凌星光 2023年9月14日(木) 12時50分
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日本政府は8月24日、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を実施し、中国政府は日本の水産物の輸入一時全面禁止を宣言した。資料写真。
日本政府は8月24日、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を実施し、中国政府は日本の水産物の輸入一時全面禁止を宣言した。日中関係は急速に悪化し、懸念すべきは両国民の嫌悪感がこれにまでなく増していることだ。感情的な悪循環をいかにして理性的な好循環に変えていくかが急務となっている。ここに以下の緊急提言を行い、日中両国の有識者の賛同を得たい。
1.日本政府は処理水の海洋放出を一時中止し、事態の打開を図る。
処理水の放出問題で、日本の予想を上回る中国の反発を招いた。これについて無責任な論評が多く出回っているが、なぜこのような緊張を生んだかを真剣に考えるべきだ。日本政府は2021年4月に海洋放出を決定し、その実施時期を2023年と定め、着々とその準備をしてきた。中国は科学的根拠が不十分なことを理由に、当初からそれに反対してきた。それにもかかわらず、日本は国際原子力機関の「処理水が人間や環境に与える影響は無視できる程度」を理由に実施し、中国だけが科学を無視していると宣伝している。しかし、実際には疑問を呈する専門家は少なくない。全米海洋研究所協会は昨年12月、日本のデータに納得しないとの声明を発表した。中国の言い分にも耳を傾けるべきだ。
2.中国政府は水産物の輸入全面禁止を一時中止し、事態の打開に応ずる。
処理水の放出決定に対し、中国は国民の健康を守るために、7月上旬から日本の水産物に対して輸入規制を行い、警告を発した。8月24日に放出が実施されると、直ちに全面禁止の措置をとった。それには中国の主張に耳を傾けない日本政府に対する対抗措置の意味合いもある。今回の全面的輸入禁止は一時的としている。もし日本が一時的に放出を中止すれば、当然、輸入全面禁止が一時的に中止されることが期待できる。世界貿易機関(WTO)で争うという主張もあるが、日中友好の大局的見地に立って、なるべく避けるべきだ。
3.中国の専門家を日本に呼び、日中共同で放出水の検査をする。
中国の専門家は、原子炉の事故による原子炉を通った汚染水と通常の原発の汚染水とは性格が違う、多核種除去設備(ALPS)によるトリチウム以外の放射性物質(62種)処理のデータが不十分、東電自身による検査は信用できない、中国も含む国際チームで放出水の検査をすべきだと主張している。これらは合理的な主張で、科学的精神に合致するものであり、受け入れない理由はないはずだ。日本政府が海洋放出を選択したのは、経済的コストを考慮したためともいわれる。処理水問題は人類の生命と地球の環境に関わることであり、費用負担の国際協力システムも考慮すべきである。
4.日中政府間の外相レベルの話し合いを進める。
日中両国が一時中止を実施した上で、日中外相会談を行い、処理水問題について誠意をもって話し合い、根本的解決の道筋をつける。そのために、日中科学者による対話交流と共同検査を早期に実施する。同時に、二国間に存在する諸問題について、四つの政治文書に基づいて話し合い、基本的合意に達するよう努める。そして日中首脳会談や日中友好議員の相互訪問が今年中に実現するよう努力する。それには両国の世論が重要で、人的往来を盛んにし、日本の対中雰囲気、中国の対日雰囲気を抜本的に変えていく必要がある。それは日中平和友好条約締結45周年の記念活動を活性化させることにもつながる。
■筆者プロフィール:凌星光
1933年生まれ、福井県立大学名誉教授。1952年一橋大学経済学部、1953年上海財経学院(現大学)国民経済計画学部、1971年河北大学外国語学部教師、1978年中国社会科学院世界経済政治研究所、1990年金沢大学経済学部、1992年福井県立大学経済学部教授などを歴任。
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