独メディアのドイチェ・ヴェレは9日、独政府が中国企業による半導体企業2社の買収を禁止したと報じた。

記事は、ドイツ通信社が政府関係者から入手した情報として、政府が同日に、ドルトムントに拠点を置くチップメーカー・エルモス（Elmos）と、バイエルンに拠点を置く半導体企業ERS Electronicの2社の買収を禁止したと伝えた。

エルモスは7日、連邦政府がスウェーデンのサイレックス（Silex）によるシリコンウエハー加工工場の買収を禁止する可能性があると明らかにした。サイレックスは中国企業・賽微電子の子会社で、エルモスは昨年、工場を同社に8500万ユーロ（約125億円）で売却する計画を発表していた。

ドイツ経済省は8日、「中国企業による半導体工場の買収はドイツの公共秩序と安全保障に脅威を与える」とし、「買収条件がいかに穏やかな方法であっても、禁止することに比べて潜在的なリスクを取り除くには不十分」と述べた。

ドイツのハーベック経済相も同日、「半導体やチップを含む重要な産業は特に敏感に扱わなければならない」とした上で、「中国による投資はこれらの分野においてより高いハードルをクリアしなければならない。私にとって、これにはエルモス社も含まれる」と語った。また、「外国人投資家に対して何の保護もないオープンな姿勢を取ることはできない」とも警告したという。

さらに、ドイツ社会民主党（SPD）のフェレーナ・フーベルツ（Verena Hubertz）副代表は「中国企業によるエルモス工場の買収禁止は論理的。政府はこの買収案を禁止することで重要技術の売却を阻止するための明確なラインを引いている」としたほか、シュタルク・ヴァッツィンガー教育研究相は先日、「潜在的な技術移転の危険性が見られる」として政府に禁止を呼び掛けていた。

記事は、ショルツ首相がこれに先立ち、複数の省庁からの反対を押し切って中国企業の中遠集団がハンブルク港にあるコンテナターミナルの株式を25％未満という条件付きで取得することを認めたとし、「当初計画されていた35％から取得比率を下げた上での承認だったが、それでも国内外から多くの批判を浴びた」と伝えた。（翻訳・編集/北田）