発展を維持する手法についても、まだ改善の余地がある。政府はこれらの分野で努力せねばならない。しかし中国は実際には、革新的な手法を多く編み出してきた。中国はそれらの経験を総括して、全世界と共有することができる。
もちろん、他国に対して「中国の経験を必ず受け入れるべきだ」ということではない。どの国も、自国の実情に基づいて、中国のどの経験が適用できて、どの経験は必ずしも適用できないかを、見極めねばならない。肝要なことは、どの国も独立自主の態度で、中国を含め、さまざまな他国の経験を知り、自国の立場でその評価をすることだ。これこそが、国々が真に学び合い、交流することだ。(構成 / 如月隼人)
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