村上直久 2023年2月24日(金) 7時20分
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ロシアのウクライナ侵攻が始まって2月24日で1年。ウクライナ戦争は2年目に入る。戦況はこう着状態。昨年末以来、東部ドネツク州の要衝バフムートをめぐる一進一退の攻防戦が続き、注目を集めている。
ロシアのウクライナ侵攻が始まって2月24日で1周年。ウクライナ戦争は2年目に入る。戦況はこう着状態。昨年末以来、東部ドネツク州の要衝バフムートをめぐる一進一退の攻防戦が続き、注目を集めている。1月に米国やドイツをはじめとする西側諸国が高性能の重戦車の提供に同意したこともあり、これらの戦車が戦場に投入される春以降には戦線は徐々に拡大し始めるとみられる。米国など西側諸国が供与する兵器はコンピューターによる精密誘導兵器が多く、米国などのウクライナの戦闘作戦への関与度は高いとみられる。こうした中で和平交渉の見通しはどうなっているだろうか。
米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、クリストファー・コールドウェル(Christopher Caldwell)氏は、「バイデン政権は(ウクライナ)戦争をエスカレートさせつつある。実際、米国は(コンピューター技術を使い)戦場においてウクライナに代わってロシアの主要な敵となりつつある」との見方を示した。同氏は、「ある地点から米国はもはやウクライナを助けているとか、助言しているとか、武器を供与しているだけとは言えなくなるだろう。この地点にいつ到達するのかそれともすでに到達したのか言うのは難しい」と付け加えた。
これは言い換えればウクライナ戦争は直接的にはロシア軍とウクライナ軍の戦いだが、ロシア対米国の”代理戦争”の側面もあるということだ。ロシアのプーチン政権は、同国はウクライナの背後の北大西洋条約機構(NATO)を相手にしていると主張している。
ところでロシアは開戦当初、ウクライナの首都キーウに”衝撃と脅迫”の電撃作戦を仕掛け、郊外の空港を占拠。ゼレンスキー政権の要人らあらかじめリストアップした人物を逮捕、処刑し、開始から72時間以内に占領を完了しようと計画していたことが、ウクライナ政府高官らによって明らかにされている。しかし、プーチン政権はウクライナ側の抵抗を過小評価するとともに、奇襲作戦でウクライナを屈服させ、かいらい政権を樹立することができると誤算していたようだ。
ウクライナ戦争はその後、ミサイル、ドローン攻撃や塹壕戦を伴う、東部、南部を中心とした、一進一退の攻防戦の様相を呈してきた。
ただ、こうした戦況は重戦車やクリミア半島に到達可能なミサイルの提供によって変わる可能性がある。不確定要素はあるものの、戦線は中期的にはゆっくりとかつ段階的に拡大しそうだ。
ウクライナがロシア軍を国内から追い出すために徹底抗戦にこだわり、プーチン大統領に屈辱を与えるようになれば、同大統領は、脅しにとどまらず、核兵器の使用を決断するかもしれない。今回の戦争では、全当事者はこれまでロシアとNATOの直接的な衝突を避けるために細心の注意を払ってきた。核の“ロシアルーレット”のゲームに巻き込まれないためだ。
そうした中で、NATOは今後、ロシアにおける”レジームチェンジ(体制転換)”の誘惑にかられるのだろうか。それともウクライナ支援のコストがそれから得られるものを上回り始める前に戦争の終結のための交渉などを通じたチャンスを模索するのだろうか。
交渉では新たな国境の画定に加えて、1:ウクライナにおける政権の政治的志向、2:クリミア半島の地位、3:ウクライナ東部におけるロシア系住民の居住地、4:ウクライナのロシア、NATO、EU(欧州連合)との関係、5:ウクライナにとっての和平合意の保証、6:西側の対ロシア制裁の解除時期、なども主要交渉対象だ。
本格的な交渉の開始時期や全当事者に受け入れ可能な決着のための最低条件は、戦いの行方に左右されるだろう。そして交渉による停戦や和平合意に先立ち、戦闘は一時的に激化するとみられる。そして双方は、交渉が始まった時、交渉を有利に進めるために、それまでに戦闘によって支配地域を少しでも拡大しようと努めるだろう。
今後1年間、戦争は続くのか。それとも曲がりなりにも停戦、和平が実現するのか。戦闘継続の場合、核戦争の影がちらつく危険なエスカレーションの道をたどるのか。世界が注視している。
■筆者プロフィール:村上直久
1975年時事通信社入社。UPI通信ニューヨーク本社出向、ブリュッセル特派員、外国経済部次長を経て退職。長岡技術科学大学で常勤で教鞭を執った後、退職。現在、時事総合研究所客員研究員。学術博士。
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