黄河河畔で見つかった古代ローマの銀盤、中国にやってきた経緯とは―専門家が説明

中国新聞社    2023年7月22日(土) 23時0分

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中国は極めて古い時期から、シルクロードを通じて西方世界と交流してきた。現在の甘粛省は交通の要所であり、東ローマ帝国からもたらされたとされる銀盤も出土している(写真)。

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中国は極めて古い時期から、シルクロードを通じて西方世界と交流してきた。シルクロードを東進して漢などの都の長安に至るためには、現在の甘粛省を必ず通過した。その甘粛省では、東ローマ帝国からもたらされたとされる銀盤が出土している。なお、ローマ帝国発祥の地は西欧に属するローマだが、帝国が拡大するとギリシャ人が住んでいた東部の方が文化の水準がずっと高く、オリエント世界との交易で経済も圧倒的に発達していた。東ローマ帝国は当時の西方世界では、最先端の地だった。甘粛省博物館研究部の李永平主任はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、東ローマ製の銀盤を中心に往時の東西交流や甘粛省の状況を説明した。以下は主任の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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必然と偶然が重なって黄河の古い渡し場から出土

この銀盤は甘粛省白金市靖遠県で1988年に、家を建てていた地元住民が発見し、後に甘粛省博物館に収蔵された。発見場所は古い時代の黄河の渡し場の近くだ。銀盤の差し渡しは最大31センチで、重さは3190グラムだ。製作には銀メッキや鋳造、金属板をたたいて成形する鎚鍱(ついちょう)の技術が用いられている。製作年代は紀元前2世紀から紀元2世紀で、西暦4-5世紀に甘粛省に持ち込まれた可能性が高いとされる。

中央部分の装飾はワインの神のディオニュソスを浮き彫りにしたものだ。ディオニュソスは獣にもたれている、地中海沿岸の作品に、この構図は多い。この銀盤は古代東ローマ帝国の領土内で作られたと見られている。

銀盤の周囲部分には、ギリシャ神話に登場するオリンポスの十二主神が描かれている。古代地中海沿岸の典型的なモチーフであるブドウの木の枝で銀盤の広い部分を覆い、中央部分にはトカゲ、蜂、昆虫、その他の小動物が「隠されて」いる。

葡萄の木の装飾は西洋の陶器や、金や銀の製品でも見られるが、酒神やオリンポス十二神と共に表現された貴金属盤は、この銀盤が世界で唯一だ。この銀盤の浮き彫りから判断して、料理を盛りつけるための器として使われたのではなく、王室や高級貴族のための美術工芸品だったのだろう。

この銀盤が古代シルクロードの東西交流の重要な「証人」になったのは必然と偶然が重なった結果だ。まず、漢から唐までの時代、西洋から長安に至るまでは古代シルクロードを通過して、さらにこの銀盤が出土した土地を通らねばならなかった。偶然性とは、銀盤が長安に至る目前で、予期せぬ事態に見舞われてこの地で失われたことだ。

この銀盤がどのような性格を持っていたかについては、複数の可能性があることが分かった。東ローマの有力者や中央アジアや西アジア地域の王族が対外交流のために他者に贈ろうとしたのかもしれない。西洋の商人が貿易のために持って来たのかもしれない。

中国に影響を与えた古代東ローマの文化

甘粛省ではこの銀盤のほかに、東ローマの金貨も多く出土している。山西省大同市の北魏時代の墓からは、東ローマ製の金杯などが出土した。これらの出土品は、中国の中心部だった中原と東ローマに密接なつながりがあったことを裏付ける。

古代マケドニアのアレクサンダー大王の東征後、ギリシャ文化は各地に広まり、その影響は中国のタリム盆地にまで及んだ。例えば、新疆ウイグル自治区で出土した綿布にはギリシャ神話に登場する大地と収穫の女神の姿が描かれており、出土した絹織物にはギリシャ神話に登場するヘルメスや馬の頭を持つ神の刺繍が施されている。

近年になり西安で出土した隋唐時代の陶製の置物は、ラクダに乗る酔ったディオニュソスを描いたものだ。これは隋唐時代の上層社会がすでにギリシャの酒神に関するさまざまな物語や伝説を知っていたことを示している。つまり、ギリシャ神話は中原にも伝わっていた。ただし、「郷に入って郷に従え」ということで、現地化していった。

文明や文化は相互融合によってのみ発展

当時のシルクロードでの交流の詳細を知ることは難しいが、東洋と西洋が盛んに交流していたことは想像できる。つまり東洋と西洋の文明には歴史の早い時期から相互に影響し、互いに相手の要素を吸収していた。

この銀盤は近年、米国や欧州、日本、香港、台湾で何度も展示され、かつてのシルクロードの繁栄を反映する典型的な工芸品として、世界の多くの人に愛され、評価されるようになった。中国文明は当初から、先進的な外国文化を吸収してきた。文明と文化は相互に融合することによってのみ継続し、発展することができる。東ローマの銀盤はそのような歴史的過程の縮図だ。

甘粛省は東西の諸文明にとっての「黄金の通路」だった。省内にある敦煌の壁画や彫刻などを見ても、そのことが分かる。甘粛省では西域諸国と中原王朝の盛んな交流を記録した漢代の木簡も出土している。出土した絹織物の装飾の一部には、地中海沿岸や西アジアの影響を見ることができる。

古代文明は政治、経済、文化の面で盛んに交流していた。この絶え間ない交流は、シルクロードの人々に多方面にわたる「共通の利益」をもたらした。交流が双方に利益をもたらす構図は現在も同じだ。「一帯一路」の建設は、発展が遅れている中国西部の経済と社会の発展だけでなく、沿線の国や地域の発展を促進する役割を果たすことができる。(構成 / 如月隼人



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