Record China 2022年6月26日(日) 7時0分
拡大
この50年で日中関係はさまざまな分野で飛躍的な発展を遂げましたが、なかでも経済交流の発展には目を見張るものがありました。写真は2021年広州国際モーターショー。
泉川友樹(沖縄国際大学 沖縄経済環境研究所特別研究員)
日中国交正常化50周年です。1972年9月29日に北京で田中角栄首相と周恩来総理が「日中共同声明」に署名、固い握手を交わした光景を覚えていらっしゃる方もいらっしゃることでしょう。
この50年で日中関係はさまざまな分野で飛躍的な発展を遂げましたが、なかでも経済交流の発展には目を見張るものがありました。1972年には11億ドルに過ぎなかった貿易総額は2021年には3714億ドルとなり、日米貿易総額の2165億ドルを大きく引き離しています。経済的に見れば、日中両国はもはや切っても切れないかけがえのないパートナー同士なのです。では、日中経済交流はこれまでどのような道を歩んできたのでしょうか?50周年を期に少し振り返ってみましょう。
実は、日中経済交流は国交正常化前からもごくわずかですが行われていました。1955年には東京で戦後初となる中国商品展覧会が、1956年には北京、上海、武漢で日本商品展覧会が開催されています。1957年4月には中国と西側諸国の貿易の窓口となる「広州交易会」が始まりましたが、日本のビジネスマンもこれに参加しています。この頃は直航便が飛んでおらず、香港から汽車に乗り換えて深セン経由で広州に入るルートが一般的でした。また、当時は日本のパスポートに国交のない中国の入国スタンプを押すことができず、別の紙に押したものを帰国時に回収、中国に入国した記録が残らないという、交流に大変な困難が伴う時代でした。さらに、中国は計画経済の時代であり「自力更生」を原則としていたために交流内容や貿易品目も限られ、日本との経済交流がこの時期に大きく拡大したわけではありませんでした。先達はその中でも苦労しながら着実に交流を積み重ねていったのです。
国交正常化が実現してからは北京や上海に直航便が飛び、利便性が格段に向上します。1978年12月に中国が改革開放路線に転換したことにより、貿易だけではなく日本企業が中国で会社や工場を設立する動きも始まっていきます。特に改革開放路線の堅持を明確化した1992年のトウ小平の「南巡講話」以降、この動きはさらに活発になりました。ただし、この頃の中国は「外国の投資は歓迎するが中国独自のルールに従ってもらう」というスタンスであり、100%独資での会社設立はほとんどなく、中国側出資会社との合弁企業設立が一般的なスタイルでした。また、中国国内の購買力が大きくなかったことから、日本企業は中国の優遇政策と廉価で優秀な労働力に頼って質の高い製品を生産し、海外に輸出することで利益を上げていました。中国は「世界の工場」だったのです。この段階では中国企業が日本に進出することはごく例外的な動きでした。
2001年、中国がWTOに加盟したことにより、日中経済協力は新たな段階に入ります。中国が独自の規制を次々に撤廃・緩和し「世界共通ルール」に合わせていくことで貿易、投資の利便性が向上し、日本からの新規進出も相次ぎました。中国経済も爆発的に成長し、2010年にはGDPで日本を追い抜き、世界第2位の経済大国に躍り出ました。また、このころから中国企業の日本進出も相次ぎ、M&Aによる買収も見られるようになりました。日本企業は成長した中国国内の市場に注目し、製造業は中国での現地生産、現地販売に力を入れるようになり、大手コンビニやデパートも進出するようになっていきました。中国は「世界の工場」から「世界の市場」となったのです。
そして現在、名実ともに大国に成長した中国は、これまでの経済ルールの不合理な部分を補う新たな国際秩序の構築を提唱するようになりました。習近平主席が提唱している「一帯一路」「人類運命共同体」構想等はその典型例でしょう。中国の各国との経済協力については、2022年1月1日に発効したRCEPに代表されるように多国間協調主義がより明確になっています。日中間では従来の貿易や投資のみならず、研究開発やイノベーション分野でも協力が深まり、最近では地球温暖化や少子高齢化等、共通の社会・環境問題の解決に資する経済協力が行われるようになりました。
このように、日中両国は紆余曲折を経ながらも、各段階における経済協力を着実に進めてきました。政治問題がクローズアップされがちな日中関係ですが、これまでの経済交流の成果を互いに確認しあい、第2位と第3位の経済大国としてこれからも交流を拡大し、自国の発展のみならず世界の安定と発展に貢献していくことが期待されています。
【プロフィール】
泉川友樹(いずみかわ ゆうき)
1979年、沖縄県生まれ。
2003年、沖縄国際大学卒業後、北京外国語大学に留学し中国語通訳を学ぶ。
2006年、日中経済交流促進団体に就職。
2018年、放送大学大学院修了。
2020年、沖縄大学地域研究所特別研究員。
2022年、沖縄国際大学沖縄経済環境研究所特別研究員。
中国語検定1級、旧HSK11級(高等A級)、全国版中国語通訳案内士
この記事のコメントを見る
Record China
2022/6/25
人民網日本語版
長田浩一
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら
業務提携
Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る