1日に最多280人が応募した「パンダ飼育員」の採用がゼロだった理由は?―中国メディア

人民網日本語版    2023年4月12日(水) 8時30分

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飼育下のパンダの一挙手一投足が現在、これまでないほど注目を集めている。

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飼育下のパンダの一挙手一投足が現在、これまでないほど注目を集めている。そして、各大手セルフメディアプラットフォームでは、「パンダムービー」が大人気となり、「癒し」を求めて多くの人が視聴している。大人気のパンダがいる動物園にも観覧客が殺到しており、「1時間並んで、パンダを見ることができるのは3分」という状態になっているものの、その人気は衰えをみせていない。

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パンダが大ブームとなっていることで、これまであまり注目されていなかった「パンダ飼育員」も今、脚光を浴びている。

江蘇省常州市管轄下の溧陽市の南山竹海景勝地にあるパンダ館は先ごろ、「パンダ飼育員」を募集したことで、検索のトレンド入りしたほか、「パンダ飼育員に数百人が応募したものの、採用者はゼロ」というハッシュタグが付いた話題にも注目が集まり、「パンダ飼育員を探すのはそんなに難しいのか?」といった疑問の声もたくさん上がった。

■パンダの糞便を両手で割って細かくチェック

パンダの生まれ故郷は、長江上流の標高の高い山や深い谷で、靄のかかるうっそうとした竹林だ。パンダは数百万年かけて、環境に適応するために、徐々に食性を変え、竹を主なエサとするクマ科の動物へと進化してきた。毎日食べる食物のうち、竹が90%以上を占めている。


江蘇省天目湖・南山竹海パンダ館の飼育員・李子瀟さんは早朝5時半には起きて身繕いし、朝食を食べる暇もなく、パンダの朝食の準備を始める。

そしてパンダが朝食を食べ終わるとすぐに次のエサを準備をする。成獣のパンダが1日に食べる竹は約25キログラムにもなるため、飼育員たちは1日に何度も竹を補充しなければならない。

「パンダが食べる様子を見ていると、自分もお腹いっぱいになった気分になる」と充実感を漂わせながら話す「90後(1990年代生まれ)」の李さんは満面の笑みを浮かべていた。江蘇農林職業技術学院で牧畜・獣医を専攻していた李さんは2015年に卒業すると、南山竹海景勝地で動物飼育員として働くようになった。

李さんは、「ここに来るまでは、景勝地によくいるサルやタンチョウを世話するのかと思っていた。そうしたら出勤1日目に、国宝と言われるジャイアントパンダの世話をすることを知った!」と話し、出勤1日目の「サプライズ」に気分が高揚したことを今でも鮮明に覚えているとした。

朝食となる竹を準備した後、李さんはすぐにパンダ2頭を屋外に移動させて、朝食を食べさせる。そして、夜間パンダがエサを食べたり、休んだりする室内エリアの掃除を始める。糞便を掃除する前にはそれをじっくり観察するほか、そのうちの1つを両手で割って、細かく観察するという。

パンダの糞便を観察することで、色々なことが分かり、飼育員は糞便の形状や状態を見て、エサを調整するのだという。両手で割って細かく観察するのは、寄生虫の有無をチェックするためという。

「私たちパンダ飼育員は、排泄処理担当であるだけでなく、パンダの看護師でもある。日夜世話をしながら、体調をチェックして、対応もしなければならない」と李さん。


■4時間かけて蒸した「愛の詰まった蒸しパン」

ジャイアントパンダは腸が短いため、食べたものをすぐに排泄する。もともと肉食の祖先から進化を遂げたパンダは、少しずつ竹を食べるようになった。しかし現在も盲腸がなく、腸が短いという肉食動物の特徴が残っているため、ほとんどの草食動物と異なり、植物繊維を消化することができず、竹の水分に含まれる栄養分しか吸収できない。

成獣のジャイアントパンダの体重は100-150キロにもなるが、どのようにして体調を維持しているのだろうか?それは、たくさん食べて、たくさん寝るという方法だ。つまり摂取量を増やして、エネルギー消費は減らすというわけだ。そのため、パンダは起きているほとんどの時間何かを食べており、お腹いっぱいになって気分がよくなると、歩き回ったり、木に登ったり、おもちゃで遊んだりし、それらに飽きたり、疲れたりすると、寝転んで昼寝をする。次に目を覚ますのはお腹が空いた時で、起きるとまたエサを食べ始める。


