「ウクライナ避難民」は日本だけの特別扱い、難民受け入れ政策再検討を―世界の難民1億人突破

池上萬奈    2022年7月8日(金) 7時30分

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ウクライナから避難してきた人が1000人を越えた日本では、彼らを難民とは呼ばずウクライナ避難民と呼んでいる。日本独特の呼称である。

ウクライナから避難してきた人が1000人を越えた日本では、彼らを難民とは呼ばずウクライナ避難民と呼んでいる。日本独特の呼称である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、国外に逃れた人を難民(refugees)、同じ理由でも国境を越えず国内にとどまっている人を国内避難民(Internally Displaced Persons: IDPs)と使い分けているので、海外では国外に避難したウクライナ人は難民として扱われている。

では難民とはどういう人々を指すのだろうか。1951年にできた「難民の地位に関する条約」と、これを補足する1967年に採択された「難民の地位に関する議定書」をあわせて、一般に「難民条約」と呼んでいる。この条約によれば、難民の定義は「人種、宗教、国籍、若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又は望まないもの」とされている。これが条約難民である。

しかし、現在「広義の難民」として、シリアのような武力紛争や人権侵害などから逃れるために国境を越えて他国に庇護をもとめた人々もさすようになってきた。現在多くの難民は、広義の難民である。

◆難民庇護は人道的配慮

難民条約を批准している145カ国(日本も含む)では、当事国が庇護する義務は条約難民のみで、戦争を逃れてきた広義の難民に対しては、各国の判断に任されている。したがって広義の難民の庇護は人道的配慮措置なのである。

2020年6月に発表されたUNHCR本部年間統計報告書「Global Trends report 2019」によれば、紛争や迫害により故郷を追われた人は7950万人(2019年末時点)で地球上の97人に1人の割合ということになる。内訳は国内避難民4570万人、難民2600万人 に加え、新たにベネズエラ国外に逃れた360万人である。

その年はベネズエラで現職大統領マドゥローと暫定大統領グアイド国会議長という二人の大統領が併存し対立が激化、社会経済の混乱・治安の悪化という状況になり、多くの人が故郷を離れ庇護を求めて国外へと流出したのであった。その年の世界全体を通して見てみると、最大の受け入れ国は、トルコで360万人(5年連続1位)、2位コロンビア180万人、パキスタン・ウガンダ各140万人、ドイツ110万人となっている。

◆ウクライナ難民、600万人超

2022年には紛争や迫害により故郷を追われた人の数字が一段と増えた。5月11日時点でウクライナの難民が602万9705人、5月23日には世界の難民・国内避難民は1億人を越えたのである。

さて日本の難民受け入れはどうなっているのだろうか。日本が本格的に難民の受け入れ問題に取り組むことになったきっかけは,1970年代後半ベトナム戦争終了後、インドシナ3国(ベトナム・ラオス・カンボジア)の新しい政治体制になじめない多くの人々が国外へ脱出したいわゆるインドシナ難民の発生であった。1979年インドシナ難民受け入れを開始した日本では計約1万1000人を受け入れ、その多くは神奈川、埼玉、兵庫などの地域に定住した。また難民条約締結後の1982年以降は、条約難民を500名以上受け入れている。

2010年度からは第三国定住による難民の受け入れを開始し、タイの難民キャンプに滞在していたミヤンマー難民を毎年30人5年間にわたって受け入れることを初ケースとし、2019年までに合計50家族194人を受け入れた。これらは今までの積み重ねの数である。

◆日本の難民認定、申請者1万人のうち81名だけ―2019年

単年で日本の状況を見てみよう。出入国在留管理庁の発表2019年の難民認定申請者数1万375人のうち難民認定44人、人道的配慮により在留を認めた外国人37人合計81名という数である。この数字をどのように解釈したらよいのだろうか。

在留資格が与えられた人々は就労が可能となり、日本の社会保障も受けられることになる。日本では、ウクライナから避難してきた人々を難民と称さないのは、今まで難民として扱ってきたケースが条約難民・インドシナ難民・第三国定住により受け入れた難民であり、それに該当しないからではないかと言われているが、理由は明らかではない。しかし、ウクライナから避難してきた人々には特別に期間限定ではあるが在留資格がすぐに与えられ、就労も可能となっている。

今回のウクライナ人受け入れを機に、日本は先進国の役割として難民受け入れ政策を再検討するべき時期に来ているのではないだろうか。

■筆者プロフィール:池上萬奈

慶應義塾大学大学院後期博士課程修了、博士(法学)、前・慶應義塾大学法学部非常勤講師 現・立正大学法学部非常勤講師。著書に『エネルギー資源と日本外交—化石燃料政策の変容を通して 1945-2021』(芙蓉書房)等。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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