Record China 2022年9月2日(金) 10時30分
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ファーウェイが日本市場での蓄電装置販売に力を入れている。発電事業者が電力会社に電力を販売する際の価格に市場の状況を反映さえるFIP制度が導入されたからだ。すでに年内納品が決まった事例もあるという。
ファーウェイ・ジャパンは千葉県千葉市の幕張メッセで8月31日-9月2日開催の「第2回 スマートエネルギーWeek【秋】」に、蓄電及び関連装置を出展した。日本で、再生可能エネルギーの導入拡大を目指すことを念頭に4月にFIPと呼ばれる制度が導入されたことから、高性能の蓄電装置の分野に「商機」を感じての出展だったという。
■日本でも売電価格の「変動相場制」が導入、収益意識がより重要に
日本では2012年に再生可能エネルギー(再エネ)の「固定価格買取(FIT)制度」が投入された。資源エネルギー庁によると、当時はさほど普及していなかった再エネの導入を促す狙いがあった。
しかし、FITについては現在までに、いくつかの問題が出てきた。例えばFIT制度では、買取価格が電力市場と連動していないので、再エネ発電事業者は電力の需供給バランスを意識する必要がないなどだ。資源エネルギー庁によると、日本が目指す「2050年カーボンニュートラル」に向けて再エネを主力電源としていくためには、火力などほかの電源と同じように、需供のバランスなど電力市場の状況を踏まえた発電を行う状況にしていく必要がある。
再エネ発電事業者にとってすれば、FIPが導入されたからには、電力価格が高いタイミングで売電すれば収益性を向上させることができる。そのために重要性が高まるのが蓄電装置関連だ。
■注目度が高まる蓄電分野だが、問題も存在した
しかし蓄電装置には問題があった。蓄電装置には、大量の電池が搭載されている。使用を続けると個別の電池の性能は徐々に劣化していく。しかも、均一に劣化するのではなく、不ぞろいに劣化してしまう。電池における「劣化の不ぞろい」問題は現状では解決されていない。
蓄電装置の中に劣化した電池と良好な電池が混在したのでは蓄電装置全体が大きな影響を受けてしまう。良好な電池の劣化が速くなる場合もあるとされる。しかしこれまでは、劣化した電池だけを交換することは容易でなかった。蓄電装置全体としての性能に問題が出てきた場合、電池を「総取り換え」するのではコストがどうしても高くなる。
■重要性高まる蓄電装置にまつわる問題を大きく軽減
ファーウェイ・ジャパンが今回の出展の「大きな目玉」にしたのは、HWLU2000と呼ばれる蓄電装置だ。蓄電能力は1基で2MWh(メガワット時)強だ。もちろん、大規模施設の場合には多数を設置して同時に使用することもできる。また、発電事業者向けに特化した装置ではないので、その他の事業者が停電時などに備えて導入することもできる
HWLU2000の大きな特徴の一つは、「分散管理」を徹底したことだ。内部には、個別の電池を100個強集めた「バッテリーパック」と呼ばれるユニットが多数搭載されている。そして、独自開発のバッテリーマネジメントユニット(BMU)が全てのバッテリーパックに組み込まれている。
このバッテリーパックのBMUがバッテリーパックを個別制御することで、装置全体としての充放電機能を大幅に向上させ、コストパフォーマンスを引き上げた。またBMUにより、バッテリーパックの故障時も、他の正常な電池に影響を与えずに運転継続が可能だ。
さらに、電池を遠隔で監視し、人工知能(AI)を使って分析しているので、故障の予知も可能だ。遠隔監視については、ファーウェイがこれまで蓄電装置を納入してきた中国内外の施設からの情報の蓄積が奏功する。つまり、ファーウェイの基幹技術の一つである通信やクラウドが応用されている。
バッテリーパックが故障したり性能の劣化が問題になった場合には、そのバッテリーパックだけを交換すればよい。ユニット状なので、交換作業も簡便だ。
■海外市場も強く意識、サイズの「規格化」で輸送にも設置にも利便性
ファーウェイがこれまで蓄電装置を海外に納品してきた事例としてはサウジアラビアの大規模施設などもある(1300MWh)。また、太陽光発電や風力発電用だけでなく、英国、ドイツ、スウェーデンでは、電力需給調整市場向けに納品している。
HWLU2000は国際市場への売り込みも強く意識した商品だ。大きさはは海上輸送用に一般的な20フィートコンテナと同一だ。外枠は強度を考慮に入れた鉄製なので、そのままコンテナ船に積み込める利点がある。
また、蓄電装置として「オールインワン」の状態なので、所定の場所に置いて必要な接続などを終えれば、「設置完了」になる。つまり、蓄電装置導入時の初期費用や日数を節約できる。
日本市場におけるHWLU2000の展開については、現時点までに2022年内の納品が決まったという。
■異業種を「蚕食」せずウィンウィンを目指すビジネスモデルは不変
ファーウェイはさまざまな事業分野に進出する場合に、「それぞれの業界の既存企業が求める製品やソリューションを提供」というビジネスモデルに徹している。例えば炭鉱分野だったら「炭鉱企業が求める作業現場の安全性の向上や人員の削減や無人化」、自動車分野だったら「完成車メーカーが求めるスマート運転など」についての“最適解”の提供だ。
電力分野についても同様で、例えば制御装置を提供するエネルギーマネージメントシステム(EMS)メーカーとは、競合するのではなく提携する方向でビジネスを進めている。ファーウェイは逆に、納品先の顧客がEMSを選択することが可能と、顧客にとって利便性が高いモデルであることを強調している。ファーウェイとしては、他社との提携を推進するために自社の製品や技術についての情報を開示することに努めているという。
なお、ファーウェイ・ジャパンは「第2回 スマートエネルギーWeek【秋】」にHWLU2000だけでなく、中型産業向け蓄電ソリューションや定電圧向け蓄電システムソリューション、住宅用蓄電システムソリューションなど、さまざまな用途に応じた製品やソリューションのラインアップを出展した。(取材 /構成 如月隼人)
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高野悠介
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