戦争は「抑止」を理由に始まる=「平和」への熱い思いを吐露―仲代達矢さん、70周年で記者会見

Record China    2022年8月23日(火) 7時0分

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文化勲章をはじめ多くの栄誉に輝いた俳優・仲代達矢さんが記者会見し、70年に及ぶ俳優人生を振り返った。「戦争で犠牲になるのは庶民であり絶対反対」と平和への熱い思いを吐露した。写真は日本記者クラブ提供。

文化勲章をはじめ多くの栄誉に輝いた俳優・仲代達矢さんが日本記者クラブで記者会見し、70年に及ぶ俳優人生を振り返った。今年12月に90歳になる仲代さんは、戦争体験を語るとともに「人間とはいとおしいもの。戦争で一番犠牲になるのは庶民であり、私は絶対戦争反対を言いながら死んでゆきます」と平和への熱い思いを吐露した。

仲代さんが9歳だった1941年に太平洋戦争がはじまり、13歳で終戦を迎えた。何もない時代だった。「70年も俳優を続けられたのも。大病を患わなかったことのほか、俳優座という新劇の精神が関係しているかもしれない。商業主義的な儲けとか物の効率化に背を向けた新劇の世界が合っていたと思う」と振り返った。

演出家の妻・宮崎恭子さんと創設した「無名塾」の主演舞台「いのちぼうにふろう物語」(山本周五郎原作)が9月4日から石川・能登演劇堂で再上演される。恭子さんは1996年に膵臓癌で亡くなり、1997年の初舞台は追悼公演になった。

俳優・仲代達矢氏 写真は日本記者クラブ提供

仲代さんは「黒澤明監督は映画『乱』に出演した際、トルストイの『戦争と平和』のような戦争を否定する映画を撮りたいと話していたが、実現できずに亡くなられた」と述懐した。「欲望がある限り戦争はなくならない」「相手の立場をよく考えたら戦争なんて起きない」という黒沢監督の言葉が脳裏に残っていると言う。

その上で「戦争で一番犠牲になるのは庶民であり、私は絶対戦争反対を言いながら死んでゆきます」ときっぱり。日中共同制作ドラマ『大地の子』(山崎豊子原作)では、中国残留孤児の日本人実父役を演じ視聴者の感涙を誘った。

さらに、現今のウクライナ戦争にも言及、「ロシアがウクライナに侵攻することによって戦争が起きていると思うが、ロシアはなんでそんなことをしたのか。ウクライナの方も、戦い合い世界に助けを申し出ているが、それを助けたら戦争がもっと激しくなると思う」と懸念した。その上で、「文化人・芸術家として我々がやらなければならない(最大の)仕事は「(世界)平和」の実現であり、最後まで頑張りたい」と力を込めた。

70年に及ぶ役者人生の中で大事にしてきたことについて問われ、「人には人間であるといういとおしさがある。普遍的なテーマとしていとおしいものであることを演じ続けたい」と語った。

さらにプロの役者にとして必要なのは「技」のほか、精神的かつ哲学的な「人間を見つめる目」と指摘、すべての基本になると述べた。

これまでに演じた中でナンバーワンと思う映画は小林正樹監督の『切腹』。「個人の幸せをないがしろにする武士道を批判している点がいい」と理由を挙げた。

印象深かった共演女優として高峰秀子、山田五十鈴を列挙。この二人からは「映画は(演劇と違って)大きな声を出す必要はない」「相手のセリフをもっと覚えなさい」などと教えられたと言い、「映画での先生だった」と懐かしんだ。

俳優として想い出深いのは「三船敏郎さん」と真っ先に挙げた。当時は半年前に台本ができていたが、「台本を一度も(撮影現場に)持ってきたことはなかった。自分のセリフはもちろん、相手のセリフまで全部覚えていた」と明かした。「素敵な俳優さんに恵まれ、素晴らしい時代だった」と振り返った。

戦争を知る世代が少なくなる中で戦争の悲惨さを継承するためにどうしたらいいかと問われ、「私は戦争には行かなかったが、戦争の体験者です」と強調した上で、次のようにしみじみ語りかけた。

俳優・仲代達矢氏 写真は日本記者クラブ提供

――今テレビを見たり政治の人の話を聞いていると一番不安に思うのは、「抑止力」と言いながら軍事費、防衛費を上げなければいけないとかの話ばかりで、不安になる。

私の少年時代の昭和16年12月8日に太平洋戦争が始まったときに、先生たちや学校に来た軍人が「日本の平和のために戦争するんだ」と毎日のように言っていた。子供の頃はそうかと思ったが、「抑止力」というのはそんな大変なものなのか?

政治の世界では与党は「抑止力」と言っているが 戦争体験者として、非常に危険な問題と思う。敵に攻め込まれないために「抑止力」を高めると言っているが、戦争は「抑止」を理由に始まる。戦争のきっかけにならないか非常に不安に思う――。

さらに「人間の若いころを指す『青春』という言葉がある。自分の青春は過ぎ去ったが、晩年になった今は(妻の宮崎さんが名付けた)『赤秋』だ。真っ赤に燃える『実りの秋』を精いっぱい生きていきたい」と語りかけた。

仲代さんの演劇と平和への情熱は全く枯れていない。記者会見後に示した揮毫は『平和』の二文字。「無名塾」で後進の指導に励み、先頭に立って平和と人間のいとおしさを追求する日々はこれからも続きそうだ。(八牧浩行

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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