ネット通販の落とし穴、商品に「問題」発生させ賠償請求を繰り返した大学生―中国

Record China    2023年5月30日(火) 0時0分

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山東省内の大学に在籍する20歳の男子学生が、ネット通販で購入した食品に自分で虫を入れて、損害賠償をだまし取る行為を繰り返していたことが分かった。消費者保護の風潮や制度を逆手に取った犯行だった。

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中国メディアによると湖北省武漢市警察はこのほど、山東省内の大学に学生として在籍する20歳の男の身柄を拘束した。男はネット通販を利用して購入した菓子類に虫を混入させ、販売側から損害賠償金を受け取る行為を43回も繰り返していた。中国ではネット通販に関連して、消費者保護と業界の健全な発展を促すために、商品に問題があった場合の販売側の対応を定め、問題があった場合には当局が厳格に対処している。男の行為は当局側が目指す「質の高いネット社会の構築」の落とし穴を示したとも言える。

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Zさんは湖北省にある企業のカスタマーサービス担当者だ。2021年10月のある日、いつものように顧客からの問い合わせに対応していたところ、こんなクレームメッセージが届いた。「おやつを買ったんだけど、虫と羽が入っていた」――。

製品はすでに開封されていると伝えられたが、Zさんは「顧客を信じる」の原則に従って処理することにした。相手は「もう食べてしまった。体の調子が悪い。200元を賠償すべきだ」と伝えてきた。Zさんは従った。「一件落着」と思ったが、そうではなかった。その後も同様の苦情と賠償請求が続くようになった。

相手はいつも「商品は開封した」と主張し、送り返すことを拒否した。さらに、生産段階で混入するはずのない物が入っていたと主張することもあった。例えば、パンの中からスチールウールが出てきたと言ったりした。

会社の品質検査担当者は工場を検査した上で「奇妙だ。この種類の虫は、この地域にはいない」と言った。さらに生産と管理について調査した結果、苦情を言ってくる顧客の主張には疑問点が多いことが分かった。


ベテランの顧客サービス担当者が大人数で、過去2年間の苦情と賠償支払いの事例を調査した。苦情を告げて来るアカウントは十数種があると分かった。アカウントにひも付けられている住所や電話番号はさまざまだった。しかしすべてを整理した結果、アカウントと住所と電話番後の組み合わせを変えていることが分かった。つまり、会社が問題のある商品を流通させてしまい、たまたまその商品を購入した人が苦情の連絡をしていたのではなく、特定の個人かグループが、商品に問題があると偽って、繰り返し賠償金を受け取っていた可能性が高まった。

これらの調査を踏まえて、会社の法務部が警察に通報した。その結果、会社所在地の武漢市公安局東西湖区分局金銀湖警察署が速やかに捜査に乗り出した。

警察は、同一の食品会社に苦情を送り続けた人物が山東省内の大学に学生として在籍する20歳の男と割り出した。そして、山東省まで出向いて容疑者の男の身柄を購入した。警察は学生寮で、男が飼育していた虫も発見した。虫はネット通販で購入したものだった。

警察の取り調べに対して、男は自分が繰り返し行っていたと認めた。きっかけは、2021年10月にネット通販で菓子類を買った際に、商品の包装の内側に正体不明の黒い微小なものが入っていたことだった。すぐに販売側に連絡したところ、意外に思えるほど簡単に賠償金を得ることができた。その後、開封した食品に虫や羽を入れて、画像などを示して賠償を求めることを繰り返した。

不正な行為は累計で43回に達した。調査のために返品を求めた企業側に応じた商品は3点だけだった。3点とも、製造時に異物が入ったのではなく、後になり異物を入れた痕跡があった。

男は、「針で食品の包装に穴をあけて、虫を入れた」と供述した。不正に得た賠償金は7800元(約15万5000円)以上に達していた。警察は男を正式に逮捕した。男の同級生の別の学生も同じ手口で食品会社から損害賠償金を得ていたが、回数が少なかったため、警察は「教育的指導」をするだけで身柄の拘束はしなかった。同級生は警察の指導に従って、会社側に全額を返金し、手書きの謝罪の手紙を会社側に提出した。


中国でネット通販で商品を販売する会社は、顧客からの評判を極めて気にしている。そのため、購入者から商品に問題があったと連絡を受けると、きちんとした内部調査を行う前に、損害賠償をすることが一般的だ。43回も行為を繰り返した男は「簡単に金を得られる方法」と思ったという。

中国では2年ほど前から、同様の手口で食品会社を狙う事例が増えているという。比較的高級な食品を扱う企業の関係者によると、2023年前半だけでも、疑わしい事例は9件あった。うち1件では、苦情を申し立てた消費者が、他の企業の苦情を申し立てた際のスクリーンショットを送信してきたという。

この大学生以外にも、江西省省内で、いずれも2000年以降に生まれた夫婦が、ネット通販を行う会社から繰り返し賠償金をだまし取ったとして、警察に身柄を拘束された。

この2人の場合、きっかけは飲食店で注文しためん料理に、異物が入っていたことだった。2人は店主に苦情を言ったが、店主は取り合わなかった。そこで、地元当局の市場監督管理部門に訴えたところ、当局側が介入して2人は賠償金を受け取ることができた。

2人は無職なので、簡単に金銭を得られる方法だと思い、家電製品や食品類をネット通販で購入しては、商品に問題があったと称して損害賠償を受け取っていた。黒竜江省ハルビン市でも、同様の手口による犯行を繰り返していたグループが2月に摘発された。同様の犯行を繰り返す者は多くの場合、「食品安全法」などの関連条文をそらんじるほど熟知しており、メディアへの情報提供やSNSを利用した暴露、当局の監督管理部門に訴えるなどと言って、会社側を脅迫するという。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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