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個人旅行客の入国再開、香港で高まる日本旅行熱

野上和月    2022年10月12日(水) 7時30分

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香港は今、日本旅行の話題で持ちきりだ。日本が11日から、香港人が待ち望んでいた日本国内を自由に観光できる個人旅行の入国を再開したからだ。写真は旅行会社の店頭に張り出された観光広告を見る香港人。

香港は今、日本旅行の話題で持ちきりだ。先月末、香港に到着後の強制隔離が撤廃されたのに続き、日本が11日から、香港人が待ち望んでいた日本国内を自由に観光できる個人旅行の入国を再開したからだ。

香港人は「日本は第二の故郷」と言ってはばからないほど、無類の日本好きが多い。新型コロナが流行する前の2019年には人口約740万人の香港から、約230万人が訪日した。実に約3.2人に1人の割合で日本にやってきていたわけで、いかに彼らの「日本愛」がすごくて、リピーター客が多いかがわかる。

6月に日本が約2年ぶりに外国人観光客の受け入れを再開したことで、香港人の間で「故郷に帰れる」と喜びの声が上がったが、許されたのは小人数の団体旅行だけ。行き先が限定されていたうえ、香港に戻ってからも7日間の強制隔離が義務付けられていたから、「日本には行きたくてたまらないけど、好きなところに行けないし、香港に戻ってからの隔離には費用と時間もかかる」と、喜びも半分。一気に旅行熱が高まるまでには至らなかった。

しかし、香港政府が9月末、香港入境時の強制隔離を撤廃。香港到着後は3日間の健康監察のみにしたことで、俄然、海外に出かけやすくなった。同時期に日本政府も10月11日から外国人旅行客に対する規制を大幅に緩和する方針を発表。指定のワクチンを3回接種済みか、出国前72時間以内の検査の陰性証明書があれば、待望の自由旅行ができるとあって、多くの香港人が航空チケットの購入に殺到。航空会社のサイトは一時、パンク状態に陥るほどだった。

当初は日本で認められていなかった中国産ワクチンが指定ワクチンに加わったことも、より多くの香港人の日本旅行を身近にした。

市民の会話も、「チケットを買ったか」「いつ行くつもりか」と日本旅行が前提となって話が始まるなど、関心の高さは相当なもの。会社の同僚も「これで(大好きな声優兼歌手の)コンサートにも行ける」と、もろ手を挙げて喜んでいる。

旅行会社は、店頭に海外各地の観光ポスターを掲げて旅行気分を盛り上げている。そのポスターも「北海道」「上高地」など日本各地の案内がほとんどだ。また、日本が6月に再開した団体旅行で訪日した香港人旅行客を話題にした新聞記事を張り付けるなど、日本旅行の人気の高さを物語っている。

香港メディアも、「紅葉の季節にどこに行くべきか?」「日本の『おまかせ』料理を堪能しよう」といった話題で日本旅行を盛んに話題にしている。

「もう3年近く日本に行っていないし、今は円安の恩恵を存分に受けられる」(40代女性)というのが多くの香港人の想いだ。かつては香港が日本人にとっての「買い物・グルメ天国」だったが、今や経済的に豊かになった香港人が日本を「グルメ・買い物・観光天国」と言ってやってくる時代なのだ。

航空会社はコロナ禍で大幅に減便したため、航空チケットを取りづらいが、「今後便数を増やしていくようだし、チケット代が多少高くても遊びに行きたい」という香港人は多い。クリスマスや新年、春節とまとまった休みに日本を目指す香港人は少なくなさそうだ。

こうした状況に戦々恐々なのが、香港の飲食店だ。香港市民が日本を始め海外旅行にこぞって出かけていくようになると地元客の飲食機会が減る。香港政府は入境後の強制隔離は撤廃したが、到着後3日間の健康観察期間中の店内飲食を禁止しているため、外国人観光客にとって来港の魅力は薄い。このままでは海外に出かけていく香港人の数に見合う来港客が期待できず、店の売り上げは減少するとして、香港政府に健康監察も撤廃するよう求めている。

さて、先日も香港人の友人が、「妹夫婦が11月の大阪行きチケットをゲットした。うらやましい。チケットが高くてもやっぱり日本に遊びに行きたい」とつぶやいていた。先陣を切って日本旅行に行った人たちの土産話に刺激され、日本を目指す香港人が増えることは間違いない。「第二の故郷」への里帰りを楽しんでいる香港人の姿を日本の津々浦々で見かけることになるだろう。(了)

旅行会社の店頭は日本各地の観光広告でいっぱいだ

訪日観光再開後の香港人観光客を話題にした香港と日本の記事を紹介している旅行会社

香港人に人気の昇龍道を宣伝する広告

■筆者プロフィール:野上和月

1995年から香港在住。日本で産業経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機関に勤務。1987年に中国と香港を旅行し、西洋文化と中国文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中国返還を見たくて来港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執筆。読売新聞の衛星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、写真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見つめた返還後25年の記録」(幻冬舎ルネッサンス刊)を出版。

ブログ:香港時間
インスタグラム:香港悠悠(ユーザー名)fudaole89

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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