中国政府が新型コロナウイルスの感染予防・抑制措置を最適化したことで中国の観光業は回復し始めた、と国営メディアが報じた。この中では「中国人観光客が世界各国の現地経済を後押ししている」と指摘。「夏季には全面的な回復局面を迎える」とみている。

中国網によると、中国観光研究院は2023年の中国国内観光収入が前年同期比95％増の約4兆元（約80兆円に上り、19年の水準の約71％まで回復すると予測した。23年の出入国旅行者数は前年の倍となる延べ9000万人を超え、コロナ禍前の水準の31.5%まで回復するとしている。

中国は中間所得層の規模が拡大し、旅行者が年々増えている上、中国人観光客の平均支出も高いため、ますます重要な市場になっている。10年から19年までに中国人の海外旅行支出は倍増し、19年には世界全体の16％を占めた。現在、中国人観光客が国際的な旅客流動に戻りつつあることは、観光業の割合が大きい経済体に新たな資金を注入することを意味する。

世界観光機関（UNWTO）は19年に世界最大の出国旅行市場である中国が国民の海外旅行を再開したことは、アジア太平洋地域と世界の観光業の回復を大きく促進するとの見方を示した。

米「FXStreet」ウェブサイトは経済学者の分析を引用して、中国による防疫措置の最適化で、今年は世界の観光業界が大きく飛躍すると予想した。逆風が残るにもかかわらず、23年の国際旅行者数はコロナ禍前の80～95％に上る見込みだ。例えばマレーシアでは、強力な観光活動が同国のGDPを少なくとも1％押し上げる可能性がある。

シンガポール「ザオバオ（聯合早報）」は、中国が国民の海外旅行を再開したことは、中国人観光客がシンガポールに戻ることを促進し、現地の消費を後押しすることで、年間20億シンガポールドル（約2020億円）の小売売上高を生み出すと試算した。シンガポール政府観光局国際局大中華圏首席代表兼事務局長の潘政志氏は「シンガポールと中国の間で旅行が再開したことは、シンガポールの観光業成長とビジネス交流に役立つだけでなく、世界の航空ハブとしてのシンガポールの地位を強化するだろう」と話した。

アラブ研究院のカマル所長はメディアの取材に対し、「中国はエジプトを含む多くの国にとって重要な観光客供給国であり、中国人観光客の訪問は旅行先となる国の収入増につながる」と回答。「さらに重要なのは中国経済が持続的に上向き、世界経済の回復に力強い原動力を注入していることだ」と期待を寄せた。（編集/日向）