新経済勢力PKQの明暗くっきり、市場によるIT企業の選別進む

高野悠介    2022年5月25日(水) 11時50分

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2019年ごろ、新経済勢力PKQ(拼多多、快手、趣頭条)という言葉がはやった。それから3年、2021年の決算において、PKQの明暗ははっきり分かれた。写真は趣頭条。

2019年ごろ、新経済勢力PKQ(拼多多、快手、趣頭条)という言葉がはやった。それから3年、2021年の決算において、PKQの明暗ははっきり分かれた。

BAT(百度アリババテンセント)という呼び方は、中国IT巨頭の象徴として世界的に定着した。続いて2010年代初期創業のTMD(バイトダンス美団DiDi)が台頭してきた。これら3社も時流に乗って、大きな存在感を示した。そこでメディアは先走り、2015年ごろに創業した企業を物色し始めた。そこで選ばれたのがPKQ、共同購入型ネット通販の拼多多、ショートビデオの快手、ニュースメディアの趣頭条だった。上場スピードを競い、地方市場の開拓に成功し、「下沉(地方市場)三巨頭」と称され、数々の話題を振りまいた。それがここへ来て、市場による選別にさらされている。

■拼多多…共同購入型ネット通販を確立

拼多多は2015年4月にスタートした。ネット通販界に独特の共同購入モデルを持ち込んだ。SNSを徹底的に利用して購入者を募り、取り引きを成立させるC2Mスタイルだ。売り手側は在庫リスクを気にせず、思い切った値段をオファーする。それを低価格につなげ、地方のネット通販未経験者を引き付けた。2018年7月、米国ナスダックへ上場、設立3年3カ月というスピードだった。

拼多多の2021年決算は、売り上げ939億5000万元で前年同期比58%増、利益は77億7000万元、前年は71億8000万元の赤字だったため、大幅に好転した。GMV(成約総額)は前年比46%増の2兆4410億元だった。また、2021年末におけるユーザー数は前年比10%増の8億6870万人だった。

2020年末には、アクティブユーザー数でアリババを抜き、大きな話題となった。2021年下半期以降、成長は鈍化し、四半期決算は市場予想を下回った。人口には限りがあり、今後どのIT巨頭もアクティブユーザー数の頭打ちに直面する。これはある程度仕方ない。しかし、ここで黒字転換を果たしたのは大きなステップだ。これからは1人当たりの月間消費額を増やせばよい。2021年、拼多多のそれは2810元、アリババは9200元と約3倍の開きがある。打つ手はいくらでもありそうだ。

■快手…抖音(TikTok)と並ぶショートビデオの雄

快手は2011年、GIF画像のシェアサービスからスタートした。やがてショート動画、ライブ配信、Eコマースへ進出、急成長していった。若者と地方都市に強みを持つ独自のコミュニティーを形成している。現在では、バイトダンス(抖音・TikTokを運営)と並ぶ業界の雄だ。

快手の2021年決算は、売り上げが前年比37.9%増の810億8000万元だった。利益は188億5000万元の赤字で、139.8%増と拡大した。営業コストは34.6%増の471億元。減益の原因は収益の分配コストと関連する税金が膨らんだためという。注目はネット通販部門で、GMVは前年比78.5%増の6800億元だった。また、月間アクティブユーザー数の平均は21.5%増の5億7800万人で、史上最高を更新している。

ユーザー数やネット通販は増加しているが、赤字も拡大した。バイトダンスは、アルファベット、アリババ、テンセントなどを視野に入れている。この強力な相手とどう戦うか、コストコントロールも含め、課題は山積だ。新しい動きはいろいろある。直近では、ライブコマースで不動産仲介に進出すると伝えられた。戦略ミスは許されない。

■趣頭条…自社コンテンツ作成を停止

趣頭条は、2016年6月にスタートしたニュースメディアだ。2012年8月にスタートしていたバイトダンスの「今日頭条」を追いかけ、2018年9月に米国ナスダックへ上場を果たす。わずか2年3カ月、拼多多を上回り、史上最速だった。

急成長の要因は、やはり地方都市の市場を開拓したことだ。AIを活用し、生活とエンタメを中心に、それぞれのユーザーに特化したコンテンツを提供した。趣頭条の2021年決算は、売り上げは前年比17.8%減の43億4000万元、利益は11億9300万元の赤字で、前年比15.6%増だった。月間アクティブユーザー数の平均は前年比21.7%減の9670万人だった。

趣頭条はリリース直後から黒字を確保した。そのため、ユーザー獲得のための大掛かりな投資をしなかった。一方、拼多多、快手は赤字をいとわず資金をつぎ込み、ビジネスモデルを磨き、一~二線級の大都市へ逆侵攻した。趣頭条にはそのパワーがなかった。

趣頭条は決算とともに大きな政策変更を発表した。百度などの第三者プラットフォームとの提携を深め、自らの創作コンテンツプラットフォームは6月30日をもって閉鎖する。この方がより豊富なコンテンツを低コストで提供できるという。しかし、オリジナル部門という掌中の宝を失って、果たして差別化が可能なのか、疑問は残る。この発表後、かつて最高15.97ドルを記録した株価は0.8ドル前後まで下落した。市場も評価していないようだ。

■IT企業…選別の年

拼多多は増収増益、快手は増収減益、趣頭条は減収減益と、決算は三者三様くっきりと分かれた。拼多多には独自の強力なビジネスモデルがある。快手のビジネスモデルは強力なライバルぞろいだが、固定ファンをつかんでいる上、ライブコマースという高成長部門がある。これに対し趣頭条は、新たな成長戦略を描けないまま、赤字に転落した。PKQに限らず、派手な成功を体験したIT企業も、現在、その多くは市場からの選別にさらされている。趣頭条はその典型例となった。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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