中国のロボタクシーが北京・上海で完全自動運転をスタート、激しい争いに日産も参入

高野悠介    2023年4月7日(金) 9時0分

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中国で自動運転タクシーの実験が新段階へ移行している。写真は小馬智行の自動運転車。

中国で自動運転タクシー(ロボタクシー)の実験が新段階へ移行している。商業ベースに乗せようと各都市、各企業が激しく競い合う。2022年に世界の主要自動運転企業はおしなべて株価を下落させてしまった。見直しの1年だったが、中国の最前線ではL4級(特定条件下における完全自動運転)からL5級(限定なしの完全自動運転)へ着実に進んでいた。代表的プロジェクトを取り上げ、最新状況を確認してみよう。

百度、小馬智行…北京で完全自動運転

北京のロボタクシーは3月中旬に新段階に入った。これまでの走行では、万一に備え、運営側の係員が同乗していた。それが今回、百度(バイドゥ)と小馬智行(Pony AI)の2社が完全自動運転の許可を得た。範囲は亦庄経済開発区の60平方キロメートルで、営業時間は午前7時から午後10時、初乗料金は18元(約360円)。百度の完全無人走行は武漢重慶で先行していたが、今回、満を持して、首都北京での展開をスタートさせた。

検索エンジンで成功したIT大手の百度は、中国の自動運転を代表する企業でもある。2013年に研究開発を開始し、2017年には国家4大AIプロジェクトに指定された。2020年10月に北京でロボタクシーサービスApollo Goをスタート。2021年4月に自動運転車Apollo Go 35台が初めて営業許可を取得した。同年8月、ロボタクシープラットフォーム「蘿蔔快跑」を発表。試験区は北京を筆頭に広州長沙、滄州、上海、陽泉、深セン、鳥鎮、武漢、重慶へ拡大した。2030年には100都市への展開を目指している。

小馬智行は2016年に彭軍氏と楼天城氏の2人により設立。彭軍氏は百度の自動運転部門のチーフ、楼天城氏は競技プログラミングTopCoderの10年連続の優勝者だ。米中両国で自動運転の運営サービスを展開し、シリコンバレー、広州、北京、上海に研究開発センターを持ち、トヨタ、ヒョンデ、第一汽車、広州汽車などと提携している。

■AutoX…上海浦東の中心街で完全自動運転

3月下旬、同じように上海も新段階に入った。上海市は初の「浦東新区無駕駛人智能網聯汽車創新応用通知」をAutoX(安途)に交付した。やはり2020年から行っていた係員同乗から脱し、完全自動となる。営業範囲は浦東新区中心部を含む「浦東智能網聯汽車開放道路」だ。浦東新区幹部は、巨大都市中心部におけるサービス提供は自動運転の産業化、商業化へ向けて重要意義を持つと述べた。北京より進化していると強調したいようだ。

AutoXは2016年に米プリンストン大学の元教授・肖健雄氏が創業した。2020年1月にフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と提携。同年8月に上海のタクシー大手・大衆交通と、2021年4月にホンダ中国と提携した。

2021年11月に深セン市坪山区の168平方キロメートルの範囲でL4級ロボタクシーの運営テストを開始した。同年12月には江蘇省常州工場のロボタクシー生産ラインを初公開した。エンジニアは1000人を超え、深セン、上海、シリコンバレーなど世界13都市で自動運転データを収集中だ。

■文遠知行…日産蘇州で試験運用

日産中国は3月中旬に日産出行服務有限公司のロボタクシーが蘇州市で正式に試験運用を始めたと発表した。サービス範囲は蘇州高鉄新城核心地区。蘇州市民は「e-23」というアプリで車を呼ぶ。車内にはバーチャルアシスタントが同乗し、乗客の指示を受けて運行する。文遠知行(WeRide)の技術サポートで行われる。

文遠知行は2017年設立。「自動運転の未来を形成」「人類のモビリティを変革」など高い目標を掲げている。広州グローバル本社の他、世界8カ所に支社を設立し、L4級では世界のリーダー的存在となった。

創業者はやはり百度の出身だ。その1人、韓旭氏はイリノイ大学の電子工学博士で、ミズーリ大学の終身教授でもある。2014年に百度北米研究所に採用され、2016年には自動運転部門のチーフサイエンティストとなる。もう1人の王進氏も、百度の自動運転事業部マネジャーだった。2017年に共に百度を退社し、文遠知行を起業した。しかし王進氏は「競業避止義務」により百度から訴えられ、新会社のCEOに就けなかった。そのため技術畑の韓旭氏がCEOとなった。

2018年9月に通信3大キャリアの1つ中国聯通と提携。同年10月にルノー、日産、三菱連合が文遠知行へ出資し、日産との関係が始まる。2019年11月に広州市で国内初のロボタクシー運用サービスを始めた。黄浦区と広州開発区の限定エリア144.65平方キロメートル、係員同乗の形態だが、車は日産車だった。蘇州での新たな取り組みはこの発展形と言えるだろう。

■日本のレベル4スタート…異なるアプローチ

このように中国の自動運転はL4級から、残る制約は範囲だけといういわばL4.5級へ進みつつある。

日本では4月から改正道路交通法が施行され、「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」が動き出した。高速道路でのトラックの隊列走行や公共交通の貧弱な地方でのコミュニティーバスなどを想定しているようだ。地域課題のソリューションとして、エリアや車種を拡大していく。中国のようにまず試験区ありきではない。どこでも申請し、許可されれば、運営可能となる。対照的なアプローチだが、社会実装はどちらが早いのだろうか。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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