2023年9月18日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、欧州連合（EU）がリチウムイオン電池の対中依存が深刻な状況にあるとの懸念を示す文書を英ロイターが入手したと報じた。

記事は、新エネルギー技術とその産業チェーンで中国が大きな優位性を持っており、エネルギー転換の真っ只中にあるEUがこの分野での対中依存をさらに深めているとした上で、英ロイターが入手したスペインのグラナダ（Granada）で10月5日開催されるEU首脳会議用の内部文書の中で、「強力な対策を講じなければ、リチウムイオン電池と燃料電池におけるEUの対中依存度は、ロシア・ウクライナ戦争前におけるロシアへのエネルギー依存と同じようになるかもしれない」との警告が盛り込まれていたと紹介した。

そして、文書では太陽光や風力といった再生可能エネルギーの生産量が不安定なため、欧州で50年までに二酸化炭素排出量をゼロにするという目標を達成するためには効率的なエネルギー貯蔵方法が必要であり、リチウムイオン電池や燃料電池、電解槽の需要が今後数年で10〜30倍に急増するとの予測を示したこと、EUが電解槽製造の中間製造、組立段階においては世界市場の50％以上を占め、強い存在感を示している一方で、燃料電池や電気自動車に不可欠なリチウムイオン電池については中国に大きく依存していることが指摘されたとした。

また、ウクライナ侵攻への制裁としてロシアからのエネルギー輸入をほとんどストップしたことで、EUではエネルギー価格ショックや消費インフレが起こり、欧州中央銀行は大幅な利上げを余儀なくされ、経済成長に水を差す結果となったと指摘し、新エネルギー分野の対中依存でも同様の状況が発生しかねないことを示唆していると伝えた。

記事はさらに、EUの対中依存はリチウムイオン電池と燃料電池だけではないとした上で、EUの内部文書がデジタル技術の分野でも同様の事態が起こりうると強調し、中国への過度の依存が、欧州の工業やサービス業に求められている生産性の向上を著しく阻害するとともに、農業の近代化を妨げる可能性があると指摘したことを紹介している。（翻訳・編集/川尻）