Record China 2023年5月10日(水) 16時0分
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中国メディアの工人日報は7日、「なぜ中国は『スラムダンク』を生み出せないのか」との記事を掲載した。
井上雄彦原作の漫画・アニメ「スラムダンク」は中国でも非常に人気が高く、4月20日に中国で公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」も前売り分の興行収入が1億1500万元(約22億3000万円)を超え、中国で上映された海外アニメ映画の前売り最高記録を更新するなど大ヒットしている。
記事は、映画「スラムダンク」のヒットを見るとどうしても頭をよぎる疑問があるとし、それは「なぜ中国では『スラムダンク』(のような作品)を撮ることができないのか」ということだと説明。「もちろん芸術に国境はなく純粋に作品を楽しめば良いのだが、現実として芸術家には母国があり、文化はその国のソフトパワーの一つだということは、すでに共通認識になっている。そのため、中国人である私たちが『スラムダンク』に少しだけ羨望(せんぼう)や嫉妬の念を抱くのも人情だろう」とした。
その上で、「中国アニメが日本アニメに勝てないということをさらに細かく見ることもできる。例えば、スポーツをテーマにした作品では、なぜ中国は『スラムダンク』のような爆発的ヒット作を生み出すことができないのか。中国にも『大鬧天宮(大暴れ孫悟空)』や『哪吒』などヒットしたアニメがあるためこのような言説に納得できない人もいるだろうが、中国のアニメが日本のアニメのような社会現象を巻き起こすような作品を生み出すのが難しいというのは争いようのない事実だ」と論じた。
そして、「日本のアニメには完全な産業チェーンがあり、漫画家から声優、音楽、アニメーション技術、視聴者に至るまで暗黙の好循環が形成されている。しかし、中国でアニメといえば依然として子どもに見せるものというステレオタイプなイメージがある。また、『スラムダンク』『キャプテン翼』『タッチ』などは何十年にもわたって人気であり続けているが、中国のアニメは散発的でそれに携わる人々もそこそこ売れればそれでいいという気構えだ」と日中を比較した。
記事は、今年初めに中国で公開された卓球を題材にした映画「中国乒乓之絶地反撃」が期待されながらも興行収入はやっと1億元(約19億5000万円)を超えるほどと惨たんたる結果だった一方、「スラムダンク」は公開から5日で4億元(約78億円)を超えたことを挙げ、「両者のコントラストに胸が詰まる思いだ」と言及。「中国はスポーツにおいて日本よりも強く、卓球は中国において国技と言われる誉れ高いものだが、なぜ私たちのスポーツ作品はヒットしないのか」と改めて疑問を提起した。
そして、「技術や資金面の問題というよりも、むしろ人の創作理念だろう。後は、物語をより面白く、より感動的に表現することだ」とし、「映画は総合芸術であり、画面、音楽、ナレーションなどはとても重要だが、いずれも内容に沿ったものでなければならない。感動的なストーリーを語っても、最終的には観客に共感してもらわなければならない」とした上で、「『スラムダンク』では主人公が敗れたり、平凡な生活に戻ったりする結末が描かれる。“青春に無念さは付き物”というストーリーを描くのは非常に高度だ。一人ひとりの平凡さを直視し、それぞれの光る部分にフォーカスする。このような描き方は、すべての人に自分の可能性を感じさせ、結果として共感を呼びやすいのではないだろうか」と分析した。
一方で、中国の作品については「(女子バレーボールを描いた)『奪還』にしろ、『中国乒乓之絶地反撃』にしろ、壮大さを追求しすぎており、優勝に向かってひた走るというテーマの中で人物は詳しく描かれずに薄っぺら。観客の心に響くことはないため、興行収入が理想的でないのも道理だ」と指摘。「『スラムダンク』をノスタルジーに乗じているだけと批判する人もいるが、そんなに簡単なものではない。それは心の共鳴、感情の触発、時間の浸潤を必要とする。だから、お金を払って映画館で観賞する人たちはばかではないし、何度も観賞する人も狂っているわけではない。作り手が芸術を尊重すれば、観客はその作品を尊重する。簡単な理屈なのだ」と結んだ。(翻訳・編集/北田)
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