同じ時期、半封建半植民国家となった中国で庶民は生きるための移住を余儀なくされ、現在の広東、広西、福建、浙江では多くの人が経済が相対的に発展していて労働市場のある東南アジアに移った。現地には巨大な中国人コミュニティーができ、旧正月も各国に持ち込まれて重要な祝いの日となった。また、米国に渡った多くの中国人労働者は、最も早い時期に米国に移り住んだアジア系グループの一つだ。陽暦の正月と区別するため、旧正月は「Lunar New Year」「Chinese Calendar New Year」の名を得たが、最も一般的なのは「Chinese New Year」だった。
第2次世界大戦後、朝鮮半島とベトナムは独立を手に入れ、冷戦期間は多くの韓国人、ベトナム人が米国に移り住んだ。人々は「Chinese New Year」を認めず、「Korea New Year(韓国の新年)」「Vietnamese New Year(ベトナムの新年)」という呼び方が生まれた。だが、「Chinese New Year」が欧米で定着して半世紀余りが過ぎる中、こうした動きが「Chinese New Year」の地位をぐらつかせることはなかった。
2004年に米国の韓国系市民とベトナム系市民は連携して旧正月のイベントを開き、米政府と商業団体に「Chinese New Year」ではなく、より多元的で包摂的な「Lunar New Year」を使うよう呼び掛けた。「Chinese New Year」は米国で比較的強い影響力を持ち続け、グーグルで「Lunar New Year」を検索するとヒットするのは大部分が「Chinese New Year」に関するコンテンツだったが、2018年以降、韓国系、ベトナム系市民はグーグルが「間違いを改める」ことを強く要求し、両国官民の広報活動と圧力の下、グーグルは最終的に「中国」の文字のない「Lunar New Year」を選んだ。
2023年の旧正月前、大英博物館が「Korean Lunar New Year(韓国の旧正月)」に関するイベントを開催して物議を醸した。現地の中国人留学生の抗議を受け、博物館側は関連する宣伝を止めたが、韓国、ベトナム両国の「旧正月の名を正す」活動は激しい勢いを保っている。
この他、欧米において「Lunar New Year」の使用はいわゆる「政治的正しさ」となり、文化の多元性の優れたマークと考えられている。「Lunar New Year」は各国の政治家や在中国大使館の新年のメッセージにもより多く見られるようになった。
ちなみに岸田文雄首相が20日に発表した春節(旧正月、2023年は1月22日)の祝辞では「Lunar New Year」と表記されている。春節祝辞について仏メディアは21日付の記事で、日本の首相による春節祝辞はこれまで、中国系報道機関のホームページなどに掲載され、日中関係や日中友好に言及するのが一般的だったが、岸田首相就任後は中国系報道機関経由ではなく直接、首相官邸のホームページに掲載され、日中関係や日中友好には言及せず、(台湾などで使われる)繁体字が追加されたと指摘。「台湾出身の華僑・華人やその他の春節を祝う習慣のある地域の人々にも気を配っていることがうかがえる」と伝えた。
ただ、中国にしてみれば、「Chinese New Year」であれ「Lunar New Year」であれ、その源は中国にあるのだから「Lunar New Year」を拒む必要はないのかもしれない。記事の筆者は、「もともと中国のもの。中国人は気にすることはない」と呼び掛けている。(翻訳・編集/RR)
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