李さんは、「昼夜の関わりなく、パンダは1時間食べたり、遊んだりして、また2時間寝るというのを何度も繰り返す。食っちゃ寝を繰り返すダラダラした生活は、本当に羨ましい。でも、それが理由で飼育員の仕事はハードになり、夜でも、当直が一人必要。夜でも、飼育員は数時間おきに起きて、巡回し、パンダの状態をチェックしなければならない。もし、竹がなくなっていると、すぐに補充しなければならない。パンダは目が悪く、人間の視力でいうと0.6ほど。でも、臭覚が非常に鋭く、夜にお腹が空いたときは、電気がついていなくても竹を見つけて食べることができる」と笑顔で話す。

またバランスの取れたエサを与え、栄養をしっかり摂取させるため、飼育員は決まった時間に、決まった量のきれいに洗ったリンゴやニンジン、「特製の蒸しパン」を与えている。

その黄褐色の特製の蒸しパンは、飼育員が毎日自分たちで作っている。レシピは米粉、トウモロコシ粉、きな粉、白糖、塩。それらを混ぜて練り、途中で卵をいくつか入れ、4時間かけて蒸すという。添加物などは入っておらず、とてもヘルシーなため、李さんは「愛の詰まった蒸しパン」と呼んでいる。

「私も味見したことがあるが、蒸しパンは固めで、あっさりとしていて、なかなかおいしい。竹が主食であるものの、飼育下のパンダはこの蒸しパンも大好き。毎朝10時と午後2時、5時に、カット済みの300-400グラムの蒸しパンを口元まで運んで与えている」のだという。

そして、「パンダ1頭に与える蒸しパンの量は1日1200グラムまでに抑え、しっかり管理している。パンダは蒸しパンが大好きであるものの、食べすぎは厳禁。やはり竹をメインにしなければならない」という。

■数百人の応募あるも、採用はゼロ?

糞尿を処理し、消毒し、タケノコを掘り、蒸しパンを作り、竹を運び、夜は一人でパンダの世話をするパンダ飼育員の仕事は実にハードだ。

先月末、李さんのある同僚が体調を崩して退職することになったため、南山竹海景勝地は新たな飼育員を募集した。ただ彼らを驚かせたのは、数年前と異なり、ほとんど知られていなかったこのポストに応募が殺到し、一番多い日で280通もの履歴書が送られてきたことだった。

ただ、応募が殺到したにもかかわらず、なぜか採用者はゼロだったことが、ネットユーザーの間で話題となり、「高嶺の花のポストはなんとパンダ飼育員」といったコメントが寄せられたほどだった。

この件について、「事情を知る関係者」である李さんは、「この仕事のハードルが高すぎるというわけではない。牧畜や農業学校の関連する学科で学んでさえいれば、パンダを飼育する上で必要となる専門的なスキルについては働き始めてから、飼育チームの中ですぐにマスターすることができる。関連した飼育業務の経験者なら、学歴に対する要求がさらに低くなる」と笑顔で説明した。


「履歴書を送って来た若者数人と連絡を取ってみた。しかし彼らは仕事の詳細を知ると、迷った挙句、皆あきらめてしまった。特に女性は、景勝地の山にある小さな木の小屋で、夜に一人で当直しなければならないと聞くと、ほとんどが尻込みしてしまう」という。

その上、パンダ飼育員の月給は5000元(1元は約19.1円)と、決して高いとは言えない上、年間通じて週休は1日。法定の祝祭日も出勤しなければならないだけでなく、そのような日は普段よりも忙しくなる。

「パンダの世話ができる」と思って衝動的に履歴書を送ったものの、現状を知って「熱が冷め」てしまう人がほとんどで、実際にその仕事を始める人は少数なのだという。

一方、これまで「パンダ飼育員」一筋で頑張ってきた李さんは、「私の実家は500キロ離れた江蘇省徐州市にある。でも、ここに来てパンダの世話ができることはとても幸せなこと。ここは空気がきれいだし、パンダもかわいい。2年前には、生まれ故郷にいた祖母もここに引っ越してきて、暮らすようになった。私自身も近くの天目湖鎮に家を買い、この地に定住する計画」と話す。

そして志を同じくする仲間というものは必ずいるものだ。李さんは取材に対して、「ようやく新しい飼育員が決まった。貴州省出身の男性で、牧畜・獣医関連を専攻していた新卒の大学生。もうすぐここに来て、専門的なトレーニングを受けることになっている」と説明した。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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