「日本を好きになるわけではないがそれほど嫌いでない」=頑なだった父の変化―中国人学生

日本僑報社    2023年6月18日(日) 18時0分

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「ふざけるな。日本人は昔どのように我々中国人をいじめたか、それを忘れたのか?」「いいえ、忘れないよ。でも……」

記憶の再生ボタンを押すと、過去のシーンが頭に浮かんだ。大学入学試験が終わってから、私は日本語専門に進学することに決めた。

「なぜよりによって日本語専門を選んだんだ? 法律、医学などの専門でもよかったんじゃないか」。父は苛立っているようだった。怖い顔をして私に質問した。「だって、日本語に興味があるから」。できるだけ父の目を見ないで私は答えた。「ふざけるな。日本人は昔どのように我々中国人をいじめたか、それを忘れたのか?」「いいえ、忘れないよ。でも……」「日本語を習うなんて、国を裏切るようなものじゃないか」。

私は反論したかったが、言葉が出てこなかった。父は日本が好きではないことは知っていたが、これほどまでに怒るとは思わなかった。私自身は中学の時から友達の影響で日本のアニメ漫画などに触れて、徐々に日本と日本語に興味を持ってきた。日本はどんな国なんだろう、日本人はどんな人たちなんだろうかなどに関心をもって日本語を勉強したくなった。

もっとも、正直に言えば、私も日本が好きだとは言いかねる。なぜなら、子供の頃から日本が中国を侵略してたくさんの中国人を殺したことなどを、学校で勉強して知っていたからだ。それに、靖国参拝、釣魚島尖閣諸島)の紛争のような報道も目にすることがあった。だから当然、私にも大部分の中国人のように日本人に対するある種の先入観があった。

しかし、日本語専門にしてから日本人との触れ合うチャンスがあり、日本文化への接触と共に認識も変化してきた。日本に対する印象はよくなった。父に日本をもっと理解してもらえばどうだろうか。私は試してみようと決めた。

私は父に鰻の寿司を買ってきた。「それは何」と父。「これ、美味しいものだよ、お父さんのためにわざわざ買ってきたよ」と私が答えた。「じゃ、ありがとう。いただくよ」と父が嬉しそうに食べて始めた。「なかなかうまいなあ。これは何というんだ」「これは鰻の寿司で、まあ日本の伝統食品かな」と私が言うと、父は顔色を変え箸を置いて私に聞いた。「どうしてこれを食べさせたんだ」「お父さんに日本をもっと理解させて、私の選択を支持してもらえたらって思うから」「おまえはバカか。そんな必要はない」。父の目つきは前と同じにきつい。

「お父さん、見て、この鰻の寿司、おいしいでしょ? それにしても、もし単に飯を食べたら、味が淡い。同じく、単に鰻を食べたら、塩味が強い。しかし、その二つを合わせれば、飯の淡みと鰻の塩辛みがちゃんと調和して旨みが出るんだね。つまり、飯と鰻が引き離せない関係だ。私は中国と日本もそのような関係だと思っているだけど……」「言うことはわかる。しかし日本人を友達とするのは無理だ」と父。言葉と裏腹に厳しい表情はちょっと緩んだようだ。

「私も歴史を忘れないよ。だが一途に恨みを抱いていくより歴史から経験や教訓を汲み取る方がましだと思う。恨みは傷をもたらすしかない。経験や教訓こそ新たな生き方を教えてくれるものじゃない? それに日本人の間にも中国に親近感を持ち、戦争嫌いな人がいる。我々の敵はかつての好戦的な日本人だけじゃないかな」「そうか。以前は日本にほとんど良い印象がない。おまえが言ったことも全然思わなかった。考えてみれば、僕は日本に関して知っていることは少ないなあ」と父が微笑んで言った。

その後、私は学校で出会った日本人の先生たちのことを父に教えた。あっという間に午後が過ぎた。「色々話を聞いて、日本への印象が大分改善した。好きになるわけではないがそれほど嫌いでない。そして、日本語をしっかり勉強して、将来立派な翻訳家になってほしい」と父。「うん」と私。父の目を見て笑った。

どんなことにしろ、人に好かれる第一歩は人に知ってもらうことではないだろうか。私は今後も日中友好の架け橋として、できるだけ日本文化を人々に語り、中国人の日本に対する印象を改善していこうと決意した。

■原題:日本 好きでなくても嫌わないで

■執筆者:蘇文君(南通大学)

※本文は、第18回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集『日中「次の50年」――中国の若者たちが日本語で綴った提言』(段躍中編、日本僑報社、2022年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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