極度の円安に苦しむ日本、打開策は自国内でのGXとDXの推進との声―香港・亜洲週刊

亜洲週刊    2022年6月12日(日) 7時0分

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日本が極度の円安に苦しんでいる。経団連の十倉雅和会長(写真左から2人目)は、経団連としてGXとDXの発展を後押しする考えを示した。 写真は毛峰氏提供。

香港誌・亜洲週刊はこのほど、極度の円安に苦しんでいる日本で、経済界からその打開策としてグリーン・トランスフォーメーション(GX)とデジタル・トランスフォーメーション(DX)を挙げる声が出ていると紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。以下は、同記事の主要部分の要約だ(一部で数字を追加)。

■外国人観光客の受け入れ再開しても、増収効果は「焼け石に水」

日本円の暴落が続いている。対ドル為替レートは1ドル=133円の大台を突破し、二十数年来の円安を記録した。生活に直結する食品や飲料など1万種近くの商品が次々に値上がりして、人々は悲鳴を上げている。

日本は最近になり、外国人観光客の入国が2年ぶりに再開された。しかし、当面はガイドが同行する団体旅行に限られ、個人旅行は認められないなどの制約がある。日本は新型コロナウイルス感染症が始まる直前の2019年には、過去最多の3188万人の外国人観光客を受け入れ、4兆円を超える観光収入を得ていた。

外国人観光客の秩序ある受け入れは、日本の慣行経済の回復を刺激するだろう。だが、日本の経済規模(GDP)が500兆円台であることを考えれば、外国人観光客受け入れの日本の景気立て直しに対する効果は「焼け石に水」だ。

■「円安は輸出の追い風」は過去の話、今や苦境の増幅効果

大幅な円安は輸出強国である日本の企業に利益をもたらしそうなものだが、実際にはそうならなかった。日本の経済構造がすでに変化していたからだ。亜洲週刊の調べによれば、過去20年間にわたり日本の工業企業の製造拠点の海外移転は非常に多かった。従って、部品や半製品のサプライチェーンを輸入に依存することが常態化した。また、冷凍食品などでは原料調達から加工生産までのすべてを主に海外に依存するようになった。

そのため驚いたことに、ホンダ、キヤノン、マツダ、ソニーグループをはじめ、日立、リコー、富士フイルムなどほとんどの大手企業の配当金が、大幅な円安の影響で半減することになった。

一方で、日本銀行の黒田東彦総裁は6日、金融緩和を堅持すると改めて表明した。この発言は、日本円の“正常な”下落に干渉する意思がない事を示唆するものだ。その真意は何なのだろうか。

その答えは、日本経団連の記者会見での説明から得ることができる。経団連は、円安をある程度の範囲内で安定して進行させることで、海外進出した日本企業の本国回帰を促し、日本国内での新規投資を促し、持続可能な資本主義を実践する経済発展の新たなビジョンを示した。

■経団連が改革に乗り出した、重点的に育成する産業分野とは

経団連の十倉雅和会長は、日本経済は過去20年間にわたり、円高とデフレに悩まされてきたと述べた。強い円を背景に海外投資は増加したが、国内投資は低調だった。起業やイノベーションによる新たな付加価値創出は不足している。労働生産性も実質的にさほど伸びていない。日本は産業空洞化と呼ばれる状況から脱却せねばならないという。

十倉会長はまた、日本の持続可能な資本主義の発展ビジョンの中核はグリーン・トランスフォーメーション(GX)とデジタル・トランスフォーメーション(DX)だとして、社会の変革をけん引してきた経団連は、自らの改革を進めていく決意を示した。経団連は、新たに三つの委員会を設けて、日本の経済成長を強力に推進することができる、クリエイティブ産業、バイオ産業、モバイル産業の三大産業を重点的に促進することにした。

■狙い通りに進行すれば、日本に空前の投資ブーム到来する可能性

十倉会長によると、クリエイティブエコノミー委員会は、最近注目を集めているWeb 3.0(パブリック型のブロックチェーンを基盤としたインターネット)やMetaverse(コンピュータやネットワークの中に構築された三次元仮想空間やそれを利用したサービス、メタバース)、NFT(ブロックチェーンで実現する所有権などの証明)だけでなく、日本が強みを持つマンガやゲームなども含め、日本のソフトパワーをさらに強化していく考えだ。

バイオエコノミー委員会は、医療、食品、環境などの世界的な課題を解決するためにバイオ技術を活用する方法を検討する。バイオテクノロジーはデジタル技術にも深く関係するので、両分野が提携した研究により、関西や東京地域にバイオテクノロジーのクラスターが形成されることを期待する。

モビリティ委員会は、モバイルコンピューティング業界の国際競争力を強化することを目的とする。これには、カーボンニュートラル、デジタル化、知能化など、さまざまな業界と動態的にかかわっていく。

十倉会長は、持続可能な資本主義の実現には科学・技術をベースとしたイノベーションによる付加価値向上が不可欠であり、DXやGXを投資の軸とした起業の環境を構築してイノベーションを生み出すことが重要だと強調した。そのためには、2025年までに累計約400兆円の投資が必要とされる。日本には、歴史上まれにみる投資ブームが到来する可能性もある。(翻訳・編集/如月隼人

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