中国新聞社 2023年5月19日(金) 11時30分
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米国の共和党トランプ前政権は、とりわけ厳しい対中政策を断行した。民主党バイデン政権になっても、対中政策に目立って大きな変化は見られない。しかしそんな米国の対中政策を批判する米国人専門家もいる。
米国は共和党トランプ前政権の時期から、中国に対してとりわけ厳しい政策を断行するようになった。次の民主党バイデン政権は政治姿勢が異なり、大統領の個人的性格も大きく違うはずだが、対中姿勢は前政権と同様に強硬だ。米国には、このような対中政策に異議を唱える研究者もいる。米ハーバード大学フェアバンク中国研究センター主任を務めた経験もある同大学東アジア学部のマイケル・セーニ教授と、アジア史や国際問題を専門とする米ウースター工科大学のジェニファー・ルドルフ教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、米中関係についての考えを披露した。以下は両教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
ルドルフ:中国は人口の多い大国で、過去数十年で大きく変化した。米中関係は複雑極まりなく、単一視点だけで考えることはできない。そして、政策の専門家であろうと、中国問題の専門家であろうと、一般の人々であろうと、その人の視点が客観的に正確かどうかを見分けることは難しい。
セーニ:今の米国で中国を論じる人の多くは、中国についてほとんど知らず、中国問題についての研究経験もない。このような人は現実の中国から離れた場所にいる。
ルドルフ:われわれは人々に、米中関係の複雑さをもっと理解してもらいたい。米中関係をいくつかの、あるいは一つの側面の問題だけに単純化することはできない。
米中関係は、おそらく世界で最も重要な二国間関係であり、国際関係の安定にとって重要だ。ところが近年、米中関係はさまざまな面で危機にひんしているように見える。例えば新疆関連、台湾関連などの問題はいずれも複雑で敏感だ。そう言う問題を論じるなというのではない。実際には米国でも中国でも、両国関係で何を優先すべきかの模索が進められている。政策担当者に思い起こしてほしいことは、両国には緊密な結びつきがあることだ。経済や貿易関係だけでなく、気候変動などの世界的な課題への対応においても深く関連している。
セーニ:中国語には「一葉障目(1枚の葉が目を遮る)」という言い方がある。「目の前のささいなことに気を取られて、物事全体が把握できなくなる」ということだ。英語にも同様の表現がある。おそらくこれが、米国が対中関係を処理する際に直面する最大の問題だ。米国の対中政策、そして米国人が中国に対する態度を決める際には木と森の両方を見なければならない。つまり、当面の課題を解決する方法は見いださなければならないが、もっと大切なことは、長期的かつ全体的な二国関係だ。
例えば台湾問題だ。米国では台湾問題にも絡めて米中関係について政府に提言する人が多い。しかし、そのような人がよりよい米中関係の構築を考えているとは限らない。多くの人は、米国内政治の党派争いの都合で発言している。多くの提言は状況を単純化しているが、現実ははるかに複雑であるために、これらの提言の多くは非現実的だ。
現在、米国の二大政党は、米国の対中政策は変えなければならないということでは一致している。しかし、米国の指導者が中国を「米国の敵」にしようと望んでいるのではないことは、よく知っておくべきだ。
ルドルフ:今では多くの米国人研究者が、中国を米国の競争相手だと考えている。しかしそれは、米国が中国から学ぶべきではないということを意味するのではない。中国には米国が学ぶべきものが多くある。例えば、中国のインフラ建設、あるいは貧困削減での成果だ。両国は多くの分野で互いに学びあうことができる。また、米国が世界的なリーダーシップを維持したいのならば、まずは国内問題を解決せねばならない。
セーニ:米国が中国と競争する際にもっとせねばならないのは、自国内の秩序を整理することだ。米国の成功の鍵は中国を弱くすることではない。一部の分野では、米国は中国の発展に伴う試練に直面しており、対応策を見いだす必要がある。しかし、米国が直面しているさらに大きな課題の1つは、自国内の深刻な分断と政治の機能不全に対処することだ。
米国と中国の関係を「ゼロサムゲーム」、つまり一方が勝ち取りすれば、もう一方が負けて失う関係と考える人もいる。しかし、それは間違っている。例えば、ルドルフさんがさいほど言及した中国のインフラ建設の能力だが、仮に両国が協力して米国国内で高速鉄道を建設できれば、米国は高効率の地上輸送手段を得て、中国は金銭面の利益と米国で建設した実績を得ることができる。双方とも利益を得ることになるので、これはゼロサムゲームではない。
米中の国際的なリーダーシップをめぐる競争に言及する人もいる。中国は国際機関の中でより大きな発言権を求めていることは確かだが、それは国際秩序を破壊することと同義ではない。もし中国が本気で国際秩序を破壊しようと考えているならば、国際組織には全く加わらないはずだ。
私の同僚で友人のグレアム・アリソンは、「ツキジデスの罠(わな)」という概念に言及した。古代ギリシャの歴史家のツキジデスの見解に由来する言い方で、新興勢力が台頭すると既存勢力の不安が増大して、戦争につながるという考え方だ。しかしグレアムは研究を通して、米中関係は過去の歴史の事態と全く同様には進んでいないと結論づけた。米中関係がなぜ、過去の事例と異なるかと言えば、両国には多くの分野で「融合」が発生しているからだ。例えば経済や科学技術や教育の分野だ。多くの分野で両国は、相手を切り離すことができない状況になった。また両国はそれぞれが、多くの共通の課題に直面している。
ルドルフ:米中関係の特徴の1つは、その及ぶ範囲の大きさでだ。冷戦期の米ソは、経済がそれぞれ別個に作動していた。現在の米中間の経済の結びつきは切っても切れない。人や文化の交流も非常に密だ。「ゼロサムゲーム」や「ツキジデスの罠」などの概念で米中関係を論じようとしても、その主張に反論できる事例はあまりにも多い。(構成 / 如月隼人)
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2023/5/18
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