EV市場でBYDとCATLが快進撃、トヨタとの連携で主導権はどちらに?

高野悠介    2022年11月9日(水) 12時0分

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EV市場でBYDとCATLが快進撃を見せている。写真はbZ3。

中国メディアは「内燃エンジン時代、西側諸国は先行者利益を享受した。コア技術を独占し、中国の独立した自動車企業が追い付くのは困難だった。現在は車線変更し、西側諸国を追い越す絶好の機会が訪れている。ここ10年、国と地方を合わせて1000億元(約2兆円)以上の補助金を投入し、世界をリードする新エネルギー車サプライチェーンを構築した」とほぼ勝利宣言に等しい記事を掲載した。その象徴が快進撃を続ける比亜迪BYD)と寧徳時代(CATL)だ。2社の動きから近未来を占ってみよう。

■BYD…中国自動車メーカーのトップへ

BYDはスマホ用を含むリチウムイオン電池製造からスタートし、完成車メーカーへと歩を進めた。直近の業績は絶好調で、2022年1~9月決算では売り上げが前年比84.37%増の2676億8800万元(約5兆3537億6000万円)、純利益が282.13%増の93億1100万元(約1862億2000万円)だった。特に9月は売り上げが爆発し、中国メーカーのトップに立った。

上位5社は下記の通り。(台数/前年同月比)

1位 BYD 20万973台、153.0%増

2位 一汽大衆(フォルクスワーゲン合弁) 18万9320台、79.9%増

3位 奇瑞汽車 13万7578台、101.3%増

4位 吉利汽車 13万528台、25.6%増

5位 上汽大衆(フォルクスワーゲン合弁) 13万203台、4.1%増

中国メディアは日系メーカーと対比し、ニュースバリューを際立たせている。ホンダ中国は前年比16.8%減の10万1200台、トヨタは合弁2社の広汽トヨタと一汽トヨタの合計で前年比2万台減の18万1000台で、いずれもBYDに及ばなかった。

■BYDの世界戦略…トヨタ合弁、新EV車発売

一方でBYDとトヨタは協力関係にある。2019年に提携を発表し、翌2020年3月にEV車設計・開発の合弁会社の比亜迪豊田電動科技有限公司(出資比率50%ずつ)を設立した。

さらに2022年1月、一汽集団と合弁でバッテリーおよび関連システムの開発、製造、販売を手がける「一汽弗迪新能源科技有限公司(一汽51%、BYD49%)を立ち上げた。一汽とトヨタの合弁の一汽トヨタは世界有数の先進自動車工場を持ち、ここで比亜迪豊田電動車科技の開発したEV車を生産する。そして10月末、共同開発の第1弾である中型セダン「bZ3」が発表された。航続距離は600キロ。トヨタからは100人以上のエンジニアが参加した。

一方でBYD日本法人は7月末、高らかに日本市場進出を表明した。その前月、BYDは自動車メーカー時価総額3位に躍進している。2位のトヨタと波乱含みの2、3位連合だ。

2022年もBYDの動きは活発だ。2月に百度を自動運転技術のサプライヤーに選定、3月に英国シェルと世界的な戦略提携を締結、7月にオランダの大手ディーラーと提携、ブラジルの配車アプリ「99」と提携、8月にタイ市場への参入を表明、9月にドイツとスウェーデンへの市場参入を表明、ヨルダンの大手ディーラーと販売提携、10月にドイツの世界的レンタカー会社シクスト(SIXT)と提携し欧米レンタカー市場のEV化共同推進で合意、インド・ニューデリーでインド市場参入を表明。世界の有力企業を片っ端から味方につけ、次々と海外市場を開拓している。

■CATL…車載電池シェア35%

CATLは世界最大の車載電池メーカーで、2022年1~9月決算は売り上げが前年比186.7%増の2103億4000万元(約4兆2068億円)、純利益が126.9%増の175億9000万元(約3518億円)だった。

韓国のSNE リサーチによる2022年第3四半期の車載用電池ランキングによると、世界シェアのトップ5はCATL(35.1%)、LGエナジーソリューション(14.1%)、BYD(12.8%)、パナソニック(8.1%)、韓国SK(9.2%)だった。

CATLのシェアは2017年にトップに立って以来、上昇の一途をたどっている。海外展開が活発で、2018年7月にドイツ・テューリンゲン州と電池工場や研究センターの進出投資協定、同月にBMWと投資協定を結んだ。2019年7月にはトヨタと包括的パートナーシップを締結し、同年11月にドイツの認証機関テュフ・ラインランドと包括提携を結んだ。2020年3月にテスラにリチウムイオン電池を供給すると発表。2021年には、7月にレアメタルに頼らないナトリウムイオン電池を発売、10月に米商用EV車メーカーのエレクトリック・ラスト・マイル・ソリューションズ(ELMS)と供給契約を締結、11月にファーウェイと長安汽車と共同開発したスマートEV「AVATR(阿維塔)11」をお披露目した。

2022年には、5月にメルセデスベンツGクラスへの電池供給を発表、6月に航続距離1000キロを目指す新バッテリーパック技術セル・トゥー・パックを発表、7月に米フォードから大量受注を獲得、8月にハンガリーの新エネルギー産業基地プロジェクトへの総額73億ユーロの投資を発表、9月にBMWグループと長期契約、10月に大阪でベトナムの新興自動車メーカー・ビンファスト(VinFast)と戦略提携を締結した。

■CATLも完成車へ進出?

CATLはビンファストの世界展開をサポートする。双方はCATLの一体型スマートシャシーの開発でも協力する。電池だけでなく、シャシーも供給するとなれば、完成車製造への途はもう目前に見える。ビンファストは欧米の出資によるベトナム初のEV生産企業で、パートナーとしては主導権を取りやすく、うってつけだ。中国メディアもそれを察知し、「自動車生産を目指すCATLの“陰謀”」と題する分析記事を載せている。

一方、「“固執派”トヨタが電動化への賭け、BYDと協力して反撃」という記事も出ている。電動化に出遅れたトヨタはBYDなどの力に頼らざるを得ないという意味にとれる。いずれにしろBYDとCATLが世界のEV自動車界の中心に座り、主導権を握ったことは間違いない。トヨタと両社はいずれも2019年に提携しているが、その協業も両社の世界戦略のごく一部に過ぎないということだろうか。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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