2023年7月13日、中国メディアの環球網は、中国をはじめとする世界各地を席巻してきた「韓流」の勢いに陰りが見え始め、韓国国内で焦りの声が出ていると報じた。

記事は、韓国経済研究院が10日に発表した報告書で、2017年からの5年間における「韓流」に関連した経済生産高が計37兆ウォン（約4兆円）に上り、昨年の韓国の新規雇用数の約20％に相当する16万人分の雇用を創出したことが明らかになり、同院の秋光浩（チュ・グァンホ）経済政策部長が「韓国の文化産業が国際競争力を維持できるよう、韓国企業に韓流コンテンツへの積極的な投資拡大を指導すべきだ」と提言したことを伝えた。

その一方で、韓国映画産業の新型コロナ禍からの回復が予想よりも遅れているとし、今年1〜5月における韓国の映画館全体の売上高が4627億ウォン（約500億円）、累積観客数は4387万人で、前年同時期の約1．5倍となったものの、コロナ前の17〜19年の同時期と比較すると約半分の水準までしか回復していないと指摘。映画館への客足が戻らない大きな要因がチケット価格の高騰にあり、19年に1万ウォン前後（約1100円）で推移していた映画チケット価格が20年10月から3回にわたって値上げされ、現在は1万5000ウォン（約1600円）前後まで上昇していると解説したほか、韓国国産映画の売り上げが伸び悩んでおり、今年1〜5月の国産映画興行収入が前年同期比9．2％縮小、同2．10倍となった輸入映画と明暗を分ける形になったことを紹介している。

また、韓国ドラマ市場の状況も楽観できないとし、韓国紙・東亜日報が3日、韓国のテレビ局とオンライン動画プラットフォームの財政難により、多くの韓国ドラマの放送・配信元が決まらない状況で、韓国の芸能界が危機感を強めていると紹介。多くの制作会社が来年撮影されるドラマの本数について今年の3分の1に減る可能性があると見込んでおり、「失業してしまうかもしれない」と吐露する俳優もいると伝えた。

クリエイティブ産業の専門家である安東大学の教授は「今後、ヒット作や質の高いテレビドラマが出なければ、韓国のテレビドラマ産業の成長は考えにくい。既存のドラマの構図を打ち破り、新たな収入源や企画などを生み出す時に来ている」と述べているという。

記事によると、K-POPの現状について韓国最大のレコードレーベルであるHYBEの創業者であるバン・シヒョク氏は近ごろ、成長率が大幅に鈍化していると指摘し、昨年K-POPが米「ビルボードホット100」にランクインした回数は前年より53％減少したほか、東南アジアの一部地域ではK-POP作品の売り上げが減少する状況も起きていると発言した。

記事は、国内のクリエイティブ産業とオンラインプラットフォームを活性化させるために韓国政府が動き出し、科学技術通信省が6月15日に5000億ウォン（約540億円）の資金調達を行うと発表したと紹介する一方で、韓国の業界関係者からは「焼け石に水」との見方も出ていると伝えた。（翻訳・編集/川尻）