団子屋の女将さんのひと言、浅草で実感した日本の無限の魅力―中国人学生

日本僑報社    2023年7月15日(土) 21時0分

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耳の後ろから突然「ここで立って食べてくださいね」というとても通りの良い声。振り返ってみたら…。

日本では「花より団子」という諺がある。団子というのは日本の伝統的なお菓子である。コロナで海外旅行ができない今、日本のにぎやかな街である浅草、その最も賑やかな仲見世通りで食べた一本の団子のことを思い出す。味もとてもよかったが、何より忘れられないのは団子を食べる店先での特別な感覚である。

物心ついた頃から私は日本のアニメーションが好きで、今では日本文化について広く興味を持っている。同時に、幼いころから、身の回りのお年寄りから幼稚園の同級生に至るまで、日本人に対して悪い評価を下しているのをよく耳にしてきた。その度に、私は耳を針で刺されたような辛い気持ちになる。彼らは一体何故そこまでお互いが気に入らないのだろう。

歴史的な原因もあるが、現代においては主に色眼鏡をかけてお互いを見ているからだと思う。お互いの国民に悪のマスクを付けさせることがいつの間にか、ウイルスのように拡散し、人々の習慣になっているのだ。「中国人は騒がしい」「日本人は謝るのが好き」など、まるで自分で目の前に霧をかけたかのように。相手をきちんと見ていないのだ。

私は一度日本へ旅行に行ったことがある。浅草寺で観光をした時お腹が空いたので、近くにある雷門の仲見世通りに行ってみた。観光客でごった返していて忙しいなかでも、どの店も親切で丁寧に接してくれた。最も印象に残ったのは、あるお団子屋さんで買った団子を手にもって店から出ようとしていた時のこと。

耳の後ろから突然「ここで立って食べてくださいね」というとても通りの良い声。振り返ってみたら、団子屋の女将さんの、焦って汗だくになった顔が目に入った。彼女は団子をもって立ち去ろうとしている、言葉の通じない海外からのお客さんたちを店に戻らせ、店先で食べさせようとしていたのだ。たぶん、人が多すぎて団子が人の服に擦り付けられたり、竹ぐしが人を刺したりなどのことを想像して配慮してくれたのだろう。

店に戻り、私はゆっくりと団子を食べながら、外の人の往来と、どこまでも抜けるような青空を眺めていた。外の騒がしさにもかかわらず、その時、私は確かに心がしんと落ち着いた感じがした。中国の出店がある通りでは、みんなが食べ物を歩きながら食べているので、このような体験はなかなかできない。こういう「食べ歩きをさせない」というのは、お団子屋さんの女将の一種の拘りであり、一部日本人の拘りともいえるだろう。この拘りはまた、日本人の「他人に迷惑をかけない」という心理から来ていると思う。言葉が通じない海外観光客に対しても諦めず、自分の心の中の「拘り」を貫いている。大げさに言うとこれは一つの信念とも読めるだろう。

日本人のこういう何もかも細かいところが面倒くさいと思っている人もいるかもしれないが、私はこういう細やかさこそが日本文化の奥底に溶け込んでいるもので、私が無限の魅力を感じていた重要な点だと思う。これは実際に体験してみなければ理解できない魅力なのだ。つまり、他人から聞いたことやただ見たことではなく、身をもって相手の国民と接触し、ルールに反しない範囲で様々な体験をし、自分の思い込みを打ち破り、相手の文化に基づいて彼らのやり方や生活スタイルを試すことではじめて理解できるものなのである。

付き合ってみたら第一印象と全然違う人もいるように、お互いの国の、ある一日の体験の中で出会うことによって印象を変えることができると私は強く信じている。これによって、親近感を高めることができるかもしれない。

三色の団子のように異なる文化があってこそ、世界は彩りがあり面白い。目の前に立ち込めた霧をかき分け、世界の多様性を受け入れる広い心をもって、この多彩な世界を確かめることこそが今の私たちがやるべきことだと私は思う。たまには静かに立って、風景を楽しみながら一本の団子を食べるのもいい気分になれるものだ。

■原題:団子を通して見えたもの

■執筆者:鄭昀茜(天津外国語大学)

※本文は、第18回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集『日中「次の50年」――中国の若者たちが日本語で綴った提言』(段躍中編、日本僑報社、2022年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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