Record China 2023年2月24日(金) 9時0分
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2022年の中国の書籍市場は「上野千鶴子イヤー」と言っても過言ではない。中国の読者の前には、上野千鶴子・東京大学名誉教授の著書が複数登場した。
2022年の中国の書籍市場は「上野千鶴子イヤー」と言っても過言ではない。中国の読者の前には、上野千鶴子・東京大学名誉教授の著書が複数登場。そこでは少子高齢化の日本が抱える老後問題が取り上げられている。
実は中国では、1991年に上野氏の「40才からの老いの探検学」が出版されている。ただ、当時の中国は高齢化率が日本のわずか半分に過ぎず、経済はようやく発展を始めた段階。多くの人はこのテーマに共感を示さなかったが、中国社会の高齢化が進むにつれて同書への関心も高まった。最近ではポータルサイト・騰訊に関連する文章も掲載されている。
総人口の減少、世帯数の増加に伴い、高齢者と子どもとの世代間分離が進み、多くの高齢者が独居で老後生活を送る。現在の中国で多く見られる状況は、出版当時の日本とかなり似ている。「経済的に豊かになるより先に老いる」「一人っ子は老いる勇気が持てない」などの話題は社会全体の関心を呼び、これは上野氏の著書への多くの共感にもつながった。
中国の60歳以上の高齢者人口は21年末までに2億6700万人に達し、中国はすでに中程度の高齢化社会を迎えた。国家衛生健康委員会の試算では35年に重度の高齢化社会となる見通しだ。言うまでもなく、中国には高齢化時代が訪れている。
そして中国の高齢者における一つのグループが、中国語で「空巣老人」と呼ばれる一人暮らしの高齢者だ。不動産管理サービスの万科物業は22年9月に発表した「空巣老人物業服務指南(以下サービスガイド)」で、「60歳以上で家族と同居していない人は1人であれ夫婦であれ『空巣老人』だ」という新たな概念を示した。
また、貝殻研究院の「2021在宅養老の現状と趨(すう)勢報告」によると、子どもや親戚あるいは専門の施設に頼る機会のある高齢者は4割近くで、独居あるいは夫婦だけの状態に直面している人が6割強を占めた。
2000年の中国では10人以上の労働者で1人の高齢者を支える状況だったが、今では5人以下にまで減り、1995年の日本に追い付いている。日本と比べ中国には「豊かになる前に老いる」問題があるため、より多くの準備が必要だ。
北京市が2015年に掲げた「9064モデル」は、社会的サービスの協力の下、家庭によるケアで生活を送る高齢者を90%、政府が購入するコミュニティーのサービスでケアを受ける人を6%、高齢者施設に入居する人を4%としている。一方、上海市では90%の高齢者は家庭によるセルフケア、7%はコミュニティーによる在宅サービス、3%は施設によるサービスという「9073養老モデル」が打ち出された。いずれも国家衛生健康委員会の試算に応じたもので、中国では35年に重度の高齢化社会を迎えた後、90%以上の高齢者が在宅あるいはコミュニティーをよりどころに生活を送る必要があるのだ。
これらを見ると、なぜ中国が21~25年の第14次5カ年計画期間に徒歩15分の養老サービス圏を整備し、モデル的高齢者友好コミュニティーを毎年1000カ所造り、高齢者の外出、受診、消費、娯楽などの分野で全方位的なサポートを行うか容易に理解できる。
また、政府の措置以外に民間のコミュニティー養老サービスシステムも一人暮らしの高齢者をケアする役割を担っている。前述の万科物業のサービスガイドは管理している団地の1万3000人以上の高齢者に対する調査研究によって生まれたサービスシステムだ。現在、このシステムは福建省福州市などで相次ぎ展開され、将来的にはサービスエリア内の全ての団地に広がっていく見通しだ。
サービスガイドには高齢者の年齢や体力、異なるニーズに基づくサービスが設けられ、例えばスマートフォンやソフトウエアなどの使用方法に関するレクチャーや、スタッフが定期的に訪問して雑談をしたり、買い物や薬の補充、銀行にお金をおろしに行ったりするなどの内容が含まれる。さらに「緊急通報ボタン」などの設備によって高齢者の安全を守っている。
上野氏の著書には「施設に行きたくなく、子どもとの同居も望まない高齢者は少なくない」という考え方が含まれている。「家族がそばにいようがいまいが、家で日々過ごし、家で人生を終えたい」。国は違えど日本と中国の高齢者の思いは同じだ。
独居高齢者問題の解決には社会保障制度、資金の十分な備えだけでなく、高齢者に安心を届ける万科物業のようなサービスも求められる。(RR)
